私たちが,サンダース氏の例のように他者を不利な立場に追いやるような判断の誤りについてあまり修正しようとしない理由は簡単に推測できるが,自分自身に大きく影響するような判断についてはどうだろうか。私たちは,自分自身の利益が危険にさらされるような状況では,マインド・バグを避けるようにより気をつけるだろうか?一例として,6名の友人と読者が実験に参加していると想像してほしい。6名からランダムに選んだ3名の友人に,それぞれの恋愛相手を好きな理由を3つあげるよう尋ねてみる。また別の3名には,おなじことに着いてつの理由をあげるよう尋ねてみる。その後,両方の友人にこの1つの質問をする。「あなたは,あなたの恋愛関係についてどの程度満足していますか?」。驚くことに,3つの理由のみを書いたグループは,9つの理由を書くよう言われたグループよりも,彼らの恋愛相手について,またその相手との関係についてより幸福感を報告したのだ。
このバイアスの説明は,直感に反したものではあるが単純である。自分の恋愛相手の良いところについて「9つも」挙げることができる人はいるだろうか。カトリックの列聖でさえ,奇跡は2つでよいのだ!9つも良いところをあげるよう言われた人たちは,3つと言われた人たちよりも苦労するため,「やれやれ,良いところをあげるのはかなり難しかった。もしかして,自分の相手は思っていたほどにはすばらしい相手ではないのかもしれない」という考えに行き着くのだ。これは利用可能性バイアスと呼ぶが,ミシガン大学のノーバート・シュワルツは,このように重要で親しい間柄の愛情でさえも,このバイアスの現象が起こることを示した。
M.R.バナージ・A.G.グリーンワルド 北村英哉・小林知博(訳) (2015). 心の中のブラインド・スポット:善良な人々に潜む非意識のバイアス 北大路書房 pp.40-41
(Banaji, M. R., & Greenwald, A. G. (2013). Blindspot: Hidden biases of good people. )
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