では,ウジはどうやって細菌におかされた傷を癒すのだろうか。外科医が傷口を消毒しようとするときにやることを,もっと手際よく,手数をかけずにやるだけのことだ。Debridementをウェブスターの辞書(Webster’s New College Dictionary)で引いてみると「傷つき,挫折し,あるいは感染した組織を外科的に取り除くこと」とある。外科医が死んだ組織をメスで切り離そうとすると,一緒に生きている組織まで損なってしまうのは避けられない。ところがウジは死んだ組織を文字通り細胞単位で取り除き,そのうえ好みがまことにうるさいので,死んだ細胞しか食べようとしない——生きている細胞には見向きもしないのだ。ウジは,最大限まで成長すると傷口を離れるので,傷を覆っている包材から取り除かれる。自然界では,動物の死骸や生きた動物の化膿創にとりついてせっせと腹を満たしていたウジはその段階になると——ほとんどすべての蝿の幼虫の例に漏れず——その場を離れて地面に落ち,浅い穴を掘って蛹になる。
フランク・コーワンは,1865年に発表した『昆虫史の愉快な事実(Curious Facts in the history of Insects)』で,カリブ諸島では「ククジュ(蛍)を装飾とすることが女性たちの間で最新の流行となっている」と記している。 「舞踏会のドレス一着に,50から100匹の蛍が使われる。スチュアート大尉は,ご婦人の白い襟元に,少し離れたところからはまるで英国王室の王冠にきらめく100カラット以上のコヒノール・ダイヤモンドかと見まがうほど,見事なまでの美しさで輝く蛍が留まっているのを見たことがあると語ってくれた。蛍は体をピンで刺し貫かれてドレスに留めつけてあり,生きている間だけ飾られる。死ぬと光を発しなくなるからだ」 こんな残酷な流行はすぐに廃れたことを祈るばかりだ。