忍者ブログ

I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

事前にはわからない

リーマンショック後,現在に至るまで,「市場は全てを解決する」派の分は悪くなり,「市場には任せておけない」派が勢いを得ている。しかし,これは歴史上何度も繰り返されてきたことだ。金融危機など市場が大きな失敗をするたびに規制の強化が図られる。しかし,時間がたって危機が忘れられるようになると再び「市場は全てを解決する」派が力を得ていく。それが歴史の常なのである。
 なぜそのような揺り戻しが起きるかと言えば,全ての問題を永続的に解決する規制など存在しないからだ。いいか悪いかは別として,人は規制を逃れるために知恵を絞る生き物だ。やがて,規制は形骸化し,その効果は失われていく。さらに,規制は思いもよらない副作用を生むことがある。市場で何が起きるかを正確に予測できないのと同じように,複雑な現実世界では規制がどのような効果をもたらすかも事前にはわからないのである。

田渕直也 (2015). だからあなたは損をする 投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について ダイヤモンド社 pp.222-223
PR

予言の自己成就

市場には,予言の自己成就と呼ばれる現象がある。経営状態の悪い企業の株価が売られ,それが企業を追い詰めて,市場の予言通りにその企業は破たんを迎える。しかし,その企業が破たんした直接の原因は株価が下落したことだ。こうして市場の予言は,自己実現する。

田渕直也 (2015). だからあなたは損をする 投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について ダイヤモンド社 pp.157

パニック・フィードバックループ

市場の暴落は,理屈で割り切れる世界ではない。見る見るうちに自社の損失が膨らんでいく自体を目の当たりにしてパニックに陥り,恐怖に支配されるのだ。そしてパニックに陥った投資家の投げ売りがさらなる価格下落を招き,そしてその価格下落がパニックをさらに助長する。価格下落とパニックは,お互いがお互いを強めあう強いフィードバックループを形成し,ひとりでに大きくなっていくのである。
 類似した行動パターンを持つ特定の投資家群が1つの市場で大きなシェアを占めているとき,そのパニックと暴落はとりわけ大きなものとなる。みなが同じ行動をとろうとし,反対の行動をとろうとする投資家が現れにくいので,いったんパニックが広まるととめどのない暴落につながりやすいからだ。国内の金融機関が支え合う形で保たれている日本の国債市場の安定性は,何らかのきっかけで暴落が起きたときのインパクトの大きさの裏返しとなっているのである。

田渕直也 (2015). だからあなたは損をする 投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について ダイヤモンド社 pp.145-146

円買いの理由

結局のところ,キャリートレード主犯説も,わかりやすいように現実をデフォルメした説明に過ぎない。本当は,「低金利通貨である円を売っている投資家が多いだろうから,何かが起きると円が買い戻される」という『期待』に基づいて投資家が行うパターン化された反射的行動の結果として,「リスクオフによる円高」が引き起こされる。それが「円=安全通貨」説で説明されるようになった理由として,ある古い固定観念の存在があると考えられる。
 それは「有事のドル買い」だ。かつて,世界で何かが起きるとドルが反射的に買われた。それが「有事のドル買い」である。この現象は,リスクが高まったときに,世界の基軸通貨であり,世界で最も安全な通貨であるドルに買いが集まると説明されてきた。現在では,この有事のドル買いは見られず,有事の円買いにとってかわられている。この連想で,「ドルはもはや世界で最も安全な通貨ではない。有事に買われる円こそが世界の安全通貨である」という発想につながったのではないかと思う。
 だが,もともと「有事のドル買い」が,ドル=安全通貨だったから起きたという解釈が間違いだ。戦後しばらくの間,米国は世界に対する最大にして圧倒的な存在感を誇る資本提供者だった。グローバルな金融取引が今ほど自由にできず,現地通貨を直接調達することに何かしらの制限があった当時,米国の投資家の多くは,手持ちのドルを売ることで他の通貨を手に入れ,それを投資の原資にしていたはずだ。だから世界でリスクが高まると,投資資金は回収され,元のドルに戻されることになる。つまり,有事のドル買いは,世界に投資する原資がドルだったから起きたのだと考えられる。
 グローバルな金融取引が活発に行われている現在では,長らく主要国で最も金利が低い通貨であった円を売ることで,その低い金利で資金調達をしているのと同じ効果を得ることができる。つまり,円を元手に世界に投資をしているのと同じ状態を作り出すことができるのだ。だから,何かが起きると,元手となっている円が買われる。そして,それがパターン化された行動となって自動的に繰り返されるようになっていく。それが「有事の円買い」の正体である。

田渕直也 (2015). だからあなたは損をする 投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について ダイヤモンド社 pp.114-115

後付け

チャート分析は過去の値動きだけから将来を予測する。今まで見てきたように,ランダム性であれカオス性であれ,市場に予測不能な性質が備わっているのだとすれば,結局,どんなチャート分析も当たったり,外れたりするはずだ。だが,後から見るといかにも有効そうに見える。
 私がまだ銀行のトレーダーになりたてのころ,テクニカル分析のテキストを買って一生懸命勉強していたときに,ある先輩から次のように言われたことがある。「テクニカル分析にはさまざまなものがあるが,結局どれも生き残らない。唯一生き残っているのはエリオットウェーブだけだ。なぜエリオットウェーブが生き残っているかというと,後で何とでも説明できるからだ」と。エリオットウェーブが今も唯一生き残っているかどうかはともかく,基本はそのとおりだ。誰にでも明確で答えが出せるような単純明快なチャート分析で,明らかに有効そうなものは残念ながら存在しない。有効そうに見えるものは,エリオットウェーブのように解釈の余地があるものだ。後付けで見ると,当てはまっているように説明することができるのである。しかし,それはあくまでも後からみたときにだけそう見えるのであって,まだ確定していない本当の将来が予測できるということにはならない。

田渕直也 (2015). だからあなたは損をする 投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について ダイヤモンド社 pp.79-80

複雑系

ここまで見てきたことから言えるように,金融は,物理法則によって予測が可能な天体の動きのようなものとは違う。むしろ,台風や竜巻に近い。複雑系と呼ばれるそれらの現象は,わずかな変動(ゆらぎ)がフィードバックループにより増幅され,思わぬ大変動へとつながって形成される。そのメカニズムは大体においてわかっているし,コンピュータ上でシミュレーションすることもできるが,いつ,どこで,どのような台風や竜巻が起きるかは正確に予測できない。

田渕直也 (2015). だからあなたは損をする 投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について ダイヤモンド社 pp.37-38

ランダムへの誤解

ここには,ランダムという事象に対する大きな誤解が背景に横たわっている。ランダムというとたいていの人は,バラバラでとりとめもなく,際立った結果が生まれることのない平凡な世界を想像する。しかし,ランダムな仮想世界では,際立った成績を残すカリスマが現れ,劇的なドラマが起きる。もっとはっきりというならば,ランダムな世界で起きることは現実世界で起きることとほとんど区別がつかないのである。

田渕直也 (2015). だからあなたは損をする 投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について ダイヤモンド社 pp.24-25

100分の1のサル

効率的市場仮説で想定される正規分布を前提に考えると,年率46.5%を超える素晴らしいパフォーマンスを残すファンドマネージャーはほぼ100人に1人現れる。重要なのは,これは単に確率の問題で,ファンドマネージャーの資質は関係ないということだ。つまり,ダーツ投げのうまい猿を100匹用意すれば,そのうちの1匹は素晴らしい成績を収めることになる。もしサルに人と意思疎通できる術があるとしたら,そのサルは「自分は相場を予測することができる。効率的市場仮説はたわごとに過ぎない。相場を予測することができる自分がその証拠だ」と主張するに違いない。100分の1のサルは,自分が成功した投資手法(ダーツの投げ方)を得々と語り,その片言隻句を聞こうとセミナーには人だかりがするだろう。

田渕直也 (2015). だからあなたは損をする 投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について ダイヤモンド社 pp.24

単純明快な説明

別に専門家を揶揄しようというのではない。相場の予測は不可能(もしくは専門家でも極めて難しい)であり,金融は単純明快な因果関係だけできれいさっぱりと説明できるものではないということを言いたいのである。にもかかわらず,なぜ専門家が自信たっぷりに豊富な知識を披露しながら後講釈を続けるのかといえば,それはニーズがあるからに他ならない。行動ファイナンスの大家の1人であるダニエル・カーネマン(2002年ノーベル経済学賞受賞)によれば,人は単純明快な因果関係による説明を好み,それを真実だと思い込むようにできている。誰か全てを理解していそうな人に,わかりやすい説明をしてもらいたいというニーズがあるからこそ,専門家は,それが本当であるかどうかは別として,単純明快な説明を試みるのである。本当は専門家でも予測はできないし,その後講釈も正しいとは限らないことを知っていれば,そうしたパターン化された解釈や思い込みに対して免疫もでき,金融や相場に対する見方も変わってくるはずだ。

田渕直也 (2015). だからあなたは損をする 投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について ダイヤモンド社 pp.13-14

感情的特性

ゴールマンやバーオンなどの混合モデルで,特性としてのEIとされてきたものの中核に,正負両方の感情に関わる気質やパーソナリティがあることは,先にもふれた通り,すでに多くの研究者が指摘するところです。そして,繰り返しになりますが,それは本来,EI(感情的な知能)として概念化されることに必ずしもそぐわないものです。むしろ,それは,より直接的に感情的特性(emotional trait)と呼ばれるべきものです。私たちは元来,事象や刺激に対してどれだけ敏感に反応し,感情的に賦活されやすいか(emotional sensitivity),またネガティヴな感情がどれだけ経験されやすいか(emotionality),あるいはまた共感性なども含めたポジティヴな感情がどれだけ発動されやすいか(emotionateness)といったところに,広範な個人差を有していると考えられます。

遠藤利彦 (2015). こころの不思議—感情知性(EI)とは何か 日本心理学会(監修) 箱田裕司・遠藤利彦(編) 本当のかしこさとは何か—感情知性(EI)を育む心理学 誠信書房 pp.1-19.

相関が高すぎる

特性としてのEIに関しても,すでにビッグ・ファイヴをはじめとして,さまざまなパーソナリティ指標との関連性が検討されています。たとえば,(混合モデルの指標とはされていますが)実質,特性としてのEIを測定するためのツールであるバーオンのEQ-iに関しては,その下位尺度とビッグ・ファイヴの各特性との間にさまざまに有意な相関が見出されることが数多くの研究によって報告されています。もちろん,特性として仮定されている以上,同じく特性としてあるパーソナリティと一定の関連性を有することは半ば自明のことといえるわけです。
 しかし,そこで問題になるのは,その相関があまりにも高すぎるということです。EQ-iとパーソナリティ指標との相関は,特に(ネガティブ感情に密接に関連する)情緒的不安定性や(ポジティヴ感情に密接に関連する)外向性の次元などを中心に,時に0.8にも達するような不自然に高い値を示す場合が,かなり頻繁に認められることが知られています。すなわち,そうなると,そもそも両者にはほとんど概念的独立性が成り立っていないことになり,結局のところ,EQ-iに従来のパーソナリティ測度にはない独自性を仮定してみること自体,実質的に非現実的であるということになってしまうのです。

遠藤利彦 (2015). こころの不思議—感情知性(EI)とは何か 日本心理学会(監修) 箱田裕司・遠藤利彦(編) 本当のかしこさとは何か—感情知性(EI)を育む心理学 誠信書房 pp.1-19.

能力として・特性として

また,一部には,質問紙法などの同じ方法論をもって「能力としてのEI」と「特性としてのEI」の両方を正当に測定することはそもそも原理的に無理であるとの判断から,EIを純粋にパーソナリティの下位特性と見なし,特に感情的な適応性に深く関わる自己信頼感や自己主張性あるいは共感性といった視点から再概念化すべきだと主張する「特性モデル」(trait model)の立場もあるようです。

遠藤利彦 (2015). こころの不思議—感情知性(EI)とは何か 日本心理学会(監修) 箱田裕司・遠藤利彦(編) 本当のかしこさとは何か—感情知性(EI)を育む心理学 誠信書房 pp.1-19.

バーオンの研究

なお,ゴールマンと同様に,EIに関して混合モデルをとる代表的な論者にバーオンがいます。彼は,臨床心理士としての実戦経験に基づきながら,EIを,環境からもたらされる種々の要求や圧力にうまく対処するために必要となる非認知的な能力やスキルおよび特性の総体であると定義した上で,日常における感情的・社会的適応性を測るための自己報告式測度,EQ-iを独自に開発しています。

遠藤利彦 (2015). こころの不思議—感情知性(EI)とは何か 日本心理学会(監修) 箱田裕司・遠藤利彦(編) 本当のかしこさとは何か—感情知性(EI)を育む心理学 誠信書房 pp.1-19.

EQが流行った背景

こうしたサロヴェイらの発想に触発されて,EI概念を平易に解き明かし,広く世に広めることになった立役者が,サイエンス・ジャーナリストのダニエル・ゴールマンということになります。現在,EIを扱った書物は,欧米圏を中心におびただしい数に上っており,とりわけEI概念の受容は,いわゆる「EI産業」なるものが成り立つほどに,ビジネスの世界で顕著であるといえますが,そのきっかけとなったのが彼のベストセラー『感情知性』(Emotional Intelligence: Why it can matter more than IQ)であることは間違いありません。ゴールマンは,EI概念とその応用可能性を巧みに論じ,(特に欧米圏を中心とした)EIをめぐるある種,狂騒的ともいえる現在の状況をつくり上げたのです。むろん,そこに,彼の筆致の妙が関わっていたことはいうまでもありませんが,うがった見方をすれば,彼の本が,たまたまタイミングよく,当時のアメリカの社会的思潮にうまく合致したという部分も少なからずあったのかもしれません。それというのは,『感情知性』が世に出る前年の1994年,アメリカ社会はもう1冊のベストセラー『ベル・カーブ』(The bell curve: Intelligence and class structure in American life)に揺らいでいたからです。

遠藤利彦 (2015). こころの不思議—感情知性(EI)とは何か 日本心理学会(監修) 箱田裕司・遠藤利彦(編) 本当のかしこさとは何か—感情知性(EI)を育む心理学 誠信書房 pp.1-19.

4枝モデル

サロヴェイとメイヤーは,EIを,従来のIQの範疇では把握できない別種の「能力」(ability)であると仮定し,いわゆる4枝モデル(four branch model)として概念化してきています。それは,EIが,知覚・認知的に最も低次の水準から最も高次の水準に至るまで,順に階層をなして,

(1)感情の知覚・同定
(2)感情の促進および思考への同化
(3)感情の理解や推論
(4)自分や他者の感情の制御と管理

 という4種の下位要素(4本の枝)から構成されるとするものです。もう少し詳しくお話ししましょう。
 (1)の要素は,その時々の自身の感情の知覚・同定および,小説や映画などの登場人物も含めた他者の感情の知覚・同定を,その真偽も含めていかに的確になし得るかということと,自身の感情や感情的ニーズを他者に対していかに正確に表すことができるかということに関わる能力です。
 (2)の要素は,さまざまな感情や気分を,自発的に自身のなかに誘発したり,想像したりすることによって,意思決定や問題解決あるいは創造性も含む自身の思考や行動にどのように活かすことができるかということに関わる能力です。
 (3)の要素は,感情の法則性の理解,たとえば,1つの感情が他の感情とどのように関連するか,また複数の感情がどのように混じり合う可能性があるか,さらには感情がどのような原因から発し,またどのような結果をもたらすかといったことに関する理解・推論能力です。
 (4)の要素は,正負両面の感情に対して防衛なく開かれた態度を有し,時と状況に応じて自身の感情をいかにうまく制御・調整できるか,また他者の感情をいかにその文脈に合わせて適切なものに導き,管理できるかといったことに関わる能力です。

遠藤利彦 (2015). こころの不思議—感情知性(EI)とは何か 日本心理学会(監修) 箱田裕司・遠藤利彦(編) 本当のかしこさとは何か—感情知性(EI)を育む心理学 誠信書房 pp.1-19.

くすぐりと年齢

くすぐってはしゃぐ頻度は40歳をすぎると急激に減少するが(約10倍の減少),これはおそらく,子供たちが成長して家を出てくすぐる相手が少なくなったため,セックスパートナーの減少,性衝動の減少などが原因だろう。年配の人々はくすぐる相手としての魅力も減少する。あなたが最後に高齢の人をくすぐったり,彼らにくすぐられたりしたいと思ったのはいつのことだろうか。くすぐりが最後に活躍するのは性とは無関係に祖父母が孫と身体的な遊びをするときかもしれない。あなたの最近のくすぐり歴は年齢,社会的,性的状況を示す妥当な指標になる。最後にくすぐられたのはいつのことだろう。そしてそれは誰がくすぐったのだろうか。

ロバート・R・プロヴァイン 赤松眞紀(訳) (2013). あくびはどうして伝染するのか:人間のおかしな行動を科学する 青土社 pp.186

無意識と意識

より広い科学的関心になるのは無意識にコントロールされる無意識な行為の社会的抑制の原則だ。あくびは社会の目にさらされることによって抑制されるもう1つの無意識的な行為だ。古いものと新しいもの,無意識と意識的な行為が脳の表現手段を競うときに,より新しい意識的なメカニズムがしばしば優位になり,古い無意識的ライバルを抑制する。これはしゃっくりであろうとあくびであろうと同じことが言える。しかし,予備的な証拠はしゃっくりが笑いとは異なり,新しく進化した発話によって抑制されないことを示唆する。つまりしゃっくりは会話のフレーズ構造に句読点を打たないのだ。しゃっくりは文法の規則に無頓着で,笑いよりもランダムに会話の流れの中に散らばっている。

ロバート・R・プロヴァイン 赤松眞紀(訳) (2013). あくびはどうして伝染するのか:人間のおかしな行動を科学する 青土社 pp.147-148

くしゃみは伝染しない

くしゃみにはあくび,そしてことによると咳の顕著な特徴である伝染性がない。くしゃみとあくびの類似点(つまり頭を後ろに傾け,次に前傾させること,口を大きく開けること,目を閉じること)を考えると,観察したくしゃみに間違って反応して,伝染性のあくびをすることが全くないのは不思議なことだ。くしゃみは明らかに別個の知覚カテゴリーとして扱われているが,それは急速な呼気段階のせいかもしれない。くしゃみがうつらないのはかえって幸いなことだ。伝染性のくしゃみの連鎖反応は壮観で,破壊的で,そして非衛生的だろう。

ロバート・R・プロヴァイン 赤松眞紀(訳) (2013). あくびはどうして伝染するのか:人間のおかしな行動を科学する 青土社 pp.136-137

咳が多い時は気をつけろ

テキサス大学のジェームズ・W・ペネベーカーは社会的な咳を専門に研究している。彼は興味深い問題を創造的な方法で研究してきた。バージニア大学にいた頃,彼は研究助手たちの手を借りて,学部学生が講義中にする咳の数の基準値を確立した。29パーセントの学生が講義中に少なくとも1回咳をしたが,季節による変動もあり,4月より2月のほうが約3倍多く,多人数のクラスのほうが少人数のクラスよりも多く咳をした。教師に対する評価,授業に対する関心そして咳をしている学生の数の間にほぼ完全な反比例の関係があり,最も評価が高い教授が教える最も興味をそそられる授業の咳の数が最も少なかった。4月に少人数のクラスを教えているときにかなりの数の学生が咳をしたら,あまりよい兆しではないだろう。

ロバート・R・プロヴァイン 赤松眞紀(訳) (2013). あくびはどうして伝染するのか:人間のおかしな行動を科学する 青土社 pp.126

赤い目の人

強膜の赤い人は,染まっていない白い強膜の人よりも確かに悲しそうで,健康状態が劣り,魅力も劣るように見えた。赤い目は顔の表情と感情的な涙と共に悲しみを表す視覚的な顔の信号で,健康で魅力的になるための手がかりがおまけに付いている。だがこれらのオプションの中から選択して赤目の原因を理解するためには背景が必要になることも考えられる。目を赤くした友人に出会ったときに同情の意を示すべきか医療的援助を行うべきか,はっきりしないこともあるだろう。赤い目は悲しみ,アレルギー,炎症,あるいは感染症の結果生じることもある。

ロバート・R・プロヴァイン 赤松眞紀(訳) (2013). あくびはどうして伝染するのか:人間のおかしな行動を科学する 青土社 pp.111

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]