泣くことと笑うことはどちらも普遍的(種特異的)な人間の発声で,学習の恩恵を受けずに発達する。それは形作られるこの行為を見たり聞いたりできない視覚障害や聴覚障害の子供たちにも存在することで示される。泣くことが発達の競争で他に先んずるのは生まれたときから存在するからだが,笑うことは遅れを取ってその3,4ヶ月後に出現する。実のところ,泣くことは満期産の誕生日よりも早い時期に発達して,早くも妊娠24週の未熟児に出現する。泣くことは早くに発達しなければならない。それは養育されることが絶対不可欠な幼児が生死をかけてそれを要求するためだが,笑いの社会的つながりはそこまで決定的に重要ではない。笑うことよりも泣くことが早期に発達するのはその適応的意味と系統発生的な古さの目安を表す。最も古い行動が最初に発達する傾向があるのだ。これに関連して考えると,泣くことの中でも新しく進化した感情的に涙を流す泣き方が,それよりも古い声を出す泣き方の何ヶ月も後になってから出現するのは意味のあることだ。
ロバート・R・プロヴァイン 赤松眞紀(訳) (2013). あくびはどうして伝染するのか:人間のおかしな行動を科学する 青土社 pp.81-82
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