アルディーニのロンドンのショウはもっとも華々しい見世物の1つだった。わずか1時間前に絞首台からおろされたばかりの殺人犯ジョージ・フォースターの遺体に,彼が一対の電極を取り付けると,脚は蹴りあげ,一方の目が開き,殺人者の固めた握り拳は脅かすように宙に突きあげられたのだった。死体が生き返ったかのような動きに観衆はぎょっとし,一人の女性は気を失った。アルディーニを模倣したその後のデモンストレーションはさらに印象深いもので,グラスゴーでの実験では,電流を通された死体が人差指をまっすぐに突き出し,見物客を順ぐりに指さすように見えたので,観衆は取り乱してばらばらに散ってしまった。
アルディーニの実演はメアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』のインスピレーションの1つである。<恐らく死体は蘇生するだろう。ガルヴァーニ電気はこのようなことの前兆を与えてくれた>と彼女は序文で述べている。われわれは今でも「誰かをガルヴァナイズする(活気づける)」と言うが,死んだカエルの脚にガルヴァーニが火花式発電機の電流を流したとき,彼は確かにこれを行っていたのである。
レン・フィッシャー 林 一(訳) (2009). 魂の重さは何グラム?—科学を揺るがした7つの実験— 新潮社 p.156
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