I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「認知・脳」の記事一覧

分散制御システム

 神経科学の用語を使うなら,脳は「大規模並列処理をする分散制御システム」だと言える。つまり,脳はおびただしい数の微少な「プロセッサ」――ニューロン――を持ち,これらのプロセッサは並列処理する一方で全体に分散している。したがって脳にとって解決すべき問題は,これらの分散リソースすべて――その動物が知っていることの総体――をどう統合し,課題(たとえばナビゲーション)にどう立ち向かい,不測の事態(嵐など)にどう対処するかになる。


 この作業は「認知的統合」と呼ばれる。ハチの脳には約100万個のニューロンしかないが,この作業をやってのける。約1000億個のニューロンを持つヒトの脳もやはり同じことをおこなう。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 348-349


鳥の脳

 明らかに,作業記憶は層状の大脳皮質がなくても可能なのだ。ヒトと鳥で「ちがっているのはヒトの言語能力のみです」と,ドイツのボーフムにあるルール大学の神経科学者オヌール・グントルクンは述べる。「作業記憶を可能にしている神経過程はどちらの種でも同じようです」



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 92


有利な場合

 どんな場合でも,頭脳馬力や意識的な集中が多いほうがよいという考えは,新しい言語を学習するうえでも,何百回と練習してきたパットを決める際にも,当てはまらないのである。むしろ,場合によっては,ワーキングメモリーを文字どおり完全に眠らせるほうがよい場合もある。急速眼球運動睡眠(レム睡眠)は前頭前皮質の活動が減り,感覚皮質のような脳領域が活発になることが特徴となっている。最近の研究では,レム睡眠のあと,人はばらばらに思われていた情報の関連がよりよくわかるようになることが証明されている。そうなる一つの理由は,ワーキングメモリーと前頭前皮質が活発に動かなくなると,一見,明らかでないつながりが形成されるからだ。
シアン・バイロック 東郷えりか(訳) (2011). なぜ本番でしくじるのか:プレッシャーに強い人と弱い人 河出書房新社 pp. 99

注意のコントロール

 最も難しい情報に注意を傾け,さほど重要でないデータを無視することは,ワーキングメモリーの多い人が非常に得意なことだ。多くの場合,注意力をコントロールするこの能力は有利に働く。これは前述の二番目の論理的な問題では,確かに言える。結論が前提から論理的に導かれるかどうか正しく答えるために,「イルカは歩ける」という文の信憑性を無視しなければならないような場合だ。しかし,つねにそうであるわけではない。焦点が絞られることで,問題にたいする別の解決策を察知できなくなることもありうる。この狭い焦点は,身の回りの予期しない出来事に気づく能力を損なうことすらある。
シアン・バイロック 東郷えりか(訳) (2011). なぜ本番でしくじるのか:プレッシャーに強い人と弱い人 河出書房新社 pp. 91

論理的思考

 次のような問題を例に考えてみよう。
 (1) 前提 哺乳類はすべて歩ける。犬は哺乳類である。
      結論 犬は歩ける。
 この結論は前提から論理的に導かれるだろうか?
 では,次の問題はどうだろうか?
 (2) 前提 哺乳類はすべて歩ける。イルカは哺乳類である。
      結論 イルカは歩ける。
 この結論は前提から論理的に導かれるだろうか?
 イルカは歩けない。しかし,双方の前提が正しいのであれば,答えはどちらも「はい」になるはずだ。
 このように出題されると,ほとんど誰もが最初の問題は正しいと答える。最初の問題では,前提から得られる結論が論理的であり(二つの前提からそのような結果になる),かつ信じうる(実際,犬が歩けることを私たちは知っている)からだ。ところが,二番目の問題では,うまく対処できる人とそうでない人がでてくる。なぜだろうか?二番目の問題は論理的な思考のプロセスが必要となるだけでなく,結論の信憑性に関して情報を制限することが必要となる。意思決定の過程にひそかに入ってくる情報だ。このような論理的作業をうまくこなせるかどうかを予測するものとして知られる認知能力の一つが,ワーキングメモリーなのである。
シアン・バイロック 東郷えりか(訳) (2011). なぜ本番でしくじるのか:プレッシャーに強い人と弱い人 河出書房新社 pp. 84-85

蛇を見る

 私たちは,自分がヘビを見ていると自覚するよりも前に,その存在を認識することができる。前意識検知と呼ばれる現象である。コンピューターのスクリーン上で,実際には気づかないほどの速さでヘビの画像を表示させると,私たちは生理的に不安を感じる。だが,キノコや花のような脅威を感じないものに対しては,そうした反応は生じない。
クリスティー・ウィルコックス 垂水雄二(訳) (2017). 毒々生物の奇妙な進化 文藝春秋 pp. 55

睡眠の各段階

 睡眠の各段階で扱うことが決まっていると言いたいのではない。数学を扱えるのはレム睡眠だけで,ペルシア語の動詞の保存を助けられるのは深い眠りだけ,というような区別があるとは思っていない。1日,2日徹夜したことのある人なら,まったく寝なくても,少なくとも一時的には大量の何かを覚えていられると知っている。私が言いたいのは,これまでの研究によって,睡眠の5段階はそれぞれが異なるやり方で学習の強化を促進するだろうということだ。
ベネディクト・キャリー 花塚 恵(訳) (2015). 脳が認める勉強法:「学習の科学」が明かす驚きの真実! ダイヤモンド社 pp. 318

ツァイガルニク効果

 ツァイガルニクの研究により,脳には目標に関して2つのバイアス(本能とも言える)が備わっていることが明らかになった。1つは,割り当てられた作業に着手すると,たとえ意味のない作業でも,それを心理的に目標に感じるようになるというもの(ツァイガルニクの実験で被験者に割り当てられた作業は,粘土の塊から犬を作るようなものだった。作ったところで,やり遂げたという達成感しか得られない)。そしてもう1つは,作業に没頭しているときに邪魔が入ると,その作業が記憶にとどまる期間が長くなることだ。しかも彼女の実験によれば,その作業は脳内リストの上位に押しあげられるという。
ベネディクト・キャリー 花塚 恵(訳) (2015). 脳が認める勉強法:「学習の科学」が明かす驚きの真実! ダイヤモンド社 pp. 209

手がかりを探す

 外的な手がかりや脳内の手がかりを探しているときの脳のふるまいは,キョロキョロと周囲をうかがう食事相手のようだと言える。食卓の中心となっている会話(宿題の内容,覚えないといけない楽譜や事実など)を絶えず追いながら,ときどき会話に参加する。その一方で,定期的に素早く周囲を見回したり室内を観察したりしながら,見聞きしたものや匂い,そのときの体内の反応,感情,感覚などのメモをとる。流れているBGM,ロウソクの炎のゆらめき,空腹感など,その出来事の特徴となる情報は,後から会話のポイントを思いだすときの役に立つ。未知のことが話題であればなおさらだ。ただし,どんなときも強い手がかりのほうが好まれる。
ベネディクト・キャリー 花塚 恵(訳) (2015). 脳が認める勉強法:「学習の科学」が明かす驚きの真実! ダイヤモンド社 pp. 84-85

記憶とは

 もはや議論の余地はない。エルデリが論文で述べたように,記憶は「異なる機能が不規則に働くシステムであり,時間の経過とともに改善と減少の両方が起こる」のだ。
ベネディクト・キャリー 花塚 恵(訳) (2015). 脳が認める勉強法:「学習の科学」が明かす驚きの真実! ダイヤモンド社 pp. 52

レミニセンス

 時間の経過に伴う記憶の性質は,減退に向かうだけではない。それとは別にもう一つあるのだ。
 そのもう一つをバラードは「レミニセンス」と呼んだ。これは一種の成長で,覚えていると思っていなかった事実や言葉が浮かびあがってくる性質を指す。どちらの性質も,詩や言葉の一覧を覚えようとした数日後に現れる。
ベネディクト・キャリー 花塚 恵(訳) (2015). 脳が認める勉強法:「学習の科学」が明かす驚きの真実! ダイヤモンド社 pp. 46

セロトニン濃度の高い人

 研究者は,セロトニン,テストステロン,オキシトシンといったホルモンの行動への影響を判断するために,トロリー問題を利用してきた。最後通牒ゲームも同じ役目を果たしている。


 ある実験で,セロトニン濃度が高い人は,ほかの人が不公平だと見なす申し出を受諾する可能性が高いことがわかった。ビールとサンドイッチで食事をしながら労働組合のリーダーと交流する必要に迫られたら,サンドイッチに厚切りチーズを挟むといい。チーズにはセロトニンが豊富に含まれているからだ。経営陣が利益の大半を懐に入れていると信じている労働者は,自分が損をしてでも上役の評判を落としてやろうと考える。つまり,罰を加える方法がそれしかなければ,自分を傷つけるのも厭わない。セロトニンにはこうした衝動を抑える働きがある。一方,テストステロンには寛容さを減じる効果がある。女性のほうが男性より気前のいい申し出をするのは,これが一因かもしれない。また,オキシトシンは正反対の働きをする。



デイヴィッド・エモンズ 鬼澤忍(訳) (2015). 太った男を殺しますか?「トロリー問題」が教えてくれること 太田出版 pp.240-241


頻繁な訓練

 細かなところは能力によって違うが,全体的なパターンは同じだ。頻繁に訓練することが,その訓練によって負荷のかかる脳の領域の変化に結びついていく。脳は与えられた課題に必要な機能を実行する能力を高めるように,配線を組み替えることで負荷に適応していく。訓練が脳に及ぼす影響についての研究から学ぶべき基本的教訓はこれに尽きるが,知っておいて損はない情報は他にもいくつかある。



アンダース・エリクソン ロバート・プール 土方奈美(訳) (2016). 超一流になるのは才能か努力か? 文藝春秋 pp.81


情報を無視する

 実は人間とは,動物とは,視聴覚嗅覚をはじめとしてとてつもなく高度なセンサーの塊だが,そこで感知するほとんどの情報を「無視」することで,活動が可能になっているとされる。このことを僕はロボットや人工知能の世界で言う「フレーム問題」という言葉で学んだが,この聞きなれぬ言葉を極めて簡略化すれば,人は最も直接的で発達したセンサーである「目」に入る情報ですら,そのほとんどを無視していて,この無視の機能を再現しない限り「人工知能制御のロボットは歩くこともできなくなる」というものだ。



鈴木大介 (2016). 脳が壊れた 新潮社 pp.96-97


食器の色

 食器の色も,味覚に大きな影響を与える。たとえば,ホットチョコレートは,白や赤のカップよりも,茶色やクリーム色のカップで飲むほうがおいしい[ピクラス・フィッツマン, 2012]。またコーヒーは,透明なカップよりも白いカップで飲んだほうが,こくがあるように思われる。なぜならコーヒーは白いカップに注いだほうが色が濃く見えるが,色が濃いほど味も濃く感じられるからだ。


 同じソーダ水を,色の異なる複数個のグラスに注ぐと,清涼感の度合いがグラスによって違うように感じる。青のグラスで飲んだ場合が,いちばん渇きが癒されるように思われ,続いて緑・赤・黄の順となる[ゲガン, 2003]。


 皿を選ぶときには,先に述べた同時対比の概念が,料理を引き立てることを知っておこう。ニンジンは青い皿(補色にあたる)に盛りつけると,よりおいしそうに見える。


 もしも太りたくないならば,料理の色から最も離れた色の皿を使うことをおすすめする。たとえばスパゲッティ・ボロネーゼの場合,赤い皿を使うと多めに,白い皿であれば少なめに盛りつけがちになる。逆にライスならば,白い皿にはたっぷりと,濃い色の皿には控えめによそいたくなるだろう。



ジャン=ガブリエル・コース 吉田良子(訳) (2016). 色の力:消費行動から性的欲求まで,人を動かす色の使い方 CCCメディアハウス pp.103-104


思考は気分に従う

 この6回シリーズを書いて演じた経験から,私は創造性について重要な原則を学んだ。不安になればなるほど,創造性は失われる。遊び心がなくなって,精神の広がりがなくなる。恐怖は思考を縮こまらせ,冒険するのをためらわせ,そのせいで独創的な発想ができなくなる。しかし,コメディは斬新でなくてはならない。古いジョークは面白くないからだ。こうして私は,「コメディ書きのためのクリーズふたつの規則」に到達したのだ。


 規則その1:早めにパニックを起こしておく。恐怖はエネルギーの源だ。そのエネルギーを使う時間をたっぷり確保しよう(この規則は試験にも当てはまる)。


 規則その2:思考は気分に従う。不安は不安な思考を,悲しみは悲しい思考を,怒りは怒りの思考を生み出す。だから,面白いことを思いつきたければ,リラックスした陽気な気分を目指そう。



ジョン・クリーズ 安原和見(訳) (2016). モンティ・パイソンができるまで―ジョン・クリーズ自伝― 早川書房 pp.440


知的飛躍

 ジョークを「理解」するにも,同様の知的飛躍が必要だ。ジョークを組み立てるうえでむずかしいのは,それを「理解」するのに必要な飛躍の幅を測ることだ。頭のいい聴衆に対して,噛んで含めるように過度にわかりやすくしてしまうと,あまり面白いとは思ってもらえない。しかしそれとは逆に,飛躍の幅をあまり広くしてしまうと,今度はつながりが見えなくなってまったく笑ってもらえない。



ジョン・クリーズ 安原和見(訳) (2016). モンティ・パイソンができるまで―ジョン・クリーズ自伝― 早川書房 pp.185


悪態をつくと痛みが和らぐ

 以上の実験からわかったこと。悪態をつく,つまり侮蔑語・卑猥語を口にすることで痛みへの耐性が高くなる。ただし,そうした言葉をふだん濫用していると効果が弱まる。その理由は悪態が攻撃感情を高め,闘争/逃走反応を引き起こすからであって,痛みの破局化ではないと思われる。悪態をつくことで,痛みの感じ方がより強烈になっているわけではないからだ。同様に,痛みに反応して汚い言葉を口走る行為は脱抑制と見なすのも無理がありそうだ。脱抑制行動では痛みの経験は変化しないはずだが,私たちが行なってきた実験では,悪態は疼痛管理の手段になっていることが明らかだった。したがって悪態は,痛みに耐えるのを助けてくれるという隠れた効用があることがわかった。


 この効用は研究テーマにこそなっていないが,出産を経験した女性や,看護師,助産師なら誰でも知っていることだ。私たちが一連の研究で論文を発表したあと,オンライン辞書に「ラロケジア(lalochezia)」という新語が登場した。ストレスや痛みをやわらげるために,卑猥な四文字語を使うこと,という意味らしい。もしあなたが激しい痛みに襲われ,医学的な処置をすぐに受けられないときは,悪態をうまく活用してその場をしのいでほしい。だけど病院に搬送されたら口をつつしんだほうがいい。医療機関でそんな言葉をまき散らすのはエチケット違反だし,思わぬ注目を浴びることになる。



リチャード・スティーヴンズ 藤井留美(訳) (2016). 悪癖の科学:その隠れた効用をめぐる実験 紀伊國屋書店 pp.101-102


Fight-Flight

 闘争/逃走反応とは人間の根源的なストレス反応で,行動を底あげする瞬間的な変化で構成されている。なかでも重要なのが活動エネルギーの急速な増大だ。敵から攻撃されたとき,応戦するにしても逃げだすにしても,エネルギーが充分あれば迅速に行動できて,生存の可能性が高くなる。具体的にはアドレナリンが大量に分泌され,心拍数が上昇する。瞳孔が拡張して呼吸も速くなり,痛みへの耐性が上がって,汗をかく。最後の汗をかくというのが,科学の視点から見ると興味ぶかい。発汗して皮膚が湿り気を帯びると,電気を通しやすくなる。これは指に電極を貼りつけて測定すれば簡単に測定でき,「皮膚電気反応」と呼ばれる。



リチャード・スティーヴンズ 藤井留美(訳) (2016). 悪癖の科学:その隠れた効用をめぐる実験 紀伊國屋書店 pp.


神経画像をめぐる批判

近年科学界では,神経画像に対するちょっとした反発が起きている。fMRIが使用されるようになり,不十分な管理の実験が安易に考え出され,学部の学生までがスキャナーでの研究に参入するようになった。あた多くの科学者が,注目される専門雑誌に手っ取り早く発表したがるあまりに,人間の脳で発見した活性化パターンを過剰解釈してしまう傾向にある。特定の脳領域の活性化を指摘し,特別な感情や認知機能の証拠だと解釈するのは,今や当たり前になってしまった。ある構造の活性化を観察して,他の科学者が他の脳部位を観察して導き出した結論を基に,人が幸せや悲しみ,不安やその他の感情を抱いていると結論づけるなんてあまりに安易すぎる。挙句の果てに神経科学者たちは,自分たちの論法を“逆推論”と名付けてしまった。それが今,多くのfMRI論文が受け入れられない大きな要因となっている。
 私は逆推論への批判は誇張されがちだと考えている。その大半が犬の散歩用エチケット袋に対するのと同じ種類の軽蔑を込めて発言されているからだ。私は,科学者たちがデータを過剰解釈していることを責めるつもりはない。彼らの結論に疑問を感じたら,常にその結果をよく検討し,自分の結論を引き出すようにしている。彼らの結果が信じられない場合は,自分の論文に引用したりしない。申し分のない妥当な結論は時を越えて生き続けるが,間違った結論は注目されなくなり,やがては消えていくものだ。

グレゴリー・バーンズ 浅井みどり(訳) (2015). 犬の気持ちを科学する シンコーミュージック・エンタテイメント pp.208-209

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