I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「認知・脳」の記事一覧

悪態をつくと痛みが和らぐ

 以上の実験からわかったこと。悪態をつく,つまり侮蔑語・卑猥語を口にすることで痛みへの耐性が高くなる。ただし,そうした言葉をふだん濫用していると効果が弱まる。その理由は悪態が攻撃感情を高め,闘争/逃走反応を引き起こすからであって,痛みの破局化ではないと思われる。悪態をつくことで,痛みの感じ方がより強烈になっているわけではないからだ。同様に,痛みに反応して汚い言葉を口走る行為は脱抑制と見なすのも無理がありそうだ。脱抑制行動では痛みの経験は変化しないはずだが,私たちが行なってきた実験では,悪態は疼痛管理の手段になっていることが明らかだった。したがって悪態は,痛みに耐えるのを助けてくれるという隠れた効用があることがわかった。


 この効用は研究テーマにこそなっていないが,出産を経験した女性や,看護師,助産師なら誰でも知っていることだ。私たちが一連の研究で論文を発表したあと,オンライン辞書に「ラロケジア(lalochezia)」という新語が登場した。ストレスや痛みをやわらげるために,卑猥な四文字語を使うこと,という意味らしい。もしあなたが激しい痛みに襲われ,医学的な処置をすぐに受けられないときは,悪態をうまく活用してその場をしのいでほしい。だけど病院に搬送されたら口をつつしんだほうがいい。医療機関でそんな言葉をまき散らすのはエチケット違反だし,思わぬ注目を浴びることになる。



リチャード・スティーヴンズ 藤井留美(訳) (2016). 悪癖の科学:その隠れた効用をめぐる実験 紀伊國屋書店 pp.101-102


Fight-Flight

 闘争/逃走反応とは人間の根源的なストレス反応で,行動を底あげする瞬間的な変化で構成されている。なかでも重要なのが活動エネルギーの急速な増大だ。敵から攻撃されたとき,応戦するにしても逃げだすにしても,エネルギーが充分あれば迅速に行動できて,生存の可能性が高くなる。具体的にはアドレナリンが大量に分泌され,心拍数が上昇する。瞳孔が拡張して呼吸も速くなり,痛みへの耐性が上がって,汗をかく。最後の汗をかくというのが,科学の視点から見ると興味ぶかい。発汗して皮膚が湿り気を帯びると,電気を通しやすくなる。これは指に電極を貼りつけて測定すれば簡単に測定でき,「皮膚電気反応」と呼ばれる。



リチャード・スティーヴンズ 藤井留美(訳) (2016). 悪癖の科学:その隠れた効用をめぐる実験 紀伊國屋書店 pp.


神経画像をめぐる批判

近年科学界では,神経画像に対するちょっとした反発が起きている。fMRIが使用されるようになり,不十分な管理の実験が安易に考え出され,学部の学生までがスキャナーでの研究に参入するようになった。あた多くの科学者が,注目される専門雑誌に手っ取り早く発表したがるあまりに,人間の脳で発見した活性化パターンを過剰解釈してしまう傾向にある。特定の脳領域の活性化を指摘し,特別な感情や認知機能の証拠だと解釈するのは,今や当たり前になってしまった。ある構造の活性化を観察して,他の科学者が他の脳部位を観察して導き出した結論を基に,人が幸せや悲しみ,不安やその他の感情を抱いていると結論づけるなんてあまりに安易すぎる。挙句の果てに神経科学者たちは,自分たちの論法を“逆推論”と名付けてしまった。それが今,多くのfMRI論文が受け入れられない大きな要因となっている。
 私は逆推論への批判は誇張されがちだと考えている。その大半が犬の散歩用エチケット袋に対するのと同じ種類の軽蔑を込めて発言されているからだ。私は,科学者たちがデータを過剰解釈していることを責めるつもりはない。彼らの結論に疑問を感じたら,常にその結果をよく検討し,自分の結論を引き出すようにしている。彼らの結果が信じられない場合は,自分の論文に引用したりしない。申し分のない妥当な結論は時を越えて生き続けるが,間違った結論は注目されなくなり,やがては消えていくものだ。

グレゴリー・バーンズ 浅井みどり(訳) (2015). 犬の気持ちを科学する シンコーミュージック・エンタテイメント pp.208-209

思考の中核

過去50年で科学が精神の仕組みについて解明したことが1つあるとすれば,次のことだろう——人間の記憶はコンピュータのメモリとは異なり,データを蓄えて取り出す場所ではない。それは思考という営みの中核を成すものであり,とくに「長期記憶」は知性と洞察力,創造性の源である。

イアン・レズリー 須川綾子(訳) (2016). 子どもは40000回質問する:あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力 光文社 pp.197

IQと反応時間

スピードに対する私の両親や先生たちの偏見は,単なる行き当たりばったりの社会習慣などではなかった。スピードとIQはには驚くほど強い関係があることが分かったからだ。「選択反応時間」と呼ばれる実験手順では,ライトと2つのボタンのついたパネルの前に実験参加者たちが座らされる。彼らは,ライトが緑色のとき左のボタンを押し,ライトが赤色のとき右のボタンを押すように,そしてこれをできるだけ早く行うようにと告げられる。IQと,人がどれくらい速くこの動作ができるかということの間には中程度の相関がある(+.50)。だが,選択反応時間における速い反応は,単なる運動能力の問題ではない。運動能力と「単純反応時間」(私が「さあ,できるだけ速くボタンを押してみなさい」と言うとき)の相関は無視できる程度だからだ。

マーティン・セリグマン 宇野カオリ(訳) (2014). ポジティブ心理学の挑戦:“幸福”から“持続的幸福”へ ディスカヴァー・トゥエンティワン pp.187

確証バイアスとセレンディピティ

人はとかく混沌にパターンを見出し,出来事,とりわけそれが恐ろしい出来事のときにはその意味を理解しようと物語をつくり上げる。私にはその習性を非難する資格はない。なんといっても,一冊の本を自分がアメリカ史に見たと考えたパターンで埋め尽くしたばかりなのだ。けれども,物語を紡ぐときに罠にはまることがある。確証バイアスとセレンディピティが組み合わさって,自分がつくり上げるストーリーがかならずしもこの世界を映してはいないということに気づかないかもしれないのだ。
 陰謀論がとくに魅力的に映るのは,私たちがパターンの裏に知性を見るからである。それは煙にかたちのみならず顔を見るのだ。それは人間のもっとも基本的な性質,サイエンスライターのマイケル・シャーマーがエイジェンティシティ(パターンに意味,意図,作意を付与する傾向)と呼ぶものにもとづいている。陰謀論者が主張する物語は正しいときもある。またチキンレストランを人を不妊にする陰謀と勘違いしたり,一風変わった集団をボディ・スナッチャーのカルトと信じたり,ムーニナイトをテロと早とちりしたりもする。
 陰謀論者はこれからも姿を消すことはないだろう。なぜなら陰謀論者はたえず私たちとともにあるからだ。私たちがパターンを見出すのを止めることはない。物語を紡ぐのも止めることはない。いつでも早計な結論に飛びつくし,とりわけ外国や,自分とは異なる派閥,サブカルチャー,社会階層に対処するときにはそうだ。そして,私たちの伝承に出没する多くの怪物とは違って,陰謀は実際にも存在するし,陰謀を恐れる人がかならずしも誤っているとも限らない。人類がある限り,パラノイアもまた存在するのだ。

ジェシー・ウォーカー 鍛原多惠子(訳) (2015). パラノイア合衆国:陰謀論で読み解く《アメリカ史》 河出書房新社 pp.421-422

雑食の影響

雑食がもたらしたいちばん重要な影響は,人間の脳の進化に対するものだ。多くの人類学者は,数百万年のあいだに人間の脳の大きさが三倍になったのは,草食から肉食に移行したことが大きく影響したと考えている。人間が肉に飢えた類人猿から進化したという発想は目新しくはない。1924年に南アフリカではじめて猿人化石の「タウング・チャイルド」を発見したレイモンド・ダートは,人間の先祖が血に飢えた殺し屋で,「生々しく悶える動物の肉を貪欲にむさぼる」のが大好きだったと書いている。人類の進化における肉の役割について,最近の理論はダートのものより洗練されてはきたけれど,基本的な発想は同じだ。

ハロルド・ハーツォグ (2011). ぼくらはそれでも肉を食う:人と動物の奇妙な関係 柏書房 pp.224-225

言語は現実認識を生み出す

言語心理学者たちは,言語はわたしたちの現実認識そのものを映し出すのか,それともそうした現実認識を生み出す助けとなるのか,という問題について長いこと論争を続けてきた。わたしは後者の立場をとる。わたしたちの食卓にのぼる動物の名前を考えてみるといい。パタゴニアン・トゥースフィッシュ(=日本でも「銀ムツ」の名で知られる)は,南アメリカ沖合の深海に棲む,針のような歯と黄色いとび出た目を持つ先史時代的な姿の魚だ。ロサンゼルスの冒険的な輸入業者が「チリアンシーバス」(=シーバスは日本で言うスズキの仲間)というなんだか旨そうな名前に改名してから,洗練された食材として受け入れられるようになった。

ハロルド・ハーツォグ (2011). ぼくらはそれでも肉を食う:人と動物の奇妙な関係 柏書房 pp.60

きっかけ,引き金,報酬

脳の中で起こっているこのプロセスは,3段階のループだ。第1段階は「きっかけ」で,これは脳に自動作業モードになるように,そしてどの習慣を使うかを伝える「引き金」である。次が「ルーチン(きっかけに反応して起こる習慣的な行動や思考)」で,これは身体的なものだったり,脳や感情に関わるものだったりする。そして最後が「報酬」で,これはある具体的なループを,将来のために記憶に残すかどうか,脳が判断する役に立つ。
 時間がたつにつれ,この「きっかけ→ルーチン→報酬」というループは,どんどん無意識に起こるようになる。きっかけと報酬が相互につながると,強力な期待や欲求が生まれる。そこに1つの習慣が生まれる。

チャールズ・デュヒッグ 度会圭子(訳) (2013). 習慣の力 The Power of Habit 講談社 pp.41-42

利己性と合理性

しかしながら人間のバイアスは,もっと深いところを見れば,機能面で関連した非常に重要な動機の影響を反映したものなのだ。さらに,人々が単純な意味での「利己的」な選択ができないのは,もっと深いところにある合理性の強い影響を受けているからだ。どうやら私たちが行う選択の多くは,すぐ目の前にある個人的な報酬を最大化するのではなく,長期的に見た遺伝的な成功を最大化しようとしているようなのだ。

ダグラス・ケンリック 山形浩生・森本正史(訳) (2014). 野蛮な進化心理学 白揚社 pp. 245

左右機能分化

海馬と扁桃体は,側頭皮質の内部に位置する。だが,それは脳の中心部ではない。脳の中心にあるのは,2つの脳半球を結ぶ,2億を超える神経線維の太い束,脳梁だ。これらの線維,放射冠は,脳の中心から脳半球の外側の領域へと放射し,さまざまな脳領域を結びつける。われわれの測定では,反社会性人格異常を持つサイコパスの脳梁と放射冠は,体積がはるかに大きく,また,より薄く長い白質から成っていた。サイコパスの脳は,過剰な接続性を備え,両半球間の会話が多すぎるかのような印象を受ける。
 この事実をどう理解すればよいのか?私たちはサイコパスを,ネガティブな特徴を無数に備えた反社会的な悪漢と考えがちだが,実際のところ外面は愉快な人物が多く,ポジティブな特徴も数多く兼ね備えている。サイコパスの多くはとりわけ口達者で舌がよく回り,とてもチャーミングで,ほとんどどんなことでも他人を丸めこむ才能を持つ詐欺師だ。多くの研究者からサイコパスの世界的権威の一人と見なされているロバート・ヘアは,両耳異刺激聴と呼ばれるテストを用いて,「サイコパスは言語に関して脳の<左右機能分化>の度合いが小さい」ことを示した。われわれも,少年少女のサイコパスに同じ現象を見出した。これは何を意味するのか?一般には,左半球が言語処理に重要な役割を果たしている。つまり言語は左半球に強く側性化[左右大脳半球のいずれかに得意の機能があること]される。それに対しサイコパスにおいては,左右両半球が,より等しく言語処理に関与する。おそらくそのために彼らは口達者なのだろう。言語処理に,1つではなく2つの半球を動員できるのだから。そしてそれは,両半球を橋渡しする脳梁の肥大に起因すると考えられる。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.250-251

欺くのは難しい

これはどういうことか?結論を言えば,「欺く」という反社会的な行為は,前頭葉の処理能力をフルに活かさねばならない複雑な実行機能を必要とする。実際,真実を語るのは非常に簡単で,ホラを吹くのはそれよりはるかにむずかしい。実行機能に強く依存し,それだけ脳の活動を要する。また,欺瞞は「心の理論」を必要とする。たとえば,1月27日水曜日の午後8時にどこにいたのかについて嘘をつくとき,私は,あなたが私について何を知っているのか,あるいは知らないのかを把握していなければならない。「その日はほんとうに,家族に自分の誕生日を祝ってもらってたんだっけ?」などと思案をめぐらせる。あなたが何をもっともらしいと,あるいはありそうもないと考えるかを把握している必要がある。この「読心」には,前頭前皮質と,側頭葉や頭頂葉の下位領域を結びつける,いくつかの脳領域を動員しなければならない。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.140-141

前頭前皮質の障害

なぜ前頭前皮質の機能不全が暴力に結びつくのだろうか?何が機能不全に陥った脳と犯罪行為を結びつけるのか?前頭前皮質の障害は何を引き起こすのか?これらの問いには,以下のようにさまざまなレベルで答えられる。

1.情動レベル 前頭前皮質の機能の低下は,たとえば怒りなどの生の情動を生む大脳辺縁系のような,進化的により古い脳の領域に対するコントロールの喪失をもたらす。大脳辺縁系の生む情動は,洗練された前頭前皮質によって蓋をされているとも言え,蓋を取れば,情動はあふれ出す。
2.行動レベル 前頭前皮質にダメージを負った患者を対象に行なわれた神経学的な研究によって,そのようなダメージはリスクの大きい行為,無責任な態度,規則の侵犯を導くことが知られている。そこから暴力行為へ至る道のりは,それほど遠くない。
3.人格レベル 前頭前皮質のダメージによって,衝動性の増大,自制能力の喪失,行動の調整/抑制能力の喪失など,さまざまな人格の変化が引きおこされる。暴力犯罪者がこれらの性格を持つことは,容易に想像できる。
4.社会レベル 前頭前皮質のダメージは,未熟,要領の悪さ,的はずれな社会的判断をもたらす。このような社会的スキルの欠如が,不適切な行動や,暴力を用いずに面倒な状況を解決する能力の欠如をもたらすことは明らかだ。
5.認知レベル 前頭前皮質の機能不全は,知性面での柔軟性の喪失と,問題解決能力の劣化に結びつく。このような知的障害は,のちに学業不振,失業,貧困などにつながり,ひいてはその人を,暴力に訴えたり,犯罪に走ったりしやすくする。
 
エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.108-109

大混乱

つまり,ティーンの脳では,もともとストレス反応システムが過剰に活性化しているので,さらにストレスがかかると,大混乱が起きるのだ。PTSDを患うと,その後の人生を通じて,恐怖と不安に苦しむことになりかねない。青年期のPTSDは,恐怖と不安だけでなく,悲しみ,怒り,孤独感,自尊心のなさ,他者への不信などももたらす。また,行動面でも,社会的孤立,成績不振,攻撃性,性欲過剰,自傷,薬物やアルコール依存など,その影響は幅広い。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 197
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

シナプス変化

後にシナプスの研究でノーベル賞を受賞するジョン・エックルスは,シナプスが変化するのにどれほどの刺激が必要なのかがわからず,悩んでいた。「学習という現象を説明するのは難しい。なぜなら,検出できるほどシナプスを変化させるには,長期にわたってシナプスを過剰に使うか,あるいは使わずにいる必要があるからだ」と彼は書いている。彼が気づかなかったのは,自分がいらいらしながら観察していた反復反応こそが,脳が働き,まさに学習している証拠だったということだ。繰りかえし刺激を受けると,ニューロンはより強く反応するようになる。こうして,脳の回路は「学習」する。そして,深く刻まれた知識ほど,思い出すのも使うのも容易になる。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 87
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

目新しさ

脳は,とにかく新しい情報を得ることに格別に熱心になるようプログラムされている。この,新しい情報を得ることこそが,学習の核心だ。あるニューロンどうしの間で情報が伝わり,相手を「オン」にする興奮性の信号のやりとりが増えてくると,ニューロンをつないでいるシナプスの結びつきが強くなる。脳が成長してつながりができてゆくのは,この活動の結果なのだ。実際,成長中の若い脳には,「オフ」情報を伝える抑制性シナプスよりも,興奮性シナプスの方が多い。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 84
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

洞察力の発達

専門家によると,洞察力は,自分を客観的に見る能力によるところが大きいそうだ。そしてこの能力は,前頭葉と頭頂葉から生じるので,成熟するまでに時間がかかる。青春時代は,脳で大きな変化が起きているおかげで,活力に満ちている。だがその一方で,成長途上にある10代の脳は,恐ろしい存在にもなり得る。何が起きてもおかしくはないし,その大半は悪いことだ。ティーンは,外見がほぼおとなで,多くの面でおとなのような考え方をし,学習能力は驚異的だ。しかし,ティーンにはできないことがあること,つまり彼らの認知,情動,行動には限界があることを知っておくのは非常に重要である。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 74
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

Go No-Go Task

抑制性を調べるためによく使われるのは,ゴー・ノーゴー・テストだ。被験者は,ある文字や絵が出てきたらできるだけ速くボタンを押し(ゴー反応),Xの文字が出てきたらボタンを押さない(ノーゴー反応)よう,指示される。いくつかの研究において,このテストで子どもと若者を比べたところ,正確さにそれほど差はなかったが,反応を抑制するスピードは,8歳から20歳までの間に大幅に遅くなった。つまり子どもより若者のほうが,何かをしないという判断をくだすのに,時間がかかるのだ。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 65
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

神経伝達物質

よく知られる興奮性の神経伝達物質は,エピネフリン,ノルエピネフリン,グルタミン酸である。一方,抑制性の神経伝達物質は,ガンマアミノ酪酸(GABA)やセロトニンなどで,身体の興奮を鎮め,落ち着かせる。セロトニンが足りないと攻撃的になったり鬱病になったりする。ドーパミンは特殊な神経伝達物質で,興奮性にも抑制性にもなる。また,エピネフリンなどと同じく,ホルモンでもある。副腎ではホルモンとしてはたらき,脳では神経伝達物質としてはたらくのだ。ドーパミンは脳の「報酬回路」に不可欠で,人を興奮させたり,集中させたりする。「どうしてもこれが欲しい」という欲求を駆り立てるので,目標に向かう原動力となるが,場合によっては中毒を招く。脳内に放出されるドーパミンが増えると,報酬回路が活性化し,欲求がますます高まる。レストラン,カジノ,会議室,寝室,どこにいようと,この摂理は同じだ。高カロリーの食品は,大量のドーパミンを放出させる。なぜなら,カロリーが高いと生存の可能性を高めるので,報酬回路がそれを食べることを後押しするのだ。アイスクリームが食べたくてたまらない時や,ギャンブルやセックスをしたくてたまらない時,わたしたちが欲しているのは,甘味や金銭やオーガズムではない。ドーパミンを欲しているのだ。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 64-65
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

ニューロンの多さ

では,それほどニューロンが多いのに,なぜ赤ん坊はモーツァルトやアインシュタインのような天才ではないのだろう。それは,ふんだんにニューロンを持っていても,その一部しかつながっていないからだ。したがって,脳に入ってきた情報は,ニューロンに取り込まれるものの,次にどこへ行けばいいかがわからない。不慣れな騒々しい都会の真ん中に放り出された人のように,赤ん坊の脳は,さまざまな可能性に囲まれていながら,その新しい世界を案内してくれる地図もコンパスも持ち合わせていないのだ。「生まれたばかりの赤ん坊は,麻薬によるトリップに似た,サイケデリックな幻覚を見ている」と,カナダ・モントリオールのマギル大学の神経科学者,ダニエル・レヴィンティンはその状態をわかりやすく説明する。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 59
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

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