I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「社会一般」の記事一覧

規格の一元化

 コンピュータ学者であるアンドリュー・タネンバウムはかつて「規格についてすばらしいのは,選ぶべきあまりにも多くの規格があることだ」と皮肉を言った。彼が何のことを言っているのか,私にはわかる。リモコンでも,時計でも,あるいはその他の家にある装置が動かなくなったときには,私はいつも居間にある大小の電池類—たいていは適切なものが見つからない—がごたまぜになったキャビネットを引っかきまわすことになる。もし一種類だけしか電池がなかったら,生活はずっと楽だろう。あるいは一種類だけのコーヒー・フィルター,データ保存媒体,あるいはコンピューターのOSでもいい。
 もっと古い技術でさえ,この問題に悩まされている。公共電力事業ができてから一世紀以上たつが,世界中で14の互換性のないコンセントが存在していて,よその国からやってきた何百万人という海外旅行者たちにとって,日々持ち歩くラップトップ,ヘアドライヤー,電気カミソリ—およびコンセントの合わないアダプター—は,悪態の種である。
 自然はちがう。自然はエネルギー備蓄の規格を一元化してきた。力学的(建物を破壊するために打ち込まれる鋼球),電気的(コンピューターを動かす電流),あるいは化学的(原子どうしを結びつけて分子にする結合力)など,エネルギーを取り出す多様な形態のなかで,生命のお気に入りは,化学的エネルギーである。単細胞の細菌類からシロナガスクジラまで,地球上のすべての生物は,エネルギーを,アデノシン三リン酸,すなわちATPという分子に貯えるという規格化された方法を使っている。この分子の高エネルギー結合が切断されると,エネルギーは別の分子に移転され,エネルギーがそれほど高くないアデノシン二リン酸(ADP)ができる。高エネルギーのATPをつくりなおすには,特別な酵素の手を借りて,燃料となる分子からエネルギーを摂りだしてADPに移転することが可能である。
アンドレアス・ワグナー 垂水雄二(訳) (2015). 進化の謎を数学で解く 文藝春秋 pp. 88-89

19次のつながり

 数は少し異なるかもしれないが,他にも同様に少ないリンクでつながっているネットワークがある。たとえばウェブは19次のつながりでつながっている。つまり平均19回クリックしてリンクをたどれば,どのウェブサイトでも見ることができるというわけだ。19回は一見多いように思えるかもしれない。だが,今や10億以上のウェブサイトがあることを考えれば,小さな数だと言えるだろう。サイト間のリンクがランダムなら,10億はおよそ3の19乗なので,1ウェブサイトあたりのリンクの数は平均してたった3つということになる。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 158-159

一発屋ではない

 何らかの問題に関心を向けさせ,それが公共の議題として扱われ続けるようにしたいとき,正のフィードバックは非常に有効な手段になりうる。多くの活動団体がこのことに気づき,あれこれ試みているようだが,より有効に使うには,もう少し頭を使って計画する必要があるだろう。蟻コロニー最適化から得られる教訓を採用するならば,最善の戦略とは,大量の投書をいっぺんに出して後はそのままにしておくことではなく,活動団体のメンバーに問題のいろいろな側面について着実なペースで投書をさせることだ。この方策は,フェロモンの濃度を継続的に高めることで蒸発を防ぐのと同じであり,ここからまた別の規則が現れてくる——ある問題に集団や社会全体の注目を集めようとするときは,一発屋を目指すのではなく,時間の経過に従って次々と別の面を押し出す計画を立てること。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 66

Googleの魔法

 前世紀にネットを使っていた古株なら,メタクローラー,ライコス,アルタビスタなどをはじめ,当時のさまざまな検索エンジンを覚えているはずだ。そしてこれらがもう1つ頼りにならなかったことも。運が良ければ探し物が見つかるが,たいていそうではなかった。1990年代後半に最も人気のあった検索エンジンに「ビル・クリントン」を入力すれば,検索上位に気まぐれの様に現れるのは「ビル・クリントンはクソ」などという誹謗サイトか,クリントンをこき下ろすジョーク集などだった。現職大統領についてのまっとうな情報が得られることはめったになかった。
 1998年,グーグルが現れた。そしてその検索結果は,明らかに他を圧倒していた。1998年に「ビル・クリントン」と検索すれば彼のウェブサイトを筆頭にホワイトハウスのeメールのアドレスやネット上で最高の評伝が表示された。グーグルは魔法のようだった。
セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ 酒井泰介(訳) (2018). 誰もが嘘をついている:ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性 光文社 pp. 76-77

正しいデータが必要

 実際,最先端のビッグデータ会社は,えてして自前のデータを細分化しているものだ。グーグルでは,膨大な手持ちデータからごく一部を抽出した資料に基づいて重要な決断を下している。重要な知見を得るのに,必ずしも膨大なデータは必要ないのだ。必要なのは正しいデータだ。グーグルのデータの価値が非常に高いのは,規模が大きいからではない。人々が真情を吐露しているからだ。人は友人にも医者にも恋人にも自分自身にも嘘をつく。だがグーグル上では,引け目を感じることでも気後れなく入力する。セックスレスな結婚生活や精神衛生や黒人に対する悪意などは,そのごく一例に過ぎない。
セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ 酒井泰介(訳) (2018). 誰もが嘘をついている:ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性 光文社 pp. 35

トランプ支持者の検索語

 人々はしばしば嘘をつく。他人に対しても,そして自分自身に対しても。2008年,米国人はサーベイに,もはや人種なんて気にしていないと答えた。8年後,彼らはドナルド・J・トランプを大統領に選んだ。白人のアメリカ人に対する殺人の大半は黒人によるものというデマをリツイートし,ある選挙集会では「黒人の命が大切」運動の旗印を掲げた抗議者への暴行をかばい,クー・クラックス・クランの指導者だった人物からの指示を拒むことを渋った男を選んだのだ。バラク・オバマの足を引っ張った隠された人種差別が,ドナルド・トランプの追い風になったのだ。
 予備選の初期,ネイト・シルバーは,トランプが勝つ見込みはないに等しいと宣言した。予備選が進みトランプが広範な支持を集めていることが明らかになるにつれて,シルバーは何が起きているのかデータで検証することにした。いったいどうしてトランプはこんなに快調なのか?
 その結果,トランプが最も優位な地域をつなぎ合わせると,奇妙な地図ができることがわかった。北東部,中西部工業地帯,そして南部で勢いがあり,西部では不振を極めていたのだ。シルバーはこの勢力図を説明できる変数を探した。失業率か?宗教家?銃所有率か?移民率か?反オバマ率か?
 そしてシルバーは,共和党候補予備選挙でドナルド・トランプの支持に最も相関性の高いある要因を見いだした。それは私が4年前に見出した判断の手がかりだった。トランプ支持が最も強かった地域は,「ニガー」という語を最もよく検索していた地域だったのだ。
セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ 酒井泰介(訳) (2018). 誰もが嘘をついている:ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性 光文社 pp. 25-26

組織集団

 私は「組織」というものを,アイデアの流れの中を航海する人々の集団だと捉えている。アイデアが豊富にある,清らかで速い流れの中を航海することもあれば,よどんだ水たまりや,恐ろしい渦の中を航海することもある。あるときには,アイデアの流れが分岐して,一部の人々が新しい方向へと向かうかもしれない。私にとっては,これこそがコミュニティと文化の現実なのだ。残りは単なる表層的な出来事か,幻影にすぎない。



アレックス・ペントランド 小林啓倫(訳) (2015). ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学 草思社 pp. 60


反競争主義と競争の激化

 つまり,「学力差を生まれながらの素質の違いとは見なさず,生得的能力においては決定的ともいえる差異がないという能力観,平等観を基礎としている」のだ。「このように能力=素質決定論を否定する能力=平等主義は,結果として努力主義を広め,『生まれ』によらずにだれにも教育において成功できるチャンスが与えられていることを強調した。……だれでも,努力すれば,教育を通じて成功を得られる。だからこそ,だれにでも同じ教育を与えるように求める。その結果,より多くの人びとが同じ教育の土俵の上で競争を繰り広げることになった。教育における競争を否定する一方で,皮肉にも,能力主義教育を批判する議論が,教育における競争に人びとを先導する役割を果たしたのだ」と,苅谷は,平等主義で反競争的な教育が,逆に,教育における競争を激化させたという皮肉な結果をもたらしたと指摘している。



大竹文雄 (2017). 競争社会の歩き方 中央公論新社 pp. 144


民主主義

 こうなると,多数決原理によって運営される民主主義は,個人意識,社会意識,階層意識の微妙なバランスのうえにある。それぞれがあくことない要求をひっこめ,お互いに妥協することが肝要である。個人意識はフィクションとしての自由,平等に満足する。社会意識は,全員一致の強制にまですすまないで,多数決の線に停止する。階層意識は,少数良識派の権利をあるていどみとめさせることで安心する。民主主義の機能が完全に麻痺するのは,このようなバランスがくずれたときである。いずれにせよ,伝統思想との妥協がなければ,民主主義は幻影のままで,ついにヨーロッパに定着できなかったであろうことは,たしかである。



鯖田豊之 (1966). 肉食の思想 中央公論社 pp. 167


近代家族

 男親が企業や団体の専門・管理・事務職として賃労働に従事し,女親が専業主婦として家事,育児に専念する性別役割を主体とする核家族は一般に「近代家族」(modern family)と呼ばれている。戦前期の近代家族をモデルにした家族形態は戦後の高度経済成長期に大きく拡大し,幼稚園・小学校を含めた受験競争の拡大と激化に資するところとなった。
小針 誠 (2015). <お受験>の歴史学:選択される私立小学校 選抜される親と子 講談社 pp. 86

想定外だった

 ところが,私たちの悪い癖の一つとして,過去に一度も起きていないことであれば,おそらくこれからも起きないであろうと,潜在的なリスクはとことんスルーしておきながら,いざ起きてしまうと「想定外だった」と後悔することがままあります。
大原 瞠 (2018). 住みたいまちランキングの罠 光文社 pp. 235

掛け捨て

 生命保険を例に取れば,保険期間中,元気に生活できれば保険料は掛け捨てで終わります。その場合,はじめから保険に入らないでおけば無駄なお金を支払わずに済んだわけですが,それではいざというときの備えになりません。それをいっても仕方がないとみんな割り切っています。
 これと同じ発想を「住まい」に対してしてみたらどうでしょう。家賃を一種の保険料と考えて賃貸生活を送れば,一定のコストの掛け捨てにはなりますが,家を買った後に予想外の事情で負債や追加出費が膨らんだり,回収可能と見込んでいた利益を喪失したりするリスクからは逃れられます。
大原 瞠 (2018). 住みたいまちランキングの罠 光文社 pp. 196-197

隠れ家賃

 マンション広告ではよく「ローン返済は月◯万円から。今の家賃と比べてください」なんていうキャッチコピーが出ていますが,たとえ家賃12万円がローン支払い12万円に変わっても,実はそのほかに,支払っても返ってこない3万〜4万円の「隠れ家賃」が加わるのだとしたら,それでもあなたは家を買いますか?という「不都合な真実」を,不動産会社は積極的には教えてはくれないということを,肝に銘じておく必要があります。
大原 瞠 (2018). 住みたいまちランキングの罠 光文社 pp. 188

精神的満足度

 つまり,「住みたいまち」ナンバーワンである吉祥寺とは,実際の利便性よりも,住むこと自体,あるいはそれを人に自慢できることによる精神的満足度などを加味した,住めたらいいね,住んでいる人がうらやましいね,といった感覚が雪だるま式に膨らみ,独り歩きした結果であって,アンケートで回答した人さえも,本当にそこまで住みたいと思っているから答えたわけではなく,彼らがみな実際に吉祥寺の物件探しをするとは限らないと考えられます。
大原 瞠 (2018). 住みたいまちランキングの罠 光文社 pp. 145

ごみの出し方

 それこそ,20年以上前に当地に住んでいた人と話すと,多くの人が口々に「川崎は昔,日曜日以外は毎日ごみ収集車が来たのでごみ出しが楽だった」と回顧します。しかも,なんと分別なしで。何でも一緒に出せたのだといいます。生活者としてはこれほど楽なことはありません。
 一方,東京都多摩地区出身の人と話すと,街角に置かれた蓋つきダストボックスに生活ごみを捨てられた時代を懐かしがります。これであれば,24時間365日の投棄が可能で,カラスなどの被害からも守られ,当時は利便性と衛生面を両立した画期的な方法とされていました。全盛期には,府中市,日野市,多摩市をはじめ10市以上で導入されていました。
大原 瞠 (2018). 住みたいまちランキングの罠 光文社 pp. 103

どこに使われるか

 実際,最新のベストセラー本が図書館に納入されると,貸出予約待ちが何十人もついて,半年待ちなんてことはザラ。たかが1000円ちょっとの本なのだから,それくらいなら買えばいいのにと思いませんか?
 このように,一冊千数百円の本も買わずにタダで読もうとする一部の人のリクエストにより買われた本が地元の図書館に入っていることを考えると,人によっては,実は図書館が充実しているまちほど,自分が望まないことにお金が投じられているまちだという逆説が成り立つことになります。
大原 瞠 (2018). 住みたいまちランキングの罠 光文社 pp. 100-101

医療費補助

 現在,医療費の自己負担分を市区町村が肩代わりするのは,国の方針と異なる上乗せをしたいという市区町村独自の制度なので,国からの補助がなく,都道府県からの補助を除いた部分は独自の財源からの持ち出しになります。したがって,小児医療助成が充実していればいるほどモラルハザードも広がって,本来,別の目的に使えるはずのお金が医療費に回って,別の施策に取り込む予算が不足するということが起こってしまうのです。
大原 瞠 (2018). 住みたいまちランキングの罠 光文社 pp. 42

認可外保育施設

 まず,一口に認可外保育施設といってもピンキリであるということをみなさんはご存じでしょうか。著者にいわせれば,そもそも「認可外」なんて呼び名をしている時点で,風評被害を起こしかねないひどい差別だなと思っています。だって,正規の許可がない「モグリの施設」であるかのような誤解を招きかねないですから(実際,世の中には「認可外」のことを「無許可」と呼ぶ人もいます)。
大原 瞠 (2018). 住みたいまちランキングの罠 光文社 pp. 21

不当なクレーマー

 不当なクレーマーかどうかを見極める基準として池内は次のようなものを挙げる。
 (1)回数の多さ,および過去の履歴内容から。
 (2)不当な金銭要求(誠意を示せ),過大な物品要求,無理難題などの要求の有無。
 (3)因果関係が明らかか否か(いちゃもんかどうか)。
 (4)不当な方法(恐怖,暴力,脅迫,監禁等)であるか。
 (5)業務妨害(長時間,多頻度)に抵触するか。
 「これらが一つでも該当すればクレーマー」というわけである。
岡本真一郎 (2016). 悪意の心理学 中央公論新社 pp. 165

リスク回避型

 グラント教授は,一般スタッフに対して,イノベーションの機会や権限をきちんと与えていないリーダーが多いとします。イノベーションは,特別な才能を持つ人が行うというのは思い込みであって,実際には,ほとんどの人が,斬新な思考や問題解決という点で相当優秀な力を持っており,組織が「調和の押しつけ」を行っていることが,そうした能力の発揮を妨げているというのです。たしかに,私も,学生の一見突拍子もないアイデアに,あとで感心することが,よくあります。普段,調和を押しつけていることはないと,自分では思っていますが。
 そして教授は,起業家の中でも長期にわたって成功しているのは「リスク回避型」の人々であり,そうでない人々(異才)は,華々しく活躍しても短期で終わるとも述べています。
植村修一 (2018). “社風”の正体 日本経済新聞社 pp. 119-120

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