I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「社会一般」の記事一覧

信用できない社会

 一連の実験を通して,コスミデスとギーゲレンツァーは,人々がパズルを単なる論理の問題として扱っているのではないことを証明した。人々は,それを社会契約であるとみなし,裏切り者を探しているのである。人間の心理はあまり論理に向いているようではないと,二人は結論した。しかし,社会的取引の公正さと,社会的提案の誠実さを判断するにはよく適している。この世は,信用できないマキャベリ的社会なのだ。



マット・リドレー 長谷川眞理子(訳) (2014). 赤の女王:性とヒトの進化 早川書房 pp.526


進化的見方と差別

 奇妙なことに,人類平等主義の哲学よりも,進化的な見方のほうが,差別撤廃を正当化するものである。女性は異なる能力というよりはむしろ,異なる野心をもっていると考えられるからである。男性の繁殖成功度は,幾世代にもわたって政治的な序列をのぼることに依存していた。女性がその種の成功を求める動機はほとんどなかった。女性の繁殖成功度は他の要因に依存していたからである。それゆえ進化的な見方をすると,女性はめったに政治階段を登ろうとはしないだろうと予測できる。しかし,女性が参加したらどれほどうまくやるかについては何も言っていない。トップにのぼりつめた女性の数が(多くの国で女性首相がいる),トップより下のランクに位置する女性の数と不釣り合いなのは,偶然ではないと私は考えている。イギリスでは女王の統治によって,王の統治でよりも卓越し堅実な歴史が作り出されていることも偶然ではあるまい。これらの証拠は,女性が平均すると男性よりも国を治める能力にわずかに優れていることを示している。また女性は,直観力,性格判断,自己崇拝の欠如といった女性的な特徴をこれらの仕事に持ち込んでいるという,フェミニストの主張を支持するものでもある。男性には羨むしかない特徴である。企業にしろ,福祉団体にしろ,政府にしろ,あらゆる組織が崩壊する元凶は,それらが,能力よりも狡猾な野心に報いるからである(巧みにトップにのぼる人間は必ずしもその仕事がいちばんできる人間とはかぎらない)。そしてそうした野心は女性よりも男性につきものなので,女性を重視して昇進を案配するのは,きわめて好ましいのである。偏見を是正するためではなく,人間の本性を正すために。



マット・リドレー 長谷川眞理子(訳) (2014). 赤の女王:性とヒトの進化 早川書房 pp.418-419


走っても同じ地点

 赤の女王仮説は,世界をあくまで競争的とみている。世界は絶えず変化し続けている。しかしたった今,種は何世代も静止状態にあり,変化しないと言ったばかりではなかったか?そのとおり。赤の女王が言っているのは,いくら走ろうと,同じ地点にとどまっているということだ。世界は始まったところにつねに戻ってくるので,変化はあるが,それは進歩ではない。



マット・リドレー 長谷川眞理子(訳) (2014). 赤の女王:性とヒトの進化 早川書房 pp.111


例外の国

 おおかたの経済学者は現在,人口の爆発よりもその崩壊の影響を心配している。出生率が非常に低い国では,労働力が急速に高齢化している。つまり,現役世代がどんどん減っていて,その貯蓄と税金を食う高齢者がどんどん増えているということだ。経済学者が懸念するのも無理はない。ただし,この世の終わりのように考えるのはまちがいだろう。何しろ,今日の70代は工作機械操作の仕事を続けろと言われたらあまりうれしくないだろうが,今日の40代が70代になったときには喜んでコンピューター操作の仕事を続けるに違いない。そしてここでも,合理的な楽観主義がある程度の安心をもたらす。最新の研究により,世界屈指の裕福な国々では繁栄が一定レベルに達すると出生率がわずかに上がるという,第二の人口転換が明らかになっている。たとえば,アメリカ合衆国の出生率は1976年ころに女性一人につき1.74人で底をうち,そのあと2.05人まで上がった。人間開発指数[訳注 国民の生活の質や発展の度合いを示す指標]が0.94を超える24カ国のうち18カ国で,出生率は上昇している。説明のつかない例外は日本や韓国などで,まだ下がり続けている。この新しい研究の共著者であるペンシルヴェニア大学のハンス・ピーター・コーラーは,このような国々は豊かになる過程で,女性がワークライフ・バランスを実現できる状況を整えられていないのだと考えている。



マット・リドレー 大田直子・鍛原多惠子・柴田裕之(訳) (2013). 繁栄:明日を切り拓くための人類10万年史 早川書房 pp.326-327


世界中で出生率は低下

 しかしこの三カ国だけではない。出生率は世界中で低下している。1960年より出生率が上がっている国は皆無で,発展途上国全体で出生率はおよそ半分になっている。国連は2002年まで,将来の世界の人口密度を推定するにあたって,ほとんどの国の出生率は女性一人につき子ども2.1人を下回ることはないと仮定していた。これは「人口置換水準」,つまり1人の女性が自分と夫の代わりになる赤ん坊を産むとしたうえで,小児期の死亡やわずかに男性が多い性比を補うために0.1人を加えた数値だ。しかし産まれる赤ん坊がひたすら減り,2.1人よりもさらに減り続ける国がどんどん増えていることが明らかになったため,2002年,国連はこの前提を変更した。どちらかと言えば,核家族化の影響が相まって,出生率減少は加速している。今や世界の半分は出生率が2.1人より低い。スリランカの出生率は1.9人で,すでに置換水準を十分下回っている。ロシアの人口も急激に減少していて,2050年にはピークだった1990年代前半の3分の1以下になるだろう。



マット・リドレー 大田直子・鍛原多惠子・柴田裕之(訳) (2013). 繁栄:明日を切り拓くための人類10万年史 早川書房 pp.317


自由や幸福は繁栄や交易とともにある

 過去二世紀にから得られる教訓は,自由や幸福は,繁栄や交易と手に手を組んで進むものだということだ。今日,軍事クーデターによって自由を失い,独裁者の支配下に入る国はたいてい,その時点で,平均すると年率1.4パーセントの割合で一人あたりの所得の下落を経験している。二つの世界大戦のあいだにソビエト連邦とドイツと日本が独裁国家になったときにも,一人あたりの所得の下落がその一因だったのによく似ている。歴史の大きな謎の一つは,なぜ1930年代のアメリカではそうならなかったかだ。アメリカでは1930年代の深刻な経済的ショックのあいだも,全体とすれば社会的な多元性や寛容さが失われなかったばかりか勢いを得たほどだ。いや,アメリカも危ないところまで行ったのかもしれない。カフリン神父はそちらの方向にアメリカを導こうとしたし,もしルーズヴェルトがもっと野心的だったり,憲法がもっと脆弱だったりしたら,ニューディール政策がどこに行き着いたか知れたものではない。民主主義がしっかり根づいている国もあり,そういう国では民主的な価値観が生き延びられたのかもしれない。今日,民主主義が成長に必要かどうかが盛んに議論されている。中国は,それが不要であることを実証しているようにみえる。だが,成長率がゼロになれば,中国でさらなる革命あるいは弾圧が起きるだろうことに疑問の余地はない。



マット・リドレー 大田直子・鍛原多惠子・柴田裕之(訳) (2013). 繁栄:明日を切り拓くための人類10万年史 早川書房 pp.179-180


貧しいとはどういうことか

 つまり,貧しいとはこういうことだ。自分の必要とするサービスを買えるだけの値段で自分の時間を売れなければ貧しく,必要とするサービスだけでなく望むサービスまで手に入れる余裕があれば豊かだと言える。これまでずっと,繁栄や成長は,自給自足から相互依存への移行と同義だった。それは家族を,骨が折れて時間がかかる多様な生産の単位から,専門化した生産の爆発的増加によってまかなわれる楽で速くて多様な消費の単位へと変えることなのだ。



マット・リドレー 大田直子・鍛原多惠子・柴田裕之(訳) (2013). 繁栄:明日を切り拓くための人類10万年史 早川書房 pp.78


合理的な楽観主義

 このように新しいアイデアが生み出されていけば,人間の経済成長は持続しうる。現在の危機の1,2年後には世界は成長を再開するかもしれないし,失われた10年を経験する国もあるかもしれない。1930年代に起きたように,世界の一部は,経済的自給自足政策や暴力によって動乱状態になり,恐慌が大きな戦争につながるかもしれない。だが,どこかで誰かが他人のニーズを前よりうまく満たす方法を見つけ出すように動機づけられていれば,合理的な楽観主義者は人間の暮らしの改善がいずれ再開すると結論せざるをえない。



マット・リドレー 大田直子・鍛原多惠子・柴田裕之(訳) (2013). 繁栄:明日を切り拓くための人類10万年史 早川書房 pp.64


人種的憎悪

 合衆国は比較的平等主義的な国家なので,戦時中に民族的・人種的憎悪を国民の心に深く植えつけるのは,他国にくらべていささかむずかしい。だが対日戦では,敵があまりに異質だったために文化的距離を有効に導入することができた(パールハーバーの<復讐>だったので,倫理的距離という強力なバックアップもあった)。ストウファーの研究によれば,第二次大戦中のアメリカ兵の44パーセントは「ぜひ日本兵を殺したい」と答えている。しかし,ドイツ兵についても同じように答えた者はわずか6パーセントだった。



デーヴ・グロスマン 安原和見(訳) (2004). 戦争における「人殺し」の心理学 筑摩書房 pp.271


UFO

 総じてコンタクティと自称する人たちは,高次の存在としての宇宙人たちと接触したとして”UFO教”とでもいうべきカルト的な世界を作り上げてきた。そのことが,UFOが怪しいものであるという印象を与える一因となってきたのだろう。


 それでも50年代のアメリカで,軍関係者を始め,一般の多くの人たちがUFOを目撃したと主張していたのは事実であり,それが何かの見間違えであったとしても,その不思議な体験について人々が戸惑っていたのは確かである。それはいったい何だったのだろうか?


 2つの世界大戦を経て,核戦争による人類滅亡の可能性さえも叫ばれていた米ソ冷戦下にあって,アメリカ空軍はUFO調査機関を置き,マスコミは宇宙人飛来の可能性や政府陰謀説を広め,そんな風潮に便乗するようにコンタクティたちがカルト的なムーブメントを起こしていた。そこには,米ソ核戦争への不安もあっただろう。また,新聞やテレビといったマスメディアが急速に発達する時代にあって,連日のUFOのニュースにアメリカ国民が大きく影響されてしまった部分はあっただろう。



前田亮一 (2016). 今を生き抜くための 70年代オカルト 光文社 pp.28-29


日本人は引っ越しが好きではない

ただし一つ問題はある。それは,そもそも日本人は引っ越しが大嫌いということである。まえがきでも少し述べたが,1人の人が人生の中で引っ越しをする回数のことを「生涯移動回数」と呼ぶ。これは,時代によって変わるし,今の現役世代が人生の間で何回転居をするかなど,本当のところはわかりやしない。ただし,それをある程度は予測することができる。それを数値化したのが「生涯移動回数」である。日本人の生涯移動回数は,平均で4回と5回の間ということになる。都市化が進んだ他の先進国の移動事情に比べると,驚くほど少ない数字である。アメリカ人であれば,この4倍くらいの数字になる。土地に根付いた暮らしが性に合っているのか,あたは住宅へのこだわりが強いのか。理由はともかく,日本人は,移住しない民族なのだ。

速水健朗 (2016). 東京どこに住む?住所格差と人生格差 朝日新聞出版 pp.127-128

東京23区内で人口が増える地域

さらに東京の中を個別に見ると,東京都の中でも人口は一様に増えているわけではないことがわかる。東京の中心部である23区内だけを見ても,人口の増減にはばらつきがある。1章でも述べたが,23区の中で人口増加率(平成27年1月現在の「東京の人口(推計)」)が高いのは,千代田区の5.1パーセント,中央区の3.9パーセント,港区の2.4パーセントと,中心に位置する3区である。つまり,東京一極集中の内訳を見てみると,東京内での中心部への一極集中が進んでいることがわかる。
 東京の周辺部はすでに人口減少段階に入りつつあるが,中心部はまだまだ人口増が予測されている。東京都の人口も,2020年をピークに,人口減少に突入するということが予測されているが,それを中心部3区(千代田,中央,港)で区切れば,これらの区は2030年までは,人口増が予測されている。
 東京一極集中は,実のところ東京内一極集中なのだ。

速水健朗 (2016). 東京どこに住む?住所格差と人生格差 朝日新聞出版 pp.121-122

認知能力の二極化

「人間はインターネットによって愚かになったのか,それとも知性に磨きがかかっているのか」という問いに対しては,どちらも「イエス」と答えるしかない。インターネットはかつてないほど多くの学びの機会を提供してくれるし,面倒なことを省いてくれる。あらゆることに理解を深めたいと願う人にとっても,努力せずにすめば幸いだと思う人にとっても有益だ。グーテンベルク聖書をじっくり見ることも,コクテンフグの生態を知ることも,紙クリップの発明者を調べることも,望みさえすればインターネットで実現できる。フランス語や美術史の講義を受け,どんなに地味な分野でも関心を共有するコミュニティを探して参加することができる。
 しかし,そこに好奇心が伴っていなければ——もしくは私たちの多くがそうであるように少しばかり怠惰なら——インターネットは猫の写真を楽しんだり,見知らぬ他人と言い争いをしたりするのに使われるだけになる。本当ならじっくりと考え,結論を導き出し,その過程で多くのことを吸収できるような課題でも,インターネットを使えばあっという間に片づけられる。そのせいで,深く問いかけることでしか発揮されない潜在的な能力は阻害されてしまう。好奇心をアウトソーシングするなら,人々はいつの間にか好奇心を発揮する方法を忘れてしまうだろう。
 私たちが直面している事態は知的レベルの低下ではなく,認知能力の二極化だ——好奇心を発揮する人と,そうでない人の格差が生まれている。意欲的に知的冒険に踏み出す人々は,過去に例をみないほど多くの機会を得るだろう。他人から投げかけられた疑問に手早く応答するだけで満足する人々は,自ら問いを発する習慣を失うか,そもそもそんな習慣を身につけることもないまま一生を終えるのだろう。作家のケヴィン・ドラムは容赦なく言う。「インターネットは賢い人間をさらに賢くし,間抜けをさらに間抜けにする」

イアン・レズリー 須川綾子(訳) (2016). 子どもは40000回質問する:あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力 光文社 pp.151-152

白黒はっきり

映画のすばらしい点の1つは,勧善懲悪に代表されるように,白黒がはっきりしていることだ。たとえばスターウォーズ・シリーズでは,ルーク・スカイウォーカーは白い衣装を,ダース・ベイダーは黒い衣装を身に着けている。そして私たちも,こうした思考に走りやすい。善か悪か,天国か地獄か,正直か嘘か,効率的か非効率か,といった具合である。
 だがこのような思考法は,複雑な現実を過度に単純化しがちだ。単純化してしまえば,誤った確信が持てるので心地よいかもしれないが,何事も白黒をはっきりさせようとする姿勢で臨んでいたのでは,現実の複雑な世界の問題に取り組むのは一段とむずかしくなってしまう。ざっと見回しただけでも,有害な食事療法からガンの過剰治療にいたるまで,過渡の単純化に起因する危険性を指摘した文献には事欠かない。意思決定に関する研究では,高い地位の人間ほど複雑な思考法をすることがあきらかにされたが,このことは,複雑な問題に取り組むときには高度な評価・分析手法が役に立つことを示唆している。

ジェフリー・フェファー 村井章子(訳) (2016). 悪いヤツほど出世する 日本経済新聞社 pp.

VUCAワールド

これは軍事戦略に関する文書だったが,私たちがイメージする現在の世界とそれが抱えている問題に,ぴったり一致している。私たちはスピード,分析,対処せねばならないような不確実性の排除を必要とした「問題の世界」から,忍耐,理解,不確実さをもって取り組むことが必要な「ジレンマの世界」へ移行しつつある。この新しい世界が必要としているのは,謙虚さと新たなアプローチなのだ。
 この新しい世界はVUCAワールドと言われているが,これは次の頭文字をとったものだ。

 Volatility (変動性)
 Uncertainty (不確実性)
 Complexity (複雑性)
 Ambiguity (あいまい性)

スティーヴン・マーフィ重松 坂井純子(訳) (2016). スタンフォード大学 マインドフルネス教室 講談社 pp.86-87

パターンの投影

ネットで検索すれば,ほかにも悪魔が写っているとされる9・11の写真をもっとたくさん見ることができる。一部は偽物だが,すべてがそうであるわけではない。またなかには目をぐっと細めなければ顔とわからないものもあれば,フィリップスの写真のようにすぐにそれとわかるものもある。
 この顔が何を意味するかについては諸説ある。あるウェブサイトはこう書く。「憎悪と暴力の行為は悪魔にとってこの上ないスリルなのだ。悪魔たちはニューヨークでなにが起きるかを知っていて,飛行機が突っ込むその瞬間に現れるべく集結した。人がスリルを求めて列車に飛び乗るのと同じだ」。キリスト教徒の陰謀論者テックス・マーズは,この映像を外敵と位置づける。「悪魔に率いられたアラブのテロリストたちが独自の証拠を残し,自分たちの蛮行を世界に知らしめたいと考えるように,悪魔もまたこの写真で自分の仕業だとわかるように高笑いしながら自慢する。「私がやったのだ。私は自分の仕事を誇りに思うぞ!」」しかし,別の著述家はこの事件に上層の敵を見る。「世界貿易センタービルの惨事の写真を見ると,悪魔は現在このビルに住んでいると言っているように思えないだろうか?これらの写真は世界貿易センタービルに隠れていた悪魔が目覚めたように見えはしないか?なぜなら第一,第二,第三世界の債務をつくり出すのは,連邦準備制度,外交問題評議会,そして世界貿易センターなのだ」。
 またこの悪魔の顔に善意の陰謀または少なくとも善意の者の影を見る人もいる。あるウェブサイトはこの映像を「大いに必要とされているアラーの神の命令——イスラム教でテロに訴えることは許されない,と最終的に告げる最高権威が与える最後通牒」と呼ぶ。
 最後に,私好みの解釈がある。この顔は,データにパターンを投影するアポフェニアという現象だというのである。それは,より詳しく言うなら,パターンに意味を付与するパレイドリアだ。このパレイドリアによって,私たちは月に人の影を見るし,「天国への階段」を逆回転すると悪魔の声を聞いたと思い,ロールシャッハ試験を受けるとはからずも自分の無意識が現れたと考える。ネットには見ていて楽しいパレイドリアの例を示す写真が無数にあり,これらの写真では山やパスタ,時計,雲に思いもかけないようなかたちが出現する。

ジェシー・ウォーカー 鍛原多惠子(訳) (2015). パラノイア合衆国:陰謀論で読み解く《アメリカ史》 河出書房新社 pp.418-419

終末論を信じると

歴史家のリチャード・ランデスによれば,人が終末論を信じる心理状態にあると,「万事が息づき,教え,一つのことを指し示すように思われ,すべてが記号論的になる。あらゆることに意味があり,パターンがあるように見える」。9・11後の数か月,こうした心理状態は避けようもなかった。

ジェシー・ウォーカー 鍛原多惠子(訳) (2015). パラノイア合衆国:陰謀論で読み解く《アメリカ史》 河出書房新社 pp.379

真面目な陰謀論・風刺的な陰謀論

真面目な陰謀論と風刺的な陰謀論を区別できない人もいる。クラスナーの悪ふざけや『アイアンマウンテン報告』が実際に陰謀が存在する証拠と誤って解釈されたことはすでに見てきた。同じことはロバート・アントン・ウィルスンにも起きた。彼の小説はありとあらゆる陰謀論に引用され,そもそも彼の皮肉のおもな対象であるキリスト教原理主義の人びとにすら引用される始末だった。「こうした人びとの多くは,私の著作の特定のくだりを文脈なしに引用すればきわめて彼らに都合がいいと気づいた」と彼はあるインタビュアーに話している。「しかし私はまったく気に病んでいない」と彼は付け加えた。「それは絶妙なジョークに思えるからね」

ジェシー・ウォーカー 鍛原多惠子(訳) (2015). パラノイア合衆国:陰謀論で読み解く《アメリカ史》 河出書房新社 pp.322-323

聞こえると思えば

ポップ音楽の制作者のなかには逆再生すると隠されたメッセージが聞こえる音をわざと挿入した人もいたが,そうしたメッセージはたいてい悪魔的ではなく無意味だったり滑稽なものだったりした。たとえば,エレクトリック・ライト・オーケストラの「ファイアー・オン・ハイ」は「音楽は逆方向に再生できるが,時間は逆行できない。逆に回せ,逆に回せ,逆に回せ」という逆再生で聞こえるメッセージで起きるパニックのパロディをつくった。たいていの場合,メッセージとされるものは心が暗示によって雑音にパターンを見つけた結果だった。なにが聞こえるか教えてもらわずに,レッド・ツェッペリンの「天国への階段」を逆回転して聞いても,たぶん奇妙な音以外にはなにも聞こえないだろう。ところが,悪魔的なメッセージが込められていると知ると,「愛するサタン」という言葉が聞こえてくる。そして逆回転した音楽が再生されている状態で,話者の背後にある暗号とされるものを見ていると,「愛する悪魔」だけでなく,「では,私の愛するサタンに乾杯。その小径は私を悲しみに突き落とし,その力たるやサタンそのもの。彼は己とともにある者に666を与える。小さな道具小屋があって,そこで私たちは彼に苦しめられた。悲しきサタン」という,まとまりのない不気味な「ことばのサラダ」を聞いたと思うかもしれない。

ジェシー・ウォーカー 鍛原多惠子(訳) (2015). パラノイア合衆国:陰謀論で読み解く《アメリカ史》 河出書房新社 pp.259-260

善と悪は表裏一体

善意の者がわれわれを導いてくれるという考えはパラノイアの特効薬になる。「私たちは現在極度の恐怖を抱えた文化に生きています」とバーナムは述べた。「9・11後に敷かれた警備体制のばかばかしさを考えるといいでしょう。どのオフィスに行くにも,磁気読取機を通らねばなりません。それで,誰かがヴァージニア州リーズバーグの裁判所を爆弾で吹っ飛ばすとでもいうのでしょうか?ありえません。図書館?正気ですか?」彼女は天使たち,すなわち「私たちの味方であり,わたしたちが想像する以上に私たちにとって良きことが起きるように願っている心霊的な存在」を信じるほうがましだと考えている。
 しかし,善の陰謀と悪の陰謀は表裏一体の関係にある。神聖な運命を希求していると考えているなら,そこにある他の目には見えないもの(その神聖な運命が果たされるのを望まない闇の危険な力)を見ることは難しくはない。清教徒は彼らの町を荒野にある悪魔に魅入られた丘の上に見た。1957年にユリーカ・カレッジで建国の父たちに独立宣言に署名するよう求めた謎の男について話したあと,レーガンは共産主義者の脅威について話しはじめた。「私たちのなかにはこの敵,邪悪な力とハリウッド社会で間近に接した人がいる」と彼は卒業生に語った。「ここで間違わないでもらいたいのだが,これは邪悪な力なのだ。弾丸の音が聞こえないからといって騙されないでほしい。それでも,君たちは命をかけて戦っているのだから」。

ジェシー・ウォーカー 鍛原多惠子(訳) (2015). パラノイア合衆国:陰謀論で読み解く《アメリカ史》 河出書房新社 pp.198-199

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