I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「臨床心理学」の記事一覧

臨床障害の判定

一般に,臨床障害の有無の判定には,少なくとも9つの基準がある。それには,統計的な頻度の低さ,社会規範からの逸脱,理想的な心の健康状態からの逸脱などが含まれる。犯罪をこの基準に照らすと,「常習的な犯罪は比較的少ない」「犯罪は社会規範からの逸脱そのものである」「犯罪者の心の健康状態は理想的であるとはとても言えない」。それに加えて,自己や他者に与える苦痛や苦悩,あるいは社会,職業,行動,学習,認知における障害,さらにはこれまでに見てきた脳などの器官の数々の機能不全を考慮に入れれば,暴力犯罪を臨床障害と見なせることは明らかだ。もちろん,個々の基準をそれだけで取り上げれば,そのほとんどには相応の弱点があるが,それらを組み合わせれば,暴力犯罪の精神病理学的全体像を描くのに大いに役立つ。常習的な犯罪はこれらの基準を満たし,実際のところDSMに収録されているほとんどの障害と同様に,もしくはいくつかの障害よりもうまく当てはまる。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.502-503

瞑想の効果

マインドフルネス・トレーニングによって,脳に短期的,長期的双方の変化をもたらせることを示した神経科学の研究を振り返ってみれば,瞑想に効果があることはよく理解できるはずだ。瞑想は,左前頭葉を活性化する。それは,何かポジティブな情動を感じると左前頭葉の活動が活性化し,不安が低減するという事実にも合致する。また瞑想は,前頭葉の皮質の厚さを増大させる。この脳領域が,情動のコントロールに重要な役割を果たし,犯罪者においては構造的にも機能的にも損なわれていることはすでに見た。加えて瞑想は,道徳的判断,注意,学習,記憶を司る脳領域を強化する。犯罪者がこれらの認知機能に問題を抱えていることもすでに見た。総括すると,瞑想は,犯罪者においては機能不全をきたしている脳領域を改善する。だから暴力の緩和に役立つのだ。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.448

睡眠不足の影響

2011年,アメリカ疾病対策予防センターは大規模な研究を行い,ティーンの睡眠不足と,喫煙,飲酒,大麻吸引など不健康な習慣の増加に,相関が見られることを発見した。イタリアの研究者も同様の結果を報告している。睡眠不足は,ティーンの生活のあらゆる側面に悪影響を及ぼすようだ。

 生理学的には,以下のような悪影響が出る。
*ストレスで肌が荒れ,にきびや乾癬などができる
*過食したり,不健康なものを食べたりしがちになる
*スポーツで怪我をする
*高血圧になる
*深刻な病気にかかりやすい

 感情面には,以下のような悪影響が出る。
*攻撃的になる
*いらいらする
*衝動的で状況をわきまえない
*自尊心が低い
*気分のムラが大きい

 認知面には,以下のような悪影響が出る。
*学習能力が低下する
*創造力が働かない
*問題解決に時間がかかる
*物忘れがひどくなる

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 112-113
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

社会的励ましと自尊心

興味深いのは,そもそも,そんな行為が”ねぎらわれる”ことだ。強迫性障害を持つ人の障害がねぎらいの対象になることはほぼないが,ファームビルでは,無意味で反復的な強迫性障害タイプの行為が,眉をひそめられるどころか激励される。こういったソフトウェアが,社会的な励ましと自尊心をくすぐるメッセージというちょっとしたフィックスをユーザーに浴びせかけるのも偶然ではない。
 見逃せないのは,ゲームとは関係のないソフトウェア企業も,このようなトリックを取り入れるようになったことだ。現代のアプリケーションは,1時間に何十個ものちょっとした高揚感を提供するように作られている。そして,パソコンでは,スカイプ,ツイッター,電子メール,フェイスブックをはじめ,通信コンポーネントをそなえたありとあらゆるソフトウェアからの押しつけがましい通知が,山のように表示されるようになってきた。

デイミアン・トンプソン 中里京子(訳) (2014). 依存症ビジネス:「廃人」製造社会の真実 ダイヤモンド社 pp. 235

不安と衝動

心の問題には多数の種類があります。じつは,心の問題について,似たもの同士を整理すると,大きくふたつに分かれるという研究があります。
 ひとつは,「背景に不安があるもの」,もうひとつは,「衝動を抑えられないことを特徴とするもの」であるというのです。したがって,すべての心の問題は不安が主な要因であるとはいえません。
 反社会的なタイプの心の問題は,不安よりも衝動のコントロールを問題とするグループに入っています。つまり,こと反社会的なパーソナリティを背景とする犯罪は,不安が主な要因ではないことが多いのです。

杉浦義典 (2015). 他人を傷つけても平気な人たち 河出書房新社 pp.33

マインドフル思考

世の中には,「マインドフルネス」に関する本や,「非合理的思考」についての本も数多く出ている。全体性を備えた人間として最適に機能するにはどうすればいいかを,私たちは現在もなお学び続けているということだ。だが,これまで述べてきた一連の優れた研究は,複雑な判断をこなすためのもっとも効率的な方法を示唆している。それは「意識的思考」と「無意識の思考」の両方を,この順番で臨機応変に活用することである。選択肢が多くて高い認知能力を要する状況における,最良の決断法は次のようなものだ。

1 短い時間,状況をマインドフルに思考する。
2 考えることをやめる
3 思考を温める間,何かまったく無関係の活動をする
4 決断する

トッド・カシュダン,ロバート=ビスワス・ディーナー 高橋由紀子(訳) ネガティブな感情が成功を呼ぶ 草思社 pp.197-198

マインドフルネストレーニング

簡単な瞑想やマインドフルネスのエクササイズにも,実行機能をおおいに向上させる効果がある。「マインドフルネス・トレーニング」は,人が今この瞬間に注意を集中させるのを助け,沸き起こってくる感情や感覚や考えの1つひとつにたやすく気づき,偏った判断をせず,細かい説明は求めずに,体験することは何でも受け入れ,認めることを目指す。1日に約20分のトレーニングを5日間した若い成人のグループは,短い瞑想と組み合わせたこのエクササイズのおかげで,標準的なリラクゼーション・トレーニングに同じ時間をかけた対照群と比べてネガティブな感情が減り,疲れが和らぎ,ストレスへの心理的な反応や生理的な反応が軽減した。また,マインドフルネス・トレーニングをすると,雑念が減り,集中力が高まり,アメリカの多くの大学院が入学の条件として採用している大学院進学適性試験のような標準試験での学生の点数が上がった。
 同様に,正常な成人の脳や老齢期の脳も,実行機能を高める比較的簡単な介入による恩恵にあずかれる。とりわけ注目すべきものが2つある。1つは身体的なエクササイズで,ほどほどの量や短時間の場合でも効果がある。もう1つは,孤独を最小限に抑えたり,社会的な支援をもたらしたり,他人との絆やつながりを強めたりする介入で,そういうものならば事実上何でも効果がある。

ウォルター・ミシェル 柴田裕之(訳) (2015). マシュマロ・テスト:成功する子・しない子 早川書房 pp.263-264

「発達の遅れ」という概念

実をいうと,「精神薄弱」の客観的定義と科学的診断は,今世紀初頭では,きわめてむずかしい課題の1つだった。その定義は,人それぞれによりまちまちだったし,また1人の学者が,その場その場で基準を変えるといったように,安定した正確な基準は,存在していなかった。このとき,ビネーが,年齢尺度という基準を提案したのである。
 ビネー・テストでは,知能がその発達により測定され,知能程度は年齢の高低であらわされる。だから,精神薄弱とは,正常児に追いつくことができないくらい発達の遅れている者だ。正常児も精神薄弱児も,同じ梯子をよじ登っていくだが,その速さがちがう。精神薄弱児は,ゆっくりとよじのぼり,途中で止まってしまう子どもである。だから,同じ梯子(共通尺度)の上での現在の位置を知ることにより,精神薄弱児を選別することができるというのである。ここから,のちの心理学者がおこなったような,おくれた子どもの知能と幼い年齢の子どもの知能との同一視が生じる。ビネー以降につくられた大部分の発達テストは,こうした見地に立っているのである。

滝沢武久 (1971). 知能指数 中央公論社 pp.63-64

フラッシュバックと時代

キングス・カレッジ病院の精神科医であるサイモン・ウェセリー教授によると,PTSDと診断された元軍人の多くは,フラッシュバック(無意識のうちに,過去の記憶がきわめてリアルに思い出されること)などの症状を訴えている。実を言えば,それは新しい医学的現象で,第一次世界大戦後の時代にはまだ知られていなかったし,当然ながら,そんな症状を報告する人はひとりもいなかった。したがって,それを報告する人が出てきたのは,フラッシュバックを描いたテレビや映画のせいではないか,と疑う識者もいる。ある心理実験(被験者の家族に「子どもの頃ショッピングモールで迷子になった」という嘘の証言をしてもらうことで,被験者に嘘の記憶を埋めこむことに成功した)は,トラウマになるような子ども時代の記憶が,たとえ偽りであっても,容易に多くの人に埋め込まれることを示した。その影響されやすい人々は,真実を告げられても,信じようとしないのだ。
 このことは,現実の記憶と,でっちあげられたトラウマの記憶を区別することがいかに難しいかを示している。原因が何であれ,それが現実なのだ。

ティム・スペクター 野中香方子(訳) (2014). 双子の遺伝子:「エピジェネティクス」が2人の運命を分ける ダイヤモンド社 pp.163

虐待は決定的か

では,虐待された子ども(ある概算によると,子どもの5人に1人は虐待されているそうだ)は皆,問題を抱えた大人になるのだろうか。サイコセラピストは一般にそう考えているようだ。しかし,1997年にフィラデルフィアでリンド博士とトロモヴィッチ博士が行ったアメリカの59大学の調査結果のメタ分析と,人口に基づく7つの研究は,その見方に断固として異を唱える。
 博士らは,虐待は避けがたいダメージをもたらすという見方が広く浸透しているが,それは特異な事例に基づくものだ,と結論づけた。そして,一般市民と大学生を調べた結果から,子どもへの性的虐待は必ずしも害を及ぼすわけではなく,それを経験した女性の33パーセントと男性の60パーセントは,「自分は虐待の影響を受けなかった」と述べていることを報告した。奇妙なことに,大学生のごく一部は,そのような接触(おそらく家族による愛撫など)を「好ましい経験だった」と報告しており,精神的ダメージの程度は,子どもがその接触を「合意の上」と見なしているかどうかにかかっていることを裏づけた。

ティム・スペクター 野中香方子(訳) (2014). 双子の遺伝子:「エピジェネティクス」が2人の運命を分ける ダイヤモンド社 pp.160-161

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