I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

典型的行動パターン

 ほとんどの人々にとって,典型的な行動パターンとは,仕事がある日になる。つまり同じ道を通って仕事に行き,帰ってくるという生活が繰り返されるわけだ。その次に頻出するパターンは,ウィークエンドや休日である。休日には睡眠を取ったり,夜中に家庭や職場以外の場所で過ごしたりする。驚くべきことに,自由時間においても,私たちがいく場所やすることは,ほとんど同じで,その点においては仕事のある日と変わらないのだ。しかし第3のパターンは,まったく違ったものになる。ショッピングや遠出など,探求に使われる日だ。第3のパターンの特徴は,明確な構造が存在しないという点である。これら3つのパターンで,私たちの行動の90パーセント以上が構成されている。
アレックス・ペントランド 小林啓倫(訳) (2015). ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学 草思社 pp. 173

集団的知性の基礎

 何が集団的知性の基礎となるのだろうか?これは予想外だったのだが,集団のパフォーマンスを上げると多くの人びとが一般的に信じている要素(集団の団結力やモチベーション,満足度など)には,統計学的に有意な効果は認められなかった。集団の知性を予測するのに最も役立つ要素は,会話の参加者が平等に発言しているかどうかだったのである。少数の人物が会話を支配しているグループは,皆が発言しているグループよりも集団的知性が低かった。その次に重要な要素は,グループの構成員の社会的知性(相手のシグナルをどの程度読み取れるかで測定できる)だった。社会的シグナルについては,女性の方が高い読み取り能力を持つ傾向にあるため,女性がより多く含まれているグループの方が良い結果を残した。
アレックス・ペントランド 小林啓倫(訳) (2015). ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学 草思社 pp. 110

エンゲージメント

 一連の研究の結論として言えるのは,エンゲージメント(繰り返し行われる協調的な交流)は信頼を醸成し,他人との関係の価値を高め,それが結果として協調行動に必要な社会的圧力の土台となるという点である。言い換えれば,エンゲージメントは文化をつくるのだ。さらに研究によって,ソーシャルネットワーク・インセンティブがこのプロセスを加速し,個人的なインセンティブよりもはるかに効果的である場合が多いことが証明された。
アレックス・ペントランド 小林啓倫(訳) (2015). ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学 草思社 pp. 95

アイデアの流れ

 結論を言おう。健康習慣,政治志向,消費活動というこれら3つの例において,周囲の人々の行動に接することは,直接的なものかどうかを問わず,アイデアの流れに大きな影響を与えていた。その力の大きさは,遺伝子が行動に及ぼす影響や,IQが学業成績に及ぼす影響とほぼ等しい。さらにすべての研究において,周囲の行動への接触が,アイデアの流れを規定する最大の要因となっていた。
アレックス・ペントランド 小林啓倫(訳) (2015). ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学 草思社 pp. 71

知人と体重変化

 私たちが特に注目したのは体重変化で,それが友人の行動と,周囲のコミュニティ内にいる同窓生のどちらからより大きな影響を受けるかを調査した。一般的に,人々が普段から接している人物の中で友人と呼べるのは数人だけで,残りはそれほど交流することのない「知人」といった程度の存在である。知人と友人が重なりあうことはごくわずかで,この2つのグループはまったく異なる存在である。
 研究の結果,調査対象となった学生の体重変化と,体重が増えた同窓生の存在との間に強い関連性が認められた。しかし体重を減らした同窓生の存在との間には,関連性は認められなかった。また体重の変化した友人がいても,彼らと交流することは体重変化には何の影響も及ぼしていなかった。同じ傾向は食事習慣においても確認され,同窓生との接触が影響を与えていた。
 この場合では,問題となるのは直接的なやり取りだけではなかった。体重が増加した人々の行為に,直接的な交流もしくは間接的な観察を通じて,合計でどのくらい接したのかという量が重要だったのである。言い換えれば,他人の行動がたまたま目に入ったり,あるいは他人の行動に関する話が耳に入ってきたりするだけで,アイデアの流れが発生し得るのだ。場合によっては,それは会話や電話,ソーシャルメディア上でのやり取りのように,より直接的な交流が生み出す場合以上の流れになる。またアイデアの流れは,他人から「私はこう行動している」という話を聞くよりも,彼らが実際にどのような行動をとっているかを目にした方が生まれやすくなる場合がある。
アレックス・ペントランド 小林啓倫(訳) (2015). ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学 草思社 pp. 64-65

組織集団

 私は「組織」というものを,アイデアの流れの中を航海する人々の集団だと捉えている。アイデアが豊富にある,清らかで速い流れの中を航海することもあれば,よどんだ水たまりや,恐ろしい渦の中を航海することもある。あるときには,アイデアの流れが分岐して,一部の人々が新しい方向へと向かうかもしれない。私にとっては,これこそがコミュニティと文化の現実なのだ。残りは単なる表層的な出来事か,幻影にすぎない。



アレックス・ペントランド 小林啓倫(訳) (2015). ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学 草思社 pp. 60


双方向の会話

 そこから判明したのは,他人との深い関わりを精力的にこなす人々は,より双方向型の会話をする傾向にあり,結果としてソーシャルネットワーク上でのアイデアの流れに重要な役割を果たしているという点だ。これは私が世界で最も生産性の高い人々を観察してきた結果とも一致している。彼らは常に他人と関わり,新しいアイデアを集めており,こうした探求行為が良いアイデアの流れを生み出すのである。



アレックス・ペントランド 小林啓倫(訳) (2015). ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学 草思社 pp. 51-52


アイデアの流れるスピード

 アイデアの流れにおいても同じことが起こる。社会的学習では,行動を示す人物(ロールモデル)と示される人物の間で多くの交流が発生し,行動を示される人物が他人の影響を受けやすい(受容性が高い)場合,新しいアイデアが受け入れられて行動変化が起きる可能性が高くなる。他人からどの程度の影響を受けるかは,ロールモデルが自分と近い人物で,新しい行動が有益なものになりそうか,ロールモデルに対して信頼感を抱いているか,新しい行動とこれまでに学習した行動が一貫したものであるかなど,いくつかの要因によって決まる。広告業界の人びとはよく「バイラルマーケティング」に期待するが,アイデアの流れるスピードは極めて遅くなる場合もあるのだ。



アレックス・ペントランド 小林啓倫(訳) (2015). ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学 草思社 pp. 49


社会物理学

 このようにアイデアの流れに注目するのが,社会物理学という名前をつけた理由だ。通常の物理学の目標が「エネルギーの流れがどのように運動の変化をもたらすか」を理解することであるように,社会物理学は「アイデアや情報の流れがどのように行動に変化をもたらすか」を考察する。



アレックス・ペントランド 小林啓倫(訳) (2015). ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学 草思社 pp. 17


知性のトレードオフ

 いずれにしても,私たちは知能が普遍的に有利だと考えるが,かならずしもそうではない。どの形質にもトレードオフがあり,学習の速さも例外ではないのだ。問題に速く反応する勇敢な鳥には,速度が速いことと正確性のあいだにトレードオフがある。たとえばサイモン・デュカテスは,バルバドス島のコクロムクドリモドキに問題を解くのが速い個体と遅い個体がいることを発見した。しかし結局のところ,問題をゆっくり正確に解くコクロムクドリモドキと比べて,速く問題を解くコクロムクドリモドキは逆転学習などのテスト(バルバドスアカウソがしたようなテスト)の成績が振るわなかった。「大胆な個体はより速く全体を見ますが,表面しか見ていないのです」とダニエル・ソルが説明する。「よりじっくりと問題に取り組む個体がより良い情報を引き出し,それを使ってより柔軟に行動します」


 では,なぜ両方のタイプが1つの集団に残っているのだろう?「おそらく,異なるタイプの個体が環境のことなる年にいい結果を出すからだろう」とデュカテスは推測する。このことが,個体ごとに認知能力が異なる理由を説明するのかもしれない。そして,スズメが教えてくれたように,いろいろな個体がいることがいい理由も。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 394


侵入者と知性

 2人が「定着」に成功した19種の鳥と,失敗した鳥の性質を調べたところ,両者のあいだに2つの大きな差異が認められた。成功した鳥のほうが大きな脳を持っていたのだ。またこれらの鳥は,ルフェーブルが鳥類のIQに組み入れた,イノベーション好きで柔軟な行動を示した。


 ソルがのちに世界中の土地に侵入した428種の鳥を観察したところ,同じパターンが認められた。侵入種の代表格と言えば,イノベーションの王様とも言えるカラス科の鳥たち――アフリカ,シンガポール,アラビア半島のイエガラス,日本のハシブトガラス,アメリカ南西部のワタリガラス――だ。これらの鳥はすべて脳が大きく,侵入地では害鳥と見なされている。


 侵入に成功する両生類や爬虫類も成功率の低い仲間に比べて脳が大きく,この傾向はホモ・サピエンス(俗に「植民する類人猿」と呼ばれ,地上のほぼすべての陸地に侵入している)をふくむ哺乳類でも変わらない。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 359


蛾の退治のため

 鳥類学者のピーと・ダンは,イエスズメを「サイドウォーク・スズメ」と呼ぶ。1850年まで,北アメリカにイエスズメはいなかった。現在では,数知れずいる。誰かが持ちこんだはずだ。1851年,異常発生したガを退治するために16羽のイエスズメがはじめてブルックリンに持ちこまれた。これらのイエスズメはすぐ新世界に定着したわけではないが,翌年さらにイギリスから送りこまれると,今度は定着して繁栄をきわめた。個人や帰化協会が旧世界の動物を自宅の庭や公園に持ちこみ,これがイエスズメの拡散を助けたことはまちがいない。それにしても,この鳥の広がりようは驚異的だ。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 355-356


分散制御システム

 神経科学の用語を使うなら,脳は「大規模並列処理をする分散制御システム」だと言える。つまり,脳はおびただしい数の微少な「プロセッサ」――ニューロン――を持ち,これらのプロセッサは並列処理する一方で全体に分散している。したがって脳にとって解決すべき問題は,これらの分散リソースすべて――その動物が知っていることの総体――をどう統合し,課題(たとえばナビゲーション)にどう立ち向かい,不測の事態(嵐など)にどう対処するかになる。


 この作業は「認知的統合」と呼ばれる。ハチの脳には約100万個のニューロンしかないが,この作業をやってのける。約1000億個のニューロンを持つヒトの脳もやはり同じことをおこなう。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 348-349


機密を運ぶハト

 二度の世界大戦では,ハトは機密情報を迅速に伝えるために使われた。暗号を書いた紙をくくりつけられたハトが,部隊の移動を伝えたり,占領された国で抵抗勢力と連絡を取ったりするために,敵方の前線を越えて送られた。この翼を持つスパイは,「ザ・モッカー」「スパイク」「ステディ」「ザ・カーネルズ・レディ」「シェ・アミ」などと呼ばれた。リーバイによれば,シェ・アミは「途中で脚を負傷し,胸骨を痛めたにもかかわらず」使命を果たしたという。「ウィルソン大統領」という名のハトは第一次世界大戦で左脚を失った。スコットランドの「ウィンキー」は爆撃機の乗組員たちと一緒に北海に墜落した。ウィンキーは破損した機体から放され,約190キロを軽々と飛んでダンディー近くの鳩舎に戻り,そこの空軍基地に墜落を知らせた。基地では救助の飛行機を飛ばして,孤立した乗組員を救助した。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 303


認知能力仮説

 つまり,才気あふれる正確な歌はオスの高い知力と学習能力の証だと言える。「認知能力仮説(cognitive capacity hypothesis)」によれば,メスは才知にもとづいてオスを選ぶとき,歌を手がかりにする。つまり歌の上手なオスは,自分が優秀な学習者であることをメスに見せつけているのだ。この説では,歌のうまいオスはいい歌を習得し,記憶し,忠実に再生するのがうまいだけでなく,知力が問われる作業にも長けている可能性が高い。そうした作業にはあらゆる学習,意思決定,問題解決(いつ,どこで,なにを食べるか,捕食者をどのようにして避けるか,メスの気をどのようにして引くか)があり,それらはおそらく「良好な」遺伝子と子孫に十分に餌を与えられる能力という,メスにとって最重要な形質なのだ。しかし,オスの歌のうまさとほかの認知能力を要する作業をこなす能力とのあいだに実際に相関があるか否かはわかっていない。これまでに得られている証拠ではどちらとも言いがたい。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 250


死を悼む気持ち

「カラスやワタリガラスが死んだ仲間のまわりに集まるのは,仲間の死の原因と結果を知ることが自分の生存にとって重要だからだ」とマーズラフとエンジェルは書く。「私たちは,死んだカラスのパートナーと家族は死んだカラスを悼んでいるとも考えている」


 私もそうではないかと思う。愛,欺瞞,そしてパートナーが食べたいと思っている物を知ることと同様,死んだ者を悼む気持ちは人間だけのものではないはずだ。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 204


関係性の知能指数

 認知生物学者のネイサン・エメリーによれば,このように1羽と固く結びついているためには一種の特別な認知能力が必要になる。これは「関係性の知能指数(RQ)」と呼ばれ,パートナーが出しているかすかな社会的信号を読み取り,これに適切に対処し,その情報を使って相手の未来の行動を予測する能力だ。この作業はかなりの心的能力を必要とする。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 179-180


鳥の個性

 鳥にも個性がある。個性という言葉は人間の性質を指す響きがあるため,この言葉を嫌って,気質,対処法,行動様式などの用語を好む科学者もいる。しかし,なんと呼ぼうと,個々の鳥には人間と同様に時と場所を超えて安定し,一貫している行動パターンがある。大胆な者と意気地がない者,好奇心に満ちた者と慎重な者,冷静な者と神経質な者,学ぶのが速い者と遅い者がいる。「個性のちがいは,リスクに対する反応の個体差を反映すると考えられています」とアプリンは説明する。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 165


感性満腹感

 人間と同じく,鳥もいろいろな物を食べたいので,おいしい物でもたくさんはいらない。この傾向は「感性満腹感(specific satiety effect)」と呼ばれる高度な社会的能力だ(この感覚はわかりやすいと思う。チーズをずっと食べていると,もうあと一かけらも欲しくなくなる。そこで果物を食べる)。カケスのメスが何を好むかは,経験によって異なる。オスにとって,メスのこの変わりゆく好みを知ろうとするのは当然の流れだ。なにしろ,メスが一番望んでいる餌をあげることが,互いの絆を強力にしてくれるのだから。果たして,この実験でカケスのオスはメスが食べたい餌を察することができたらしく,これまで食べていなかったほうの幼虫をメスにあげた。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 162


早期学習仮説

 この点において,カレドニアガラスはヒトの生存戦略を理解する手がかりを与えてくれそうだ。ヒトは霊長類の中でも親に依存した幼年期が長く,その期間に生存戦略をしっかり学習する。オークランド大学のチームによれば,ヒトとカレドニアガラス双方における採餌にかんする高い技術レベルと親に養育される長い幼年期は,相互に因果関係があるらしい。この考え方は「早期学習仮説(early learning hypothesis)」と呼ばれる。学習を必要とする道具づくりがあるために,幼年期が長期化するというのだ。つまりカレドニアガラスは,鳥だけでなくヒトにおいても,道具の使用が生活史に与える進化的な効果を解明する良好なモデルになるかもしれない。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 119


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