I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

ファブリーズの習慣

1998年,ファブリーズが再発売されると,2ヵ月で売り上げは2倍になった。1年もたたないうちに,消費者はこの製品に2億3000万ドル以上を支払った。以来,数十に及ぶ姉妹品(エアフレッシュナー,キャンドル,洗濯洗剤,キッチンスプレー)が生み出され,今ではその年間総売上が10億ドル超と言われている。P&Gはようやく消費者に対し,「ファブリーズは良い香りがするうえに,悪臭を消すこともできる」と宣伝するようになり,スティムソンは昇進し,彼のチームにボーナスが出た。
 欲求という感覚,つまり見た目を整えると同時によい香りにしたいという欲求を生み出して初めて,ファブリーズはヒット商品となった。そして,この欲求こそが,ペプソデントの広告マンであるクロード・ホプキンスが気づくことのなかった,新しい習慣を生むのに不可欠な要素だったのである。

チャールズ・デュヒッグ 度会圭子(訳) (2013). 習慣の力 The Power of Habit 講談社 pp.90

新しい習慣が生まれるとき

新しい習慣が生まれる過程はこうだ。きっかけとルーチンと報酬が結びつき,その後,欲求が生まれてループを作動させる。
 喫煙を例にとってみよう。喫煙者がきっかけ(たとえば,マルボロのたばこ)を見ると,脳がニコチンの直撃を期待し始める。たばこを目にするだけで,脳はニコチンを求めてしまうのだ。それが得られないと欲求はふくれ上がり,喫煙者は無意識にマルボロに手を伸ばすことになる。
 次にメールを考えてみよう。コンピュータがメールの新着を告げる音を出したり,スマートフォンが震えたりすると,メールを開くことによる束の間の気晴らしを脳が期待し始める。それが満たされないと期待はふくれ上がり,ミーティングの場が,テーブルの下で振動する携帯を確認する落ち着かない社員たちの集まりになってしまう。たとえそれがオンラインゲームの結果のお知らせにすぎないとわかっていても,チェックせずにはいられないのだ(振動を消して,きっかけさえ取り除けば,受信箱を確認しようと思うこともなく,ずっと働くことができる)。

チャールズ・デュヒッグ 度会圭子(訳) (2013). 習慣の力 The Power of Habit 講談社 pp.81-82

神経学的欲求

このことから,習慣がなぜ強力なのかがわかる。習慣は神経学的欲求を生み出すからだ。
 こういう欲求はたいてい徐々に生まれるため,私達はその存在に気づかず,その影響にも気づかない場合が多い。しかし,きっかけがある種の報酬と結びつくと,無意識の欲求が脳内で生まれ,習慣のループが作動し始める。

チャールズ・デュヒッグ 度会圭子(訳) (2013). 習慣の力 The Power of Habit 講談社 pp.79

きっかけと報酬

「私はペプソデントで100万ドル稼いだ」ホプキンスはペプソデントが発売された数年後にそう書いている。そのカギは”人間の心理を正しく理解していたこと”だという。それは2つの基本原則にもとづいている。

 1 シンプルでわかりやすいきっかけを見つけること。
 2 具体的な報酬を設定すること。

 この2点をきちんとおさえれば魔法のような効果があると,ホプキンスは受け合っている。その好例がペプソデントだ。きっかけ(歯の膜)と報酬(美しい歯)を打ち出すことで,数百万人が従う生活習慣を生み出した。今日でも,ホプキンスのルールはマーケティングに欠かせない要素であり,数えきれないほど多くの広告キャンペーンの基礎となっている。

チャールズ・デュヒッグ 度会圭子(訳) (2013). 習慣の力 The Power of Habit 講談社 pp.63-64

きっかけ,引き金,報酬

脳の中で起こっているこのプロセスは,3段階のループだ。第1段階は「きっかけ」で,これは脳に自動作業モードになるように,そしてどの習慣を使うかを伝える「引き金」である。次が「ルーチン(きっかけに反応して起こる習慣的な行動や思考)」で,これは身体的なものだったり,脳や感情に関わるものだったりする。そして最後が「報酬」で,これはある具体的なループを,将来のために記憶に残すかどうか,脳が判断する役に立つ。
 時間がたつにつれ,この「きっかけ→ルーチン→報酬」というループは,どんどん無意識に起こるようになる。きっかけと報酬が相互につながると,強力な期待や欲求が生まれる。そこに1つの習慣が生まれる。

チャールズ・デュヒッグ 度会圭子(訳) (2013). 習慣の力 The Power of Habit 講談社 pp.41-42

複雑な習慣

習慣になってしまうのが驚異的に感じるほど複雑な行動もある。たとえば運動の初心者にとって,車をスタートさせてドライブウェーから外に出るときは,大きな集中力が必要だ。それにはもっともな理由がある。まずガレージを開けて車のロックを解き,シートを調整してキーを差し込み,それを時計回りに回し,バックミラーとサイドミラーを動かし,障害物がないかどうか確認し,ブレーキに足を載せギアをリバースに入れたらブレーキから足を離し,頭の中でガレージから道路までの距離を予測し,そのあいだにもタイヤをまっすぐに保ちながら,道路を行き交う車に目を配り,ミラーに映る像からバンパー,ごみ箱,生け垣の距離を計算し,しかもこれらすべてをアクセルやブレーキを軽く踏みながら行い,そしてたいていの場合,同乗者にラジオをいじるのはやめろと頼まなくてはならないのだ。

チャールズ・デュヒッグ 度会圭子(訳) (2013). 習慣の力 The Power of Habit 講談社 pp.39-40

習慣の集まり

「私たちの生活はすべて,習慣の集まりにすぎない」
 1892年にウィリアム・ジェームズはそう書いている。私たちが毎日行っている選択は,よく考えた末の意思決定だと思えるかもしれないが,実はそうではない。それらは習慣なのだ。1つ1つの習慣はそれほど重要ではない。しかし長期的に見ると,食事で何を注文するか,毎晩子供たちに何を言うか,お金を貯めるか使うか,運動をどのくらいするか,考えをどうやってまとめるか,そしてどんな手順で仕事をしているかといったことが,その人の健康や効率,経済的安定,幸福感などに大きな影響を与えている。デューク大学の学者が2006年に発表した論文によると,毎日の人の行動の,じつに40パーセント以上が,「その場の決定」ではなく「習慣」だという。

チャールズ・デュヒッグ 度会圭子(訳) (2013). 習慣の力 The Power of Habit 講談社 pp.7-8

これでいいんだ

どうしてぼくは,そこまで悪くなってしまったのだろう。
 振り返ると,一つの理由に突きあたる。調子を崩した原因は,勝手に薬の量を調節してしまったことだ。ぼくは,本当にいけないことをしていた。
 「調子いいからこれ二錠でいいや」
 「眠れないからこれ三錠に,これ一錠プラスして……」
 主治医が処方してくれた薬の分量を守らず,自己判断で,気分に応じて飲む。少なすぎることもあれば,死にたいのかというくらい多すぎることもある。
 ぼくのしていたことは,きつい言葉を使うと,「薬物濫用」だ。
 薬をシートから出して,テーブルの上に大量に集める。それを手にとって,「これでいいんだ」と口の中に投げ込む。過剰に摂取して,安心を得ようとする。嘘の安心を手に入れてしまうと,摂取する分量を増やすことで,さらに大きな安心を求めてしまう。バランスが崩れ,反動は仕返しのように必ず襲いかかってくる。感情のコントロールは,完全に利かなくなってしまう。
 個人で分量を変えることは,絶対にしてはいけない。

ハウス加賀谷・松本キック (2013). 統合失調症がやってきた イースト・プレス pp.119

負の力

人を怨む,世間を呪う「負の力」。
 これは,簡単に恐ろしいパワーを生み出してしまう。
 どうにでもなれというパワーは,人々を圧倒し,魅了することすらある。
 だけど,それは必ず自分に跳ね返ってきて,自分を追い込む危険な刃物だ。
 だから今のぼくは,「正」の力で物事を考え生きるようにしている。怨まず,呪わず,感謝する。100パーセントできている自信はないが,心がけるように努めている。

ハウス加賀谷・松本キック (2013). 統合失調症がやってきた イースト・プレス pp.99-100

治るんじゃないか

「そんなにたくさん薬を飲まなくても大丈夫だよ」
 「薬なんか,早く止められるように頑張れよ」
 うれしくなったぼくは,先生にも告げず,自分一人の判断で飲むべき薬の量を減らしていった。
 昼の分量をまるまる減らして大丈夫。朝の分量を半分にしてもやっていける。このままいけば治るんじゃないか。ぼくは完全に勘違いし,調子に乗っていた。
 最終的にぼくは,一日一回,それも極少量の薬しか飲まなくなっていた。
 外からどんなふうに見られていたか知らないけれど,自信はあった。薬に頼らなくても,ぼくは普通にやれるんだ,と。ただの過信だったのに,ぼくは間違った方向に舵を切っていた。

ハウス加賀谷・松本キック (2013). 統合失調症がやってきた イースト・プレス pp.96

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