I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

退屈の機能

たとえば,最近退屈していた時間のことを思い出してみよう。カルガリー大学のピーター・トゥーイに言わせると,退屈というのは機能を持ったツールなのだそうだ。現在の人間関係や日々の雑事に自分は満足していない,ということを自覚させてくれるツールである。長々と続くスピーチや長時間のフライトで退屈している時など,自分ではどうしようもない時もあるが,退屈な状況から自力で抜け出すことが可能な時も多い。退屈のおかげで,正しい選択をしていないことや,新しい状況で心を閉ざしている自分に気づくことができる。また興味深いのは,多くの人は退屈を嫌うのに,その時々の退屈にちゃんと対処していることだ。そしてそういう気分はやがて過ぎ去る。退屈を事前に想像すると耐えがたいものに思えるが,皆さんはこれまでの人生で数えきれないほど退屈を経験し,そのたびに有効に対処してきたのである。

トッド・カシュダン,ロバート=ビスワス・ディーナー 高橋由紀子(訳) ネガティブな感情が成功を呼ぶ 草思社 pp.92-93

感じることと表出

ここで明確にしておきたいことは,ネガティブ感情に関して,多くの人は大きな勘違いをしているということだ。たいていは,「ネガティブ感情」と,「ネガティブ感情を表すこと」を,分けて考えている。私が話を聞いたほとんどの人たちは,「人は悪い気分になることは当然あるし,それは避けがたいことだ」という考えには,あっさり賛成してくれた。ところが多くの人が,不満や強い悲しみを表すことは,好ましくないと考えている。コンピュータのように,内部のプロセスは人目に触れず,スクリーンには違うものが表れる方がいいと考えているかのようだ。

トッド・カシュダン,ロバート=ビスワス・ディーナー 高橋由紀子(訳) ネガティブな感情が成功を呼ぶ 草思社 pp.87

PとNの非対称性

バウマイスターの研究チームが出した結論は,「ネガティブな出来事,経験,人間関係,心理状態は,ポジティブなものに比べ,人の感性により強い影響を及ぼす」というもので,非常に包括的で説得力のある結論である。「気のめいるような結論だなあ」と,皆さんは思ったかもしれない。だがネガティビティというのは,理論上,進化の過程で人類に備わった生来の特質とされている。何かを悪いものだと感じる能力(この苦い葉っぱはきっと毒に違いない……)が,生存に必須の能力であるのと同じように,ネガティブ感情もまた,生きる上で必須の感情である。感情は経験の「追跡システム」のようなもので,現在の状況は安全かそれとも避けるべきかということを,私たちは過去の感情の記憶をもとに素早く判断できる。

トッド・カシュダン,ロバート=ビスワス・ディーナー 高橋由紀子(訳) ネガティブな感情が成功を呼ぶ 草思社 pp.82

心の耐性

アジアの文化をことさらに理想化しようというのではない。アジアには逆にポジティブな常道経験を味わうことを避ける傾向があることを,多くの研究結果が示している。アジアの人たちは,状況は常に変遷すると考えていて,そのため,アメリカ人のようにポジティブな瞬間に固執することを警戒する。アジア人は,非常に悪い状況にあっても不安によく耐えられるのに,最高に幸せな瞬間には,幸福感を少々犠牲にしてしまうようだ。我々がここで言いたいのは,欧米人も快適中毒から抜けだして,心の耐性を身につける術を学べるということである。

トッド・カシュダン,ロバート=ビスワス・ディーナー 高橋由紀子(訳) ネガティブな感情が成功を呼ぶ 草思社 pp.75-76

どこを見て答える?

捉え方が大雑把すぎるかもしれないが,アジアの人たちは,常道経験の捉え方が欧米人とは違うように思う。たとえば,白人のアメリカ人やカナダ人に「あなたは幸せですか?」と尋ねたら,相手はすぐに自分の心の内を覗き込む。いつもその時々の自分の気持ちをチェックしているので,かなり的確に答えることができる。しかし同じ質問を,たとえば韓国の女性にしたとする。彼女は自分がどんな気持ちかということだけでなく,その状況で自分がどう感じるべきかという文化的な規範にも同様に考えを巡らすだろう。
 研究者たちは,この「自分はどう感じるべきか」に関しても,興味深い文化的違いがあることを発見した。アジアの人たちは,平安,調和,充足感,冷静さのような穏やかなポジティブ感情を持つことがいいと考える。欧米人は逆に,もっと活気のあるポジティブ感情,たとえば熱意,喜び,誇りなどを好む。つまり,アメリカ人は心が興奮する状態を好み,こういう傾向は「自己強化」される。

トッド・カシュダン,ロバート=ビスワス・ディーナー 高橋由紀子(訳) ネガティブな感情が成功を呼ぶ 草思社 pp.72

幸せという言葉

政治経済の波が高まりを見せるにつれ,快適さに対する期待も高まった。幸福はもはやめzすゴールというよりは,健全な精神に欠かせないものと考えられるようになった。前述の「キリストは幸せだったのか」の研究をした大石たちは,グーグルを使って,1800年から2008年の間にアメリカで出版された本の中に,「幸せな人(Happy person)」という言葉がどれだけ出てくるかを調べた。想像がつくように,1800年台と1900年代初めまで,著者たちはこの言葉をまったく使わなかった。それから,「狂騒の20年代」になると,多くの本が「幸せな人」を取り上げるようになり,1990年には一気にそれが盛り上がる。本屋に行けば,幸せな人という言葉が含まれている本をつい買ってしまう。それ以来この言葉の使用は,ピーク時からほとんど減っていない。1990年から2008年までにこの言葉が使われた回数は,それまでの50年間の総計に匹敵する。社会通念が変化したのは明らかだ。

トッド・カシュダン,ロバート=ビスワス・ディーナー 高橋由紀子(訳) ネガティブな感情が成功を呼ぶ 草思社 pp.58-59

快適さの範囲

研究者ロバート・ビクスラーとマイロン・フロイドは,「人々の快適さの範囲は近年狭まってきている」という興味深い仮説を立てて調査を行なった。何百人もの中学生に,自然についてどう感じるかを尋ねた結果,自然に対して恐怖や嫌悪感を持っている生徒は,室内で友人と遊ぶことを好む傾向があることがわかった。大人が無理に戸外へ行かせても,彼らは手入れされた公園の歩道を歩きたがる。さらに中学生たちに,テキサスの西部開拓民になったつもりで1週間キャンプするとしたら,都会の快適さをどのくらい恋しいと思うかを質問した。「なくても気にならない」を0,「それがなければ生きていけないを」4として,点数を集計したところ,風呂やシャワーは平均が3,水洗トイレが2.63,お湯が出る蛇口が2.69,エアコンが2.66だった。質問項目はもちろん,当時の開拓民たちがなくても平気で暮らしていたものばかりだ。私たちは幌馬車で大陸を横断した時代から,安楽椅子に座ってプレイステーションで遊ぶ現代までの間に,着実に軟弱になってきた。今私たちが「快適」と呼ぶ範囲はどんどん狭まってきているのである。

トッド・カシュダン,ロバート=ビスワス・ディーナー 高橋由紀子(訳) ネガティブな感情が成功を呼ぶ 草思社 pp.56-57

社会的敏捷性

「社会的敏捷性」というのは,移り変わる状況を認識し,それぞれの場で求められていることに自分の行動を適応させる能力のことである。社会的に敏捷な人は,行動的で,選択能力があり,自分の置かれた状況に影響力を及ぼすことができる。状況によって,人に優しいことも,罪のない嘘をつくことも,相手に圧力をかけることもある。また有名人の名前を出したり,相手にへつらったり,お世辞を言ったり,助力を申し出たりすることもある。配偶者や恋人を感心させるために,少し前に冷蔵庫を掃除したことをさりげなく伝えたりもする。社会的に敏捷な人たちは,決してマキャベリ的というわけではない。単に「よき人間であれ」という規範よりも,もう少し包括的で柔軟な社会規範に従って行動するのである。興味深いのは,人がルールを破るケースの多くが,自分が得をするためでなく,相手を喜ばせたり,関係を深めたり,大事な目標を達成するためだったりすることだ。

トッド・カシュダン,ロバート=ビスワス・ディーナー 高橋由紀子(訳) ネガティブな感情が成功を呼ぶ 草思社 pp.43-44

ゼーンズフト

成就しなかった機会や目標への憧れを持ち,それらが成功した状態を夢想することは珍しくない。これは心理学で「ゼーンズフト(憧憬)」と呼ぶ心理状態で,望みが達成できなかった心の傷を癒す薬として重要だ。国際的規模で行われたある研究では,ゼーンズフトを持つ調査参加者たちの多くが夢想を受け入れ,それを心地よいと感じていた。ただアメリカ人だけが例外であり,その点は注目すべきである。アメリカ人はヨーロッパ人に比べ,夢は達成可能だと考える傾向が強く,夢を幻想と捉えることに抵抗を示す。それがネガティブな考え方に思えるからだろう。しかし,夢想は貴重なリソースになりうる。

トッド・カシュダン,ロバート=ビスワス・ディーナー 高橋由紀子(訳) ネガティブな感情が成功を呼ぶ 草思社 pp.37-38

ネガティブ感情の利点

不快と感じて避けがちなネガティブ感情にはいくつか大きな利点があり,そのひとつが,目標達成への執着が薄れることが。悲しみ,欲求不満,自信のなさ,混乱,さらには罪悪感も,そういう働きをする。ネガティブ感情が,いまはブレーキをかけ,じっくり自分の気持を見つめ直し,労力や資源を節約すべきだと教えてくれる。私たちは,達成が望めない信念のために無限に投資を続けてしまいがちだ。望む結果を得る可能性が細る一方なのに,損切りをする決心がつかず,「サンクコスト(埋没費用,投下した労力や資金などが戻ってこないこと)」を考えて止められなくなる。そんな時は,ネガティブ感情のかけるブレーキがとりわけ重要になる。ポジティブもネガティブも包含する「ホールネス」を持つ人たちは,目標に対してもっと柔軟に行動できる。事態がよいペースで進展していれば投資を続け,ダメだと判断すれば見切りをつけて別の目標に切り替えるのである。

トッド・カシュダン,ロバート=ビスワス・ディーナー 高橋由紀子(訳) ネガティブな感情が成功を呼ぶ 草思社 pp.36-37

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