I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

オストラシズム

 ある争点を解決するために人々が集まって投票するという考え方は,2500年ほど前,古代ギリシャの都市国家アテネが西洋文明の基礎を築きつつあった頃から見られる。アテネの市民は政治家を選ぶにあたって,2つの見事な考えを採用していた—1つは,立候補した人が誰であれ,その全員の中から籤で選ぶこと。もう1つは,反対投票を行い,そこで多くの反対票を集めた者を追放することだった。
 反対投票は,オストラコンと呼ばれる陶器のかけらに,好ましくないと思う政治家の名前を記して行われた。票を投じたい市民は,指定された日にアテネの中心にある広場へ行きオストラコンを手渡し,それが集計される。投票総数が定足数である6000票に達した場合(投票権を持つ市民は約5万人いた),不幸にも最も多く票を集めた政治家は,10年間アテネへの出入りを禁じられることになる——これが陶片追放(オストラシズム)だ。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 127-128

平均を取るのがよい

 何らかの値を求めるという問題(磁針が指す方角とか,瓶の中のゼリービーンズの個数という古典的な問題とか)の場合は,それについて出されたすべての答えの平均をとることが最善の方策であり,科学者はこうした種類の問いを状態推定問題と呼んでいる。一方,いくつかの選択肢から正解を選ぶ問題の場合には,多数決が有利になる。だがいずれの場合でも,集団の知恵を最大限に活用するには,満たさなければならない条件が三つだけある。
・集団内の各人は,自ら選んで考えようとし,また実際にそれが可能で,様々な独立した結論にたどり着かなければならない。
・問題には明確な答えがあり,最終的には現実と照合できなければならない。
・集団内の全員が同じ問題に答えなければならない(当然のことに思えるかもしれないが,「同じ問題」だと思っていても,解釈が人によって違う場合は多い)。
 この三条件が満たされたとき,複雑性の数理から次の三つの特筆すべき結論が導かれる。
・状態推定問題に答えるとき,集団は個々のメンバーの大半より必ず成績が良い。そういう場合があるというのではなく,必ずそうなる。
・複数の解答がありうる(ただし,正解は一つだけの)問題に関連する諸事実について,集団のメンバーの大多数がある程度知っている場合,多数決はほとんど必ず正解になる。たとえば,100人からなる集団の各メンバーが,それぞれ60パーセントの確率で正解を得られたとすると,厳密な数式から,多数派の答えが正解になる可能性は99パーセント以上あることが分かる。
・事情によく通じている人が集団内に少ししかいないときでも,たいていの場合はそれで十分であり,多数派の意見が正解となる。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 101-102

わかりやすい事象で説明する

 どうやら私たちの大半には,変わったことや異常なことを,なじみ深くわかりやすい事象で説明する傾向が染みついているようだ。たとえば,近づいてくる竜巻の轟音は,列車が通過するときの音と間違われることが多い。また,竜巻以外には考えられないのに,その音が必ずしも警告にならない場合もある。サイエンスライターのビル・ブライソンは次のような話をしている——アイオワ州にいた祖父が,ある晩,「何億匹ものスズメバチ」が飛んでいるような音で目を覚ました。窓の外を覗いてみたが何も見えなかったのでベッドに戻ったが,翌朝目を覚ますと,自分の車が野外にあるのを見つけて驚いた。竜巻が通過して,車庫をまるごと吹き飛ばしていたのだ。
 それほど派手ではないがもっと悲劇的なことに,一酸化中毒なのに,気が遠くなるのを病気のせいだと思い,ガスの出どころから遠ざからないで死んでしまう人がいることもわかっている。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 90-91

目が見えないアリのルール

 グンタイアリはほとんど目が見えないが,以前に経路を通ったアリが残したフェロモンをたどること,そして新しい社会的力を使うことで,整った行動をこなすことができる。新しい力は2つある。1つは,基本的な回避則に変更を加えたもので,逆方向に進む2匹のアリが真正面からぶつかったときに,どちらも方向を変えるが,巣から遠ざかっていたアリの方が動きを素早く行うものとする。
 もう1つは,他のアリと遭遇した後も,個々のアリはこれまで進んできた方向に進むという規則だ。コンピュータ・モデルからは,この2つの規則があれば,ほとんど目が見えないアリがそれぞれの経路を作る様子を十分に説明できることが明らかになっている。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 80-81

一発屋ではない

 何らかの問題に関心を向けさせ,それが公共の議題として扱われ続けるようにしたいとき,正のフィードバックは非常に有効な手段になりうる。多くの活動団体がこのことに気づき,あれこれ試みているようだが,より有効に使うには,もう少し頭を使って計画する必要があるだろう。蟻コロニー最適化から得られる教訓を採用するならば,最善の戦略とは,大量の投書をいっぺんに出して後はそのままにしておくことではなく,活動団体のメンバーに問題のいろいろな側面について着実なペースで投書をさせることだ。この方策は,フェロモンの濃度を継続的に高めることで蒸発を防ぐのと同じであり,ここからまた別の規則が現れてくる——ある問題に集団や社会全体の注目を集めようとするときは,一発屋を目指すのではなく,時間の経過に従って次々と別の面を押し出す計画を立てること。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 66

仮想のアリの最適化

 アリのやり方はこれとは少し違う。アリたちは,正のフィードバック原理を使って精確な近似解を求めるのである。コンピュータ・シミュレーションに登場する仮想昆虫は,16の都市をすべて訪れてから戻ってくるよう指示されたのち,架空の世界に解き放たれる。あらゆる都市は架空の線(「リンク」と呼ばれる)で互いに遺漏なく結ばれていて,各都市間の距離はその線の長さで表されている。
 このシミュレーションが巧妙なのはここからだ。仮想のアリは自分がどれだけ移動したかを覚えていて,巣に帰ってくると,それぞれのリンクに道のり全体の長さに応じた数字をつける。数字がフェロモンの代用というわけだ。各リンクには同じ数字が割り当てられるが,全体の道のりが短くなるほどその数字は大きいものになる。したがって移動をする仮想のアリの数が増えるにつれて,最短距離の道のりに含まれているリンクの数字は加算されていく(フェロモンが濃くなっていく)ことになる。さらに,後から移動するアリがリンクを選ばなければならない場面では,一番大きな数字がつけられたリンクを選ぶようプログラムされているので,数字はさらに増える。
 この後がさらに見事である。そうした数字が,あらかじめ定められた割合で少しずつ減らされていくのである。現実の世界では通りに道に残されたフェロモンは蒸発するので,それに対応させているわけだ。こうして,(使用頻度が低い通り道ではフェロモンが蒸発し,徐々に顧みられなくなるのと同様に)使われないリンクの数字が大きく減っていき,いちばん効率的なリンクが前よりも目立つようになる。ここまでくれば,それほど時間はかからない。蟻コロニー最適化がその任務を果たしたのである。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 62-63

3つの原則

 シミュレーションから明らかになったのは,目標を知っているミツバチが群れをうまく導くためには,他の仲間に自分が事情に通じていることを明かす必要も,売り込む必要もないということだった。目標を知っている固体がほんのわずかでもいれば,しかるべき方向に素早く移動するだけで,他の大多数の何も知らないミツバチの集団を導くことができるのである。そうした誘導はカスケード効果[ドミノ倒しのような波及的な作用のこと]を通じて行われ,それによって,何も知らないミツバチが,近隣の個体が向かう方向を目指すようになる。したがって方向を知っているミツバチがわずかしかいなくても,レイノルズの三つの規則,「回避」,「整列」,「引き寄せ」があれば,そのミツバチが向かう方向に群れ全体が進むことになる。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 50

単純なルール

 一見すると,ボイドのように生物に似せたふるまいを再現するには,非常に入り組んだ精巧なプログラムが必要なように見える。だが,実際のプログラムはとても短いもので,個々のボイドは次の3つの単純な規則に従っているにすぎない。
・他の固体に衝突するのを避ける。
・近隣の個体群が向かっている方向を平均し,その方向へ向かって動く。
・近隣の個体群の位置を平均し,その方向へ向かって動く。
 この規則を簡潔にまとめると次のようになる。
・回避(分離)
・整列
・引き寄せ(結合)
 次に空港や駅やサッカー場などに行くことがあったら,少し時間をとって周囲の人々が歩いているところを観察してみてほしい。たいていの場合,ほとんどの人がこの三つの規則に従っていることがわかるだろう。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 44-45

人間の集団と気体分子

 人間の群衆にも,よく似た転移が生じる。工学者のロイ・ヘンダーソンは,大学構内の学生や運動場の子どもの動きを観察するうちに,個々人の動きが気体分子のようなランダムな運動になぞらえられることを発見した。いずれの場合も,その動きは,気体分子に見られる速度分布を記述する方程式(マクスウェル=ボルツマン分布)に合致しており,観察した学生や子どもの動きにこの理論を当てはめてみると,速度分布は同じパターンに従うことがわかったのである。唯一の違いは,学生よりも子どものほうがエネルギーがずっと大きく,したがって平均速度がはるかに高いということだけだった。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 40-41

集団の適応能力

 集団が集合的な適応能力(集団が全体として状況の変化に対応する能力)を得るには,ふつう,非線形的な規則だけでは十分でない。複雑性理論家のジョン・ミラーとスコット・ペイジは,その適応能力について,仏教の八正道をふまえ,おおよそそれに基づいた次の8つの基準を挙げている。
 正見 集団内の個体(複雑性の科学者はそれを行為者[エージェント]と呼ぶ)は,集団内の他の個体や広く世界から情報を受け取り,それを理解しなければならない。
 正思惟 エージェントは,達成したいと思う何らかの目標を持たなければならない。たとえば,魚は食べられるのを避けたいというものでもいいし,人は政治的変化を実現するために集団で行動したいと思うものでもいい。
 正語 エージェントは情報を受け取るだけでなく,送らなければならない。これは必ずしも言葉による必要はない。たとえば,キイロタマホコリカビのような粘菌がグレッグスの状態にあるときは,化学物質によるメッセージを送って通信するし,私たちの脳のニューロンは電気的な刺激をやりとりする。
 正業 エージェントは何らかの形で付近のエージェントの行動に影響を及ぼすことができなければならない。
 正命 エージェントは集団内での自らの行動に対して,行った仕事に対する給与であるとか,仕事をしなかったら辞めさせられるといった罰の恐れなどの,何らかの賞罰を受け取らなければならない。
 正精進 エージェントは,他のエージェントの行動を予測したり,それに対応したりするときに使える戦略を必要とする。
 正念 合理性にはいろいろな種類や水準がある。複雑な社会にいる私たちのエージェントとしての課題は,各人にとって正しい水準の合理性を選んで用いることである。
 正定 複雑性がどう生じるかを理解するには,時として,昔ながらの科学的手法に戻らなければならないことがある。つまり,1つか2つの重要な過程に狙いを定め,一時的に他は無視してみるのである。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 31-32

魚の群れのパターン

 しかし,パートリッジは目眩など気にしてはいられなかった。実験を終えて魚を海に放した後(あるいは食べた後。論文はどちらだったかには触れていない),パートリッジと助手たちは,1万2000コマ以上あるフィルムから魚の相対的な位置を苦労して測定しなくてはならなかったのである。そしてついに,群れをひとまとまりで動かす鍵となる規則を見つけることができた。魚が従っていた規則は次の二つだけだった——正面に見える魚の後を追うこと(それがいれば),そして,横にいる魚と速さをそろえることである。
 群れの複雑な動きの根底には,表れ方は様々であっても,常にこの二つの規則があることは今では知られている。これは,魚の群れが形や方向を変えるときに生じる見事なきらめきや,鳥の群れ,昆虫の群れ,人混みなど,あらゆる群れの動きにあてはまる。だが,こうした集団の動きに見られる複雑性は実際にはどうして生じるのだろう?そこにはどんな作用が関与しているのか?この問いの答えを見つけるには,物理学の世界という,別のよりどころに目を向ける必要がある。
レン・フィッシャー 松浦俊輔(訳) (2012). 群れはなぜ同じ方向を目指すのか? 白揚社 pp. 24

遺伝とIQのよくあるパターン

 実際この経緯は,遺伝学とIQをめぐる研究の一般的なパターンである。まずIQに関わる遺伝子変異を見つけたと言い出す研究者が現れる。そして新たなデータを手に入れると,先の主張は誤りだったと悟るのだ。
 クリストファー・チャブリス率いる研究者チームによる最近の研究では,IQに関わる遺伝子変異についての12の有名な科学的発表を,1万人ものデータをもとに検証した。その結果,12の先行研究が報告した相関性のどれ1つとして再現できなかった。
 これらの主張はどこがいけないのか?いまや科学界でははっきりしていることだが,人間のゲノムには数百万通りもの違いがある。ごく単純に言えば,数が多すぎて試験しきれないのだ。
 山ほど多くのツイートを調べて証券市場の上げ下げとの関連を調べたら,やがてある種のツイートがそれを解く鍵だという結論に達する。だがそれは,まったくの偶然の産物だ。
セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ 酒井泰介(訳) (2018). 誰もが嘘をついている:ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性 光文社 pp. 283-284

ラッキーコイン探し

 証券市場を予測する戦術を,ラッキーコイン探しだと考えてみよう。ただしそれを見つけるためには,次のような厳密な試験が必要だとする。まず1000枚のコインに1から1000まで番号をつける。あなたは2年間毎朝,それをすべてトスして表が出たか裏が出たかを記録し,合わせてその日のスタンダード&プアーズ(S&P)平均が上げたか下げたかも記録する。そしてその全データをじっくりと研究する。そしてついに気がつく。コイン391番が表だと,S&P平均が上げる確率は70.3%だ!この関係は統計学的には完全に有効だ。ラッキーコインを見つけたのだ!毎朝,コイン391をトスして表になるたびに株を買えば,もう安物のTシャツを着てインスタント・ラーメンをすする生活ともおさらばだ!
 ……などと結論づけるなら,あなたも悪魔のような「次元の呪い」の犠牲者の一人となる。この呪いは,多くの変数(次元)—この場合は1000枚のコイン—を,それより少ない観察—この場合は2年間で延べ504日の場の引け値—で調べようとすると必ず降りかかる。変数の1つ—この場合はコイン391番—が上げ相場を予告できると解釈しやすくなるのだ。だが変数を減らすと,たとえばコインの枚数を100枚に減らすと—ある1枚のコインの裏表が上げ市況に一致する確率は大幅に下がる。観察の回数を増やすと—たとえばS&P平均の結果を20年にわたって記録するなら—コインの予測力はついていけなくなる。
セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ 酒井泰介(訳) (2018). 誰もが嘘をついている:ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性 光文社 pp. 280

エリート校の教育の効果はあるのか

 では,スタイベサント高校の回帰不連続分析の結果はどうだったか?この研究を担ったのはMITとデューク大学の研究者ら—アティラ・アブドゥルカディログル,ジョシュア・アングリスト,パラグ・パサック—である。彼らは合否線ぎりぎりの学生たちのその後を調べた。イルマズのようにあと1問か2問で合格を逃した学生たちと,合否線を1,2問で上回って首尾よく合格した人々のその後を大規模に比較したのである。成功の基準はAP成績,SAT得点,そしてやがて進学した大学のランキングとした。
 その結果の衝撃は,彼らの論文の題名—『エリート幻想』—が雄弁に物語っている。スタイ高入りした影響?まったくのゼロだった。合否線のわずかな上下に位置した人々は,同等のAP成績やSAT得点を上げて同等の大学に進学していた。
 スタイ校出身者が他の高校の出身者よりも栄達する理由はただ一つ,もともと優秀な人間を採っているから,というのが研究の結論だった。同校の学生がAPやSATの成績が良いにしても,果てはより良い大学に進学しても,それはスタイ校での教育を原因とする結果ではない。
セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ 酒井泰介(訳) (2018). 誰もが嘘をついている:ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性 光文社 pp. 268

過酷な環境と再犯率

 M・キース・チェンとジャセ・シャピロという2人のエコノミストは,連邦裁判所が用いる明確な分断線を利用して,状態の悪い刑務所が再犯率に及ぼす影響を調べた。米国では連邦刑務所の収監者は罪状と犯罪歴に基づいて点数を与えられ,この点数によって収監体験が決まる。高得点者は高度警備矯正施設に送られ,ひいては他者との触れ合いや移動の自由を限られ,刑務官や他の収監者からの暴力を受ける可能性も高まるのだ。
 ここでも高度警備の施設に送られる収監者全体と低警備度の施設に送られる収監者全体を比較するわけにはいかない。高度警備度施設の収監者は殺人者やレイプ犯が多く,低警備度ではドラッグ関連や軽度窃盗犯が多いからだ。
 だがそれらの施設を分ける分断線ぎりぎりの収監者は,罪の重さや犯罪歴の点でほぼ同一と言える。しかしごくわずかな点の違いが,非常に異なる収監体験に続くのである。
 研究の結果,より過酷な環境に置かれた収監者は,出所後の再犯率が高かった。過酷な環境は,犯罪を抑止するのではなく,むしろ収監者の態度を硬化させ,シャバに出た後に,より暴力的にしていたのである。
セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ 酒井泰介(訳) (2018). 誰もが嘘をついている:ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性 光文社 pp. 267-268

長生きできる都市は

 どれが貧困層が長生きできる都市?
 ・宗教性の高い都市
 ・汚染度が最も少ない都市
 ・健康保険の被保険率が最も高い都市
 ・多くの富裕層が住んでいる都市
 最初の3つ—宗教,環境,健康保険—は貧困層の長寿命に相関していない。チェッティらの研究によると,重要な変数は,その街にどれだけ多くの富裕層が暮らしているか,である。金持ちが大勢暮らしている街では,貧乏人の寿命も延びるのだ。たとえばニューヨークの貧困者はデトロイトの貧困者よりもずっと長生きする。
 どうして富裕層の存在が貧困層の長寿命のこんなに強い予想因子になるのか?一つの仮説は—推論的ではあるが—チェッティの研究に加わり私の指導教官だったデイビッド・カトラーによるものだ。推進力になっているのは行動伝染だという説である。
 習慣には伝染性があることを示す研究は山ほどある。豊かな人々のそばに住む貧しい人々も,富裕層の行動を身につけるのかもしれない。こうした習慣の中には,たとえばもったいぶった言葉遣いのように健康に影響しそうにないものもある。だが運動習慣のように,明らかに良い影響があるものもある。実際,豊かな人の周囲で暮らす貧しい人々は,より運動をし,喫煙率が低く,肥満率も低い。
セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ 酒井泰介(訳) (2018). 誰もが嘘をついている:ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性 光文社 pp. 202-203

人生に刷り込まれる時期

 彼ら研究者らが発見したのは,政治的意見もスポーツ・チームの贔屓も,それが決まる過程はさほど変わらないことだった。人間には生涯の刷り込みになる重要な時期があるのだ。多くの米国人は14歳から24歳という重要な時期に,そのときの大統領の人気に従って意見を形成する。その頃に人気のある共和党大統領あるいは不人気な民主党大統領を戴くと,感受性の強い彼らは共和党員になる。その逆も同じ。
 そしてこうした重要期に育まれた見解は,総じて生涯続く。
セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ 酒井泰介(訳) (2018). 誰もが嘘をついている:ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性 光文社 pp. 194

8歳前後に触れる情報

 成人男性がどのチームの贔屓になるかについて,またしても8歳前後の頃の出来事が重要であることが確認された。総論として5歳から15歳までの時期が,少年を形作るうえでカギを握る。贔屓を根づかせるうえでは,19歳や20歳当時の経験は8歳時に比べて8分の1しか重要ではない。その頃には,生涯の贔屓チームが心に根づいているか,あるいは野球に興味を持たない人間になっているかだ。
セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ 酒井泰介(訳) (2018). 誰もが嘘をついている:ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性 光文社 pp. 192

検索データ上の偏見

 検索データ分析には,何がヘイトを起こし,また減らすのかを学ぶ別の有意義な使い方もある。たとえば黒人のクォーターバックがドラフトされた際の,あるいは女性が公職に当選した際の,人種差別的,性差別的な検索数を調べることができる。地域の警察活動と人種差別主義が,あるいは新しい反セクハラ法と性差別主義が,どのように呼応しているかも調べられる。
 意識下の偏見について学ぶことも有意義だ。たとえば,少女を励まし,あまり容姿を気にしなくてすむよう,誰もがもっと努力できるかもしれない。グーグル検索データやネット上の真実の泉は,人間の心の闇をかつてないほど明らかにする。これは時として認めにくい事実だ。だがそれが私たちを強くもする。データを持って心の闇と戦うことができるのだ。世界の問題に対するデータを豊富に集めることは,問題解決への第一歩なのだ。
セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ 酒井泰介(訳) (2018). 誰もが嘘をついている:ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性 光文社 pp. 188

Facebookの意味

 フェイスブックはデジタル自白剤ではなく,「自分はこんなにいい暮らしをしていると友人にデジタル自慢させる薬」なのだ。フェイスブック上では,平均的なユーザーは幸せな結婚生活を送り,カリブ海に休暇旅行に出かけ,『アトランティック』の記事を追いかけている。現実には多くの人はいらいらとスーパーのレジ前に並びながら『ナショナル・インクワイアラー』を横目で立ち読みしつつ,もう何年も一緒に寝ていない伴侶からの電話を無視している。フェイスブック上では,家族生活は完璧に見える。現実には悲惨なもので,そのあまり子供を持ったことを後悔する人もいるくらいだ。フェイスブック上では,あたかもすべてのヤングアダルトが週末にはいかしたパーティーで楽しんでいるかのようだ。実際には彼らの多くは自宅に引きこもり,ネットフリックスばかり見ている。フェイスブック上では,彼女は彼氏との息抜き旅行での26枚の幸せな写真を投稿する。現実には,この写真を投稿するや否や,彼女は「彼氏がセックスしてくれない」とググる。そして彼氏はおそらくそのとき「グレート・ボディ,グレート・セックス,グレート・ブロウジョブ」を見ているのだ。
セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ 酒井泰介(訳) (2018). 誰もが嘘をついている:ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性 光文社 pp. 176

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