I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「教育心理学」の記事一覧

意図的練習とフロー

 現在,私はつぎのように考えている。


 大変な努力を要する「意図的な練習」を行うには,「うまくなりたい」という強い意欲が最大の動機となる。あえて自分の現在のスキルを上回る目標を設定し,100%集中する。自分の理想,すなわち練習前に設定した目標に少しでも近づくために,言わば「問題解決」モードに入って,自分のあらゆる行動を分析する。フィードバックをもらうが,その多くはまちがっている点を指摘するものだ。指摘を受けて調整し,また挑戦する。


 いっぽう,フローのときに優勢なのは,まったく別の動機だ。フロー状態は本質的に楽しいもので,スキルの細かい部分が「しっかりとうまくやれているか」など気にしない。よけいなことはなにも考えず,完全に集中しており,「問題解決」モードとはかけ離れた状態だ。自分の行動をいちいち分析せずに,無心で没頭している。


 そういうときは挑戦すべき課題と現在のスキルが釣り合っているため,フィードバックも,よくできた部分を指摘されることが多い。自分を完全にコントロールできているように感じ,実際そのとおりになっている。気分が高揚し,時間の観念を忘れてしまう。全速力で走っていても,頭をフル回転させていても,フロー状態にあるときは,なにもかもすんなりとラクに感じられる。


 言い換えれば「意図的な練習」は準備の段階で,フローは本番で経験するものだと言える。



アンジェラ・ダックワース 神崎朗子(訳) (2016). やり抜く力―人生のあらゆる成功を決める「究極の力」を身につける ダイヤモンド社 pp.186-187


天職は簡単には見つからない

 ところが,実際にインタビューで話を聞いてみると,ほとんどの人は「これだ」と思うものが見つかるまでに何年もかかっており,そのあいだ,さまざまなことに興味をもって挑戦してきたことがわかった。いまは寝ても覚めても,そのことばかり考えてしまうほど夢中になっていることも,最初から「これが自分の天職だ」と悟っていたわけではなかったのだ。



アンジェラ・ダックワース 神崎朗子(訳) (2016). やり抜く力―人生のあらゆる成功を決める「究極の力」を身につける ダイヤモンド社 pp.142


興味の持てる仕事

 では,若い人たちに「自分が本当に好きなことをしなさい」とアドバイスするのは,バカげたことなのだろうか?じつはこの問題については,「興味」を研究している科学者たちが,この10年ほどで最終的な結論に達した。


 第一に,人は自分の興味にあった仕事をしているほうが,仕事に対する満足度がはるかに高いことが,研究によって明らかになった。これは約100件もの研究データをまとめ,ありとあらゆる職種の従業員を網羅したメタ分析による結論だ。


 たとえば,抽象的な概念について考えるのが好きな人は,複雑なプロジェクトを緻密に管理することは楽しいとは思えない。それよりも数学の問題を解くほうがずっといい。また人との交流が好きな人は,一日じゅうひとりでパソコンに向かっているような仕事は楽しいとは思えない。それよりも営業職や教職などのほうが活躍される。


 さらに,自分の興味に合った仕事をしている人は,人生に対する全体的な満足度が高い傾向にあることがわかった。


 第二に,人は自分のやっている仕事を面白いと感じているときのほうが,業績が高くなる。これは過去60年間に行われた,60件の研究データを集計したメタ分析による結論だ。自分の本来の興味に合った職種に就いている従業員たちは,業績もよく,同僚たちに協力的で,離職率も低いことがわかった。また,自分の興味に合った分野を専攻した大学生は,成績が高く,中途退学の確率も低いことがわかっている。


 もちろん,ただ好きなことをやっているだけでは仕事は手に入らない。ゲームの「マインクラフト」がいくら得意でも,それだけで生計を立てるのは難しい。それに世のなかには,多くの選択肢から好きな職業を選べるような恵まれた状況にない人もたくさんいる。私たちが生計を立てる手段を選ぶにあたっては,かなりの制約があるのが実情だ。



アンジェラ・ダックワース 神崎朗子(訳) (2016). やり抜く力―人生のあらゆる成功を決める「究極の力」を身につける ダイヤモンド社 pp.140-141


遺伝の影響を考える場合

1.「やり抜く力」や「才能」など,人生の成功に関わる心理学的な特徴は,遺伝子と経験の影響を受ける。


2.「やり抜く力」をはじめ,いずれの心理学的な特徴についても,その遺伝に関係する遺伝子はたったひとつではない。



 そして,つぎの重要なポイントも加えておきたい。



3.遺伝率の推定値を見れば,形質の発現のしかたは人によってさまざまであることがわかるが,「平均」がどれだけ変化しているかは,遺伝率を見てもわからない。



 たとえば,身長の遺伝率は多様性を示唆しており,一定の集団内でも,背の高い人もいれば低い人もいることを示している。しかし,人びとの「平均身長」がどれだけ変化したかについては,何の情報も示していない。


 このことは,「環境」が私たちに与える影響がきわめて大きいことを示すエビデンスであり,非常に重要である。



アンジェラ・ダックワース 神崎朗子(訳) (2016). やり抜く力―人生のあらゆる成功を決める「究極の力」を身につける ダイヤモンド社 pp.119


目標をあきらめる必要性

 実際,重要度の低い目標をあきらめるのは悪いことではなく,むしろ必要な場合もある。ほかにもっとよい実行可能な目標があるなら,ひとつの目標だけにいつまでも固執するべきではない。また,同じ目標を目指すにしても,いまの方法よりもっと効率的な方法や,もっと面白い方法があるなら,新しい方法に切り替えるのは理にかなっている。


 どんな長い道のりにも,回り道はつきものだ。


 しかし,重要度の高い目標の場合は,安易に妥協するべきではない。



アンジェラ・ダックワース 神崎朗子(訳) (2016). やり抜く力―人生のあらゆる成功を決める「究極の力」を身につける ダイヤモンド社 pp.108


バフェットの目標焦点化手法

 そう言ってバフェットは3つのステップを説明した。



1.仕事の目標を25個,紙に書き出す。


2.自分にとってなにが重要かをよく考え,もっとも重要な5つの目標にマルをつける(5個を超えてはならない)。


3.マルをつけなかった20個の目標を目に焼きつける。そしてそれらの目標には,今後は絶対に関わらないようにする。なぜなら,気が散るからだ。よけいなことに時間とエネルギーを取られてしまい,もっとも重要な目標に集中できなくなってしまう。



 この話を聞いたとき,私は思った。仕事の目標が25個もある人なんているんだろうか?いくら何でも多すぎでは?


 そこで実際に,自分のいまの目標(あるいは携わっているプロジェクト)を罫線入りのメモ用紙に書き出してみた。長々と続くリストは,気がつけば32行にもなっていた。それで納得したのだ。なるほど,これは役に立つかもしれない。



アンジェラ・ダックワース 神崎朗子(訳) (2016). やり抜く力―人生のあらゆる成功を決める「究極の力」を身につける ダイヤモンド社 pp.95


スキルと成果

 さらに,私は「スキル」と「成果」のちがいも付け加えたい。


 努力をしなければ,たとえ才能があっても宝の持ち腐れ。


 努力をしなければ,もっと上達するはずのスキルもそこで頭打ち。


 努力によって初めて才能はスキルになり,努力によってスキルが生かされ,さまざまなものを生み出すことができる。



アンジェラ・ダックワース 神崎朗子(訳) (2016). やり抜く力―人生のあらゆる成功を決める「究極の力」を身につける ダイヤモンド社 pp.78


才能と努力の作用

 「才能」とは,努力によってスキルが上達する速さのこと。いっぽう「達成」は,習得したスキルを活用することによって表れる成果のことだ。


 もちろん,優れたコーチや教師との出会いなどの「機会」に恵まれることも非常に重要だ。むしろ個人的などの要素よりも,そちらのほうが重要かもしれない。


 しかし私の理論では,そのような外的要因や「幸運」は考慮しない。私の理論はあくまでも「達成の心理学」に関する理論であり,成功要因は心理学的なものだけではない以上,不完全なものだ。


 だが,それでも役に立つと考えている。この理論が示しているのは,複数の人びとが同じ状況に置かれた場合,各人がどれだけのことを達成できるかは,「才能」と「努力」のふたつにかかっているということだ。


 「才能」すなわち「スキルが上達する速さ」は,まちがいなく重要だ。しかし両方の式を見ればわかるとおり,「努力」はひとつではなくふたつ入っている。


 「スキル」は「努力」によって培われる。それと同時に,「スキル」は「努力」によって生産的になるのだ。



アンジェラ・ダックワース 神崎朗子(訳) (2016). やり抜く力―人生のあらゆる成功を決める「究極の力」を身につける ダイヤモンド社 pp.70-71


天賦の才を重視したほうが現状に甘んじられる

 言い換えれば,「天賦の才を持つ人」を神格化してしまったほうがラクなのだ。そうすれば,やすやすと現状に甘んじていられる。私自身,教師生活の初めのころを振り返ってみると,まさにそうだった。「才能」のある生徒しかよい成績は取れないと思い込み,そのように指導したせいで,生徒たちも,私も,「努力」の大切さを深く考えることがなかった。



アンジェラ・ダックワース 神崎朗子(訳) (2016). やり抜く力―人生のあらゆる成功を決める「究極の力」を身につける ダイヤモンド社 pp.66


「努力と才能」観

 「新しい従業員を雇うとします。知的能力が高いことと,勤勉であることでは,どちらのほうが重要だと思いますか?」


 この場合,「勤勉であること」と答える人は,「知的能力が高いこと」と答える人の5倍近くにものぼる。


 こうした調査結果は,心理学者のチアユン・ツァイがプロの音楽家を対象に実施したアンケート調査の結果とも一致している。音楽家たちも,同様の質問に対してほぼ例外なく,「生まれながらの才能」よりも「熱心に練習すること」のほうが重要だと回答した。


 しかし,ツァイがある実験でもっと間接的な方法によって人びとの心理的傾向を調査したところ,正反対の結果が表れた。その実験では,参加者(やはりプロの音楽家たち)に対し,同等の実績をもつ2名のピアニストのプロフィールが紹介された。つぎに参加者たちは,その2名のピアノ演奏を収録した短い録音を聴きくらべた。しかし実際には,あるひとりのピアニストが,同じ曲のべつの部分を演奏している。


 参加者にとって明らかな唯一の相違点は,2名のピアニストの紹介のしかたにあった。ひとりは「才能豊かで,幼少時から天賦の才を示した」とあるいっぽう,もうひとりは「努力家で,幼少時から熱心に練習し,粘り強さを示した」とあった。


 するとこの実験では,先ほど紹介したアンケート調査の結果(才能よりも努力が重要)とは矛盾する結果が出た。音楽家らは,「天賦の才」に恵まれたピアニストのほうが,プロの演奏家として成功する確率が高いと評価したのだ。



アンジェラ・ダックワース 神崎朗子(訳) (2016). やり抜く力―人生のあらゆる成功を決める「究極の力」を身につける ダイヤモンド社 pp.43-44


勤勉さと認知欲求

2012年,ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの研究者たちが,1997年から2010年のあいだに発表された241件の研究結果を利用し,どのような社会的背景や性格を持ち合わせた高校生が大学で優秀な成績を収めるのかを検証した。結果はフォン・シュトゥムらの研究結果ときわめて近いものだった。彼らは,3つの要因に注目した。性別や社会階級といった人口統計学的な属性,知能指数や高校での学業成績といった認知能力に関する指標,そして自尊心や楽天的傾向といった,これまでに学業成績に影響を与えると指摘されたことのある42の性格的特質だ。人口統計学的な属性は大学での成績にはほとんど影響がないことがわかった(ただし経済的環境などは,そもそも大学に進学するかどうかを決める時点で影響している)。大学での性向を占う最大の要因は,知能と高校までの成績だった。それ以外に明らかに関連があると認められたのは,勤勉さと「認知欲求」——好奇心を指す心理学用語——だけだった。

イアン・レズリー 須川綾子(訳) (2016). 子どもは40000回質問する:あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力 光文社 pp.148

カリスマはいらない

つまりリーダーシップ教育産業の欠陥は,クライアントに,具体的にはカリスマ・リーダーを講師に招きたがる企業のCEOや人事担当エグゼクティブに,そしてそうした講演や研修を受けて高評価をする受講者たちに由来するのである。消費者が見てくれだけでなく,高品質で安全で信頼性の高い自動車を求めて初めて,自動車メーカーはその声に応える。消費者が有機食品を買いたがるからこそ,大手スーパーやコンビニエンスストアでも扱うようになる。リーダーシップ教育の受け手が,感動を求めるのをやめ,信頼できるデータや知見を求めるようになって初めて,教育の質は上がり,職場をよりよくできるリーダーが育つようになるだろう。

ジェフリー・フェファー 村井章子(訳) (2016). 悪いヤツほど出世する 日本経済新聞社 pp.92

稀有で例外のケース

第3に,理想化されたリーダーから学ぶのは,稀有で例外的なケースから学ぶことになる点で,問題が多い。リーダーシップ神話やサクセスストーリーが真実かどうかはさて措くとしても,レアケースからの学習の有効性には疑問符がつく。ワーウィック・ビジネススクールのジャーカー・デンレルが行った調査によると,卓越したリーダーのスキルとパフォーマンスの相関性は,多くの場合にきわめて弱いという。これは,卓越したリーダーの業績は,幸運や偶発的な要素に左右される部分が大きいからだ。安定して堅実なパフォーマンスを示すが抜きん出て目立つわけではないという人たちからこそ,学べることが多いとデンレルは主張する。なぜならこうした人たちのパフォーマンスは,偶然の産物ではなく,ほんとうの能力や行動の結果である可能性が高いからだ。だから,こうした人たちの行動を分析するほうが,よほど役に立つという。

ジェフリー・フェファー 村井章子(訳) (2016). 悪いヤツほど出世する 日本経済新聞社 pp.79

授業評価の意味は

この程度のことで驚いてはいけない。受講者自身による満足度評価は,多くの大学や会議などでもひんぱんに行われる。たとえば学生による授業評価は,何らかの評価方式を取り入れているビジネススクールの99%以上ですっかり定着している。だが最近行われた分析では,学生による評価と学習効果との間には統計的に有意な相関性は見られない,との結論が下された。「学習効果の計測が客観的であるほど,学生による評価との相関性は薄れる」という。別の分析も,「学生による教員ランキングと学習効果の間には有意な相関性はない」との結論に達している。これを読んだらたいていの人がこの種の評価を信用しなくなるだろう。ペンシルバニア大学ウォートン・スクールのスコット・アームストロングは,「学習というものは変化を要求する。そしてこれは,辛いことだ。重要な振る舞いや態度の変化に関わる場合には,なおのことである」と指摘する。そしてリーダーシップ開発は,まさに重要なふるまいや態度の変化を要求する。よって,効果が上がるのは辛い経験であるはずだ。こうしたわけだから,数十年も前から数々の実証研究で指摘されてきたとおり,学生による評価はマイナス面が多い。学生が授業や教員を評価するとなれば,教員のほうは多少手加減して評価を高めようとする。すると教育の効果は薄れてしまう。アームストロングが「教員評価は学生に不利益をもたらす」と断言する理由の一つは,ここにある。

ジェフリー・フェファー 村井章子(訳) (2016). 悪いヤツほど出世する 日本経済新聞社 pp.49-50

赤色と成績

親や教師は,赤い色がテストの成績に悪影響を及ぼすという研究結果を軽く見ないほうがいい。たとえ潜在意識レベルのささやかな影響であっても,成功の足を引っ張る要因を把握し,それが子どもたちに及ぼす弊害を軽減してやるべきだ。数年前,オーストラリアのクィーンズランド州は州内の30の学校に対し,採点に赤ペンを使わないよう通達した。赤は攻撃的な色であり,子供の精神に甚大なダメージを与えかねないというのが理由だ。本章で紹介してきた実験は,赤が子どもの精神の健康に害を及ぼすかを調べたものではないが,赤が成績に悪影響を与えることは,実験によって明らかだ。成績が悪くなれば,子どもの精神にダメージが及ぶ可能性は確かにあるのかもしれない。教師にとって,赤ペンではなく黒ペンや鉛筆で採点や講評を書くのは,難しいことではないはずだ。別紙に講評を記してもいいだろう。デジタルファイルの形式で提出されたレポートに講評をつけて返却する場合は,コメントを表示する「吹き出し」を赤色にしないほうがいい。こうした点に気をつければ,子どもたちが赤い色を見ても,失敗の危険をあまり意識しないようにできるだろう。

タルマ・ローベル 池村千秋(訳) (2015). 赤を身につけるとなぜもてるのか? 文藝春秋 pp.79

咳が多い時は気をつけろ

テキサス大学のジェームズ・W・ペネベーカーは社会的な咳を専門に研究している。彼は興味深い問題を創造的な方法で研究してきた。バージニア大学にいた頃,彼は研究助手たちの手を借りて,学部学生が講義中にする咳の数の基準値を確立した。29パーセントの学生が講義中に少なくとも1回咳をしたが,季節による変動もあり,4月より2月のほうが約3倍多く,多人数のクラスのほうが少人数のクラスよりも多く咳をした。教師に対する評価,授業に対する関心そして咳をしている学生の数の間にほぼ完全な反比例の関係があり,最も評価が高い教授が教える最も興味をそそられる授業の咳の数が最も少なかった。4月に少人数のクラスを教えているときにかなりの数の学生が咳をしたら,あまりよい兆しではないだろう。

ロバート・R・プロヴァイン 赤松眞紀(訳) (2013). あくびはどうして伝染するのか:人間のおかしな行動を科学する 青土社 pp.126

自律性の感覚

内発的動機づけは,脅威,監視,時間的制約などによっても低下します。人は,管理されていると感じると,自律性を失います。職場には内発的動機づけを損なうようなきっかけが多く,従業員は自分の意志で選択して行動しているという感覚を持ちにくくなることがあります。
 自律性の感覚を取り戻すには,人びとに選択の感覚を与え,その感情を尊重することが大切です。どのような環境であれ,多かれ少なけれ,報酬,脅威,時間的制約などが関係してくるものです。このため,いかに自律性を得やすい環境をつくり,人びとの内発的動機づけを保てるかが重要です。

ハイディ・グラント・ハルバーソン 児島 修(訳) (2013). やってのける:意志力を使わずに自分を動かす 大和書房 pp.135

冷却経験

どのように戦略を学ぶのはともかく,4歳か5歳までに,1人で楽しく遊ぶのであれ,マシュマロ・テストでより多くのご馳走をもらうために待つのであれ,必要に応じてホットシステムを「冷却」するのがしだいに簡単で自動的に行えるようになる手立てを知り,使っている子どもは幸運だ。とはいえ,この話を終える前に,再度述べておかなければならない。欲求充足を先延ばしにしてばかりの人生は,先延ばしが不足している人生と同様に悲しいものになりうる。子どもだけではなく,すべての人にとって,いちばん難しいのは,より多くのマシュマロをもらうために待つべきときと,ベルを鳴らしてご馳走を楽しむべきときを見極めることだ。ただし,待つ力を伸ばせるようにならないかぎり,その選択肢は手に入らない。

ウォルター・ミシェル 柴田裕之(訳) (2015). マシュマロ・テスト:成功する子・しない子 早川書房 pp.300

両極端

子供に対する親のかかわりの重要性を考えるとき,わたしたちはつい両極端に走る傾向がある。暴力を受けて育った子供は無視されたりやる気を挫かれたりしただけの子供よりはるかに苦労するだろうとか,特別な家庭教師や個人指導を山ほど受けさせるようなスーパーママの子供はふつうに愛されて育っただけの子供よりずっとうまくやるだろう,などと想像する。しかしブレアとエヴァンズの研究によって提示されているのは,たとえばジェンガをやっているあいだ手助けをしたり気遣いを示したりといった,ごくふつうの親のかかわり方が,子供の将来に大きく影響するという事実である。

ポール・タフ 高山真由美(訳) (2013). 成功する子 失敗する子:何が「その後の人生」を決めるのか 英治出版 pp.70-71

簡単ではない

いくつかのスキルにかんして,知能至上主義の背後にある単純な計算——大事なのは早くはじめてたくさん練習することである——には確かに根拠がある。バスケットボールの試合でフリースローを落としたくなかったら,毎日の午後の練習で二百本のシュート練習をするほうが二十本しか練習しないよりもずっと上達する。たとえば4年生なら,夏のあいだに四十冊の本を読めば四冊しか読まないよりも読解能力は伸びるだろう。機械的に向上する技能もあるというのは事実だ。
 しかし人間の気質のもう少しデリケートな要素を伸ばすとなると,ものごとはそう単純ではない。長時間懸命に取り組んだからといって失望を乗りこえるのがうまくなったりはしない。充分に早いうちから好奇心のドリルをやらなかったからという理由で好奇心の足りない子供に育つわけでもない。このような気質を身につけたり失ったりする方法は決してランダムではない。心理学者や神経科学者たちは,ここ数十年のあいだこうした気質がどこから生じ,どうやって伸びるのかについて研究を重ねてきた。だがその方法は複雑で,非常に謎めいている。

ポール・タフ 高山真由美(訳) (2013). 成功する子 失敗する子:何が「その後の人生」を決めるのか 英治出版 pp.16-17

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