I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「パーソナリティ・個人差」の記事一覧

病気・診断

異常行動を疾病としてとらえるアプローチでは,人を精神的な「病気」の犠牲になっている「患者」としてとらえる。耳下腺炎や癌のような,肉体的疾患と同じようにである。精神疾患はそれ自体仮説的なものだが,「精神分裂病」「躁うつ病」「強迫神経症」などといった,病理学上の医療的構成概念を使って概念化されている。この種の精神医学的構成概念は,クレペリン主義による分類法の遺産のひとつである。この分類法では,精神的問題は,比較的特有な特徴をもつと考えられる統合的な病気の実体全体を表しているものと解釈されていた。
 疾病としてとらえる視点では,行動は根底的病理の単なる「徴候」にすぎないとして,行動そのものに対する関心は根底的な精神疾患の推理の方へと直結されてしまう。伝統的に,「診断」とは器官に欠陥があるとか,病原菌に侵されているとか,その人の内部にあって行動上の問題の原因となっている,ある一定の精神的統合体とか,何か具体的なものがそこにあることを示唆している。診断的な検査は,治療ができるように病理を発見するためのものである。鑑別診断とは,徴候のもとになっている特定の病気を見つけ出すことである。

ウォルター・ミシェル 詫摩武俊(監訳) (1992). パーソナリティの理論:状況主義的アプローチ 誠信書房 pp.206
(Mischel, W. (1968). Personality and assessment. New York: John Wiley & Sons.)

測定の類似性

パーソナリティ特性研究の主要な知見のひとつは,表面上異なった特性を測定するためにいくつかの質問紙が用いられたときなどにパーソナリティ測度間に見いだされる相関の多くの部分が,測定法のフォーマットにおける類似性から説明されるということである。類似した,あるいは重複したフォーマットや装置を用いた測定技法を用いることが生み出す「方法による分散(method variance)」あるいは共通分散(common variance)は,計量心理学者たちによって「誤差」として解釈されてきた。この誤差に対抗するために,方法分散を統制し,低減するための新しい統計的技法が絶え間なく追求されてきた(例. Block, 1965; Campbell & Fiske, 1959; Norman, 1966)。しかしながら現在の視点からみれば,方法分散は誤差ではなく,共通の刺激条件が用いられたときに当然期待される「刺激分散」あるいは反応共通性を反映しているに過ぎない。刺激の般化についての知見から予測されるように,パーソナリティ測査における状況を通じた反応の一貫性は,状況が類似していないほど低減されるし,状況が共通の特徴をもつほど増加するのである。

ウォルター・ミシェル 詫摩武俊(監訳) (1992). パーソナリティの理論:状況主義的アプローチ 誠信書房 pp.199-200
(Mischel, W. (1968). Personality and assessment. New York: John Wiley & Sons.)

できることとすること

行動の学習や獲得とその遂行とを区別することは有意義である。人は,学習したことをすべて遂行するわけではない。その人が学習し,知っていて,遂行できるということと,その行動をある特定の場面で実際に遂行することとの間には,大きな隔たりがある。個人はたくさんの向社会的行動だけでなく,反社会的な逸脱した行動をも,もちろん学習している。例えば,青年男子の大半は石を投げたり,ナイフを振り回したり,窓をこわしたりする方法を知っている。しかし,そうした技能を身につけた少年たちのなかにも,それを実際に遂行するかどうかには大きな個人差がある。同様に,われわれの文化では男女ともに口紅や白粉のつけかたやタバコのくわえかたを知っているが,それらの行動の遂行頻度には性差がある。このようにそれぞれの個人において,その人ができることと,ある状況で実際にすることとの間には,大きな隔たりが存在するのである。

ウォルター・ミシェル 詫摩武俊(監訳) (1992). パーソナリティの理論:状況主義的アプローチ 誠信書房 pp.169-170
(Mischel, W. (1968). Personality and assessment. New York: John Wiley & Sons.)

増分妥当性とは

より廉価なデータ源からでも簡単に入手できる記述や予測と同じものを得るために,時間がかかる高価な性格テストや推論過程を用いるのは無駄なことである。例えば,臨床家が他人のロールシャッハのプロトコルに基づいて,その人の性別や職業や結婚状態を正確に記述できることを立証しても無益なことである。テストに基づく所説が,それまでに通常使用されてきたデータと単に一致するだけなら,その所説はとるにたらないものとなる。もしある診療所が所員による行動評定を定期的に得ていれば,その評定と一致する推論がテストから得られたとしても,ほとんど情報は増加しない。ただし,テストによる記述がより経済的に得られたり,より正確であるか,より豊富な内容を有している場合には,この結論はあてはまらない。同様にテストに基づく記述が,通常入手できる他のデータ源に比べてより速やかに,判明しにくい事実に関する所説を示すことができれば,記述を得るためのコストは正当と考えられよう。テストに基づくパーソナリティの記述は,より使用しにくく不経済な他のデータ源に比べて,妥当な情報を,有意に多く与える場合にのみ価値がある。これが,「増分妥当性」の意味する内容である。

ウォルター・ミシェル 詫摩武俊(監訳) (1992). パーソナリティの理論:状況主義的アプローチ 誠信書房 pp.109-110
(Mischel, W. (1968). Personality and assessment. New York: John Wiley & Sons.)

説明を増やすか

統計的に有意な結果は,集団間の差異や測度間の関連が存在し,その可能性が偶然によるものではないらしいことを示している。しかし,手続きの有用性を解釈する際に,統計的有意性に頼ることは誤りである。偶然仮説を棄却する結果が得られたこと自体は,その予測データの相対的価値や,他より低コストで使用できる予測変数以上に説明率を増分(increment)することができるかどうかについては,何も説明していないのである。

ウォルター・ミシェル 詫摩武俊(監訳) (1992). パーソナリティの理論:状況主義的アプローチ 誠信書房 pp.109
(Mischel, W. (1968). Personality and assessment. New York: John Wiley & Sons.)

パーソナリティ係数

他方,F尺度と非質問紙的測度との間に得られる関連の強さは,一般に低い。実際のところ,質問紙から推測されるほとんどすべてのパーソナリティ次元を,異なる手段で——つまり,他の質問紙ではなく——抽出された反応を含むほとんどすべての考え得る外的基準に関連づける研究では,.20から.30の間の相関が繰り返し見いだされているが,これを記述するために,「パーソナリティ係数」という語が作られるかもしれない。一般に,そのような相関はあまりにも低すぎて,大まかな選抜のふるい分け以外のほとんどの個人測査の目的に対しては価値がない。そのうえ,得られた関係のネットワークは,しばしばあまりにも散漫で,理論的に理解できない。そして最後に,パーソナリティ測度間で得られる相関は,ある程度は,単にそれらが知能や教育程度と,共通して関連をもつことを反映しているにすぎないかもしれない。

ウォルター・ミシェル 詫摩武俊(監訳) (1992). パーソナリティの理論:状況主義的アプローチ 誠信書房 pp.82
(Mischel, W. (1968). Personality and assessment. New York: John Wiley & Sons.)

解釈か刺激内容か

パーソナリティ測査やパーソナリティ研究においては,研究の焦点が観察者の解釈にあるのか,観察された行動のもつ刺激内容にあるのかが明確でないことが多い。ある研究では,他者や対象物についての観察報告から,他者や対象物によって観察者内に引き起こされた印象や判断を明らかにしている。またある研究では,観察者の印象や主観的判断を低減するような方法で,被観察者の行動そのものについて研究することも可能である。この2つの方略は全く異なっているのだが,実際には両者が混同されていることは,われわれが計量心理学的方法において見てきたとおりである。

ウォルター・ミシェル 詫摩武俊(監訳) (1992). パーソナリティの理論:状況主義的アプローチ 誠信書房 pp.68
(Mischel, W. (1968). Personality and assessment. New York: John Wiley & Sons.)

言語要素か

ダンドレイド(D’Andrade, 1965)は,大学生に,ノーマン(Norman, 1963)の20個の両極性尺度の各極に用いられた用語すべての,相互の意味類似を評定させた。こうして得られた語彙間の意味類似データが,因子分析にかけられた。その結果,意味類似評定の分析においても,ノーマンが対人評定から得たのと本質的に同じ5因子構造が抽出されたのである。すなわち,語彙自体の意味の評定から得られた構造が,対人評定から得られた構造と対応しているのである。このことは,パーソナリティ特性といわれているもののある部分は,外的世界を記述するための言語的要素のひとつとして存在してはいるが,必ずしも外的世界(すなわちパーソナリティ)そのものの反映とはいえないということを示唆している(D’Andrade, 1965)。

ウォルター・ミシェル 詫摩武俊(監訳) (1992). パーソナリティの理論:状況主義的アプローチ 誠信書房 pp.48-49
(Mischel, W. (1968). Personality and assessment. New York: John Wiley & Sons.)

認知スタイルの安定性

非常に注目すべきことに,ある種の認知スタイルに対しては,長期間を通じて,極めて印象的な安定性が見いだされた。例えば,ウィトキンのロッド・フレーム・テスト(RFT)における再テスト相関は,数年の間隔をおいても,.92という高い数字であった(Witkin, Goodenough, & Karp, 1967)。彼らの縦断研究で使われた最も長い間隔は,14年という期間であった。そのような長い期間の後でさえ,10歳の時にRFTの検査を受けた少年が24歳のときに再テストされたとき,得られた安定性相関は,.66であった。この種のデータは,認知的,知覚的機能における,正真正銘の永続性を実証する。

ウォルター・ミシェル 詫摩武俊(監訳) (1992). パーソナリティの理論:状況主義的アプローチ 誠信書房 pp.36
(Mischel, W. (1968). Personality and assessment. New York: John Wiley & Sons.)

信頼性と妥当性

行動の一般性—特定性に関するデータは,通常,「信頼性」という項目に入れられ,「妥当性」の証拠とは切り離される。信頼性と妥当性のこの区別は,それほど明確ではない。信頼性と妥当性は,どちらもさまざまな刺激条件に対する反応間の関係を実証することによって確かめられる。その刺激条件とは,反応を抽出するのに使われる特定の測度や場面である。信頼性は,最大限に類似した刺激条件の下での反応測度間の一致に関連している(Campbell, 1960; Campbell & Fiske, 1959)。妥当性は,信頼性と対照的に,最大限に異なった,独立の刺激条件や測度に対する反応が,一点に収斂することを要求する。

ウォルター・ミシェル 詫摩武俊(監訳) (1992). パーソナリティの理論:状況主義的アプローチ 誠信書房 pp.13
(Mischel, W. (1968). Personality and assessment. New York: John Wiley & Sons.)

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