I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「パーソナリティ・個人差」の記事一覧

共通点

精神力動理論は,特性理論が個々の部分からなる「測定可能の個々の特性」に興味をもっているがゆえに,内的機能の力動的で相互作用的な側面やパーソナリティの異なる諸側面の相対的位置関係を見落としている,といって批判する。しかし,力動論的理論家によって仮説上の内的状態に割り当てられた名前(イド,エゴ,防衛,内的葛藤など)が,計量心理学的指向の理論家が好んで用いている特性の名前と異なっているとはいっても,2つのアプローチはいくつかの重要な特徴を共有している。まず,力動(状態)的理論も特性理論も,人の反応や行動は根底に流れている精神構造の直接的あるいは間接的徴候でしかないと考えている。次に,推論されたにすぎない根底的な諸傾性(特性,状態,過程,力動,動機,あるいは他のラベル)が,行動に普遍的で持続性のある効果を及ぼすと仮定する。そして,これらの仮説的な根底的傾性を推論するときに信頼できる指標として役に立つ行動徴候の探索に熱心である。

ウォルター・ミシェル 詫摩武俊(監訳) (1992). パーソナリティの理論:状況主義的アプローチ 誠信書房 pp.9
(Mischel, W. (1968). Personality and assessment. New York: John Wiley & Sons.)

特性

「特性」は,いくつもの異なった用法で用いられるという点で,混乱した用語であるといえる。最も単純なレベルでは,特性とは2人以上の人間に見られる直接観察可能な行動や特質(character)の,ある定義された次元城での差異である。例えば,「特性とは人間が他人から変動する様式であり,その様式には弁別力がある上にかなり持続性がある」(Guilford, 1959, p.6)。この意味での特性は,安定的な行動の個人差が観察されるときに用いられる概略的なラベルである。
 特性は,パーソナリティについて説明する際に,説明の便宜のためと説明力を上げるために創られた構成概念でもある。この意味での特性は,持続する行動の一貫性や差異を説明するための構成概念,抽象概念であり,したがってそれは,人のなかにある「もの」「状態」「過程」のような具体的実在と必ずしも対応するわけではない。

ウォルター・ミシェル 詫摩武俊(監訳) (1992). パーソナリティの理論:状況主義的アプローチ 誠信書房 pp.5-6
(Mischel, W. (1968). Personality and assessment. New York: John Wiley & Sons.)

男性性・女性性

1936年,アメリカの心理学者ターマンとマイルズによって考案された,心理学的な男性性と女性性を調査するための心理テストです。同性愛診断のためだけに考え出されたものではないのですが,たとえばこのテストで”女性的”という診断結果が出た男性は,同性愛者かその予備軍なのだと考えられていました。

牧村朝子 (2016). 同性愛は「病気」なの? 僕たちを振り分けた世界の「同性愛診断法」クロニクル 星海社 pp.137

身長と成功

身長と職業上の成功の度合いや地位の高さの間に強い関連があることは,多くのデータによって裏づけられている。背の高い人は,平均して高い給料を受け取っているし,地位の高い職業に就いている人を調べると,長身の人が占める割合が大きい(これは,ある職に就くために必要な学歴や身体的能力の影響を考慮に入れても言えることだ)。CEOや管理職は,背の低い人より高い人のほうが多く,アメリカの歴代大統領も,ほとんどがアメリカ人男性の平均より長身だ(第四代大統領のジェームズ・マディソンは,身長163センチと小柄だったが)。いくつかの研究によれば,身長の高い人ほど,主観的な幸福感が強いという相関関係があることもわかっている。
 背の高い人が成功しやすい理由は,いろいろ考えられる。たとえば,思春期の子どもの間では長身の子が人気者になるので,そういう人は対人関係をうまくやっていく技能が身につきやすく,自己評価も高まり,人生を有利に運べるようになると考える研究者もいる。しかし,高さが力を連想させることも理由の1つだ。その連想がはたらくため,ほかの条件がおおむね同じなら,背の高い人ほど力があるとみなされ,多くの権力と権威を手にする。そして,背の高い人が高い給料と地位を得る結果,高さが力を連想させる関係がますます強まる。

タルマ・ローベル 池村千秋(訳) (2015). 赤を身につけるとなぜもてるのか? 文藝春秋 pp.159

ビネの本を

かつて知能検査及び知能指数を批判的に検討していた私は,知能検査と知能指数を同一視し,数字で人間を管理して人の自由を侵害するとんでもない道具だと思っていた。「知能とは知能検査で測定したものである」というようなフレーズを操作的定義だとして信じている心理学者たちはどうかしていると思っていた。そして,その一番のもとになった知能検査を作った人,アルフレッド・ビネは,相当にトンデモナイことを考え,トンデモナイことをやった人なのだと思っていたのである。
 ところが,アルフレッド・ビネは,私が考えていたような検査手技,数値至上主義,測定主義者,操作的定義主義者ではなく,目の前の子どもを,自分の目で確かめて,その子の未来を展望するために何をすれば良いかを考える人物だった。日本で一体どれくらいの人が知能検査を用いているか知らないが,ビネの原典を読まずに用いることは厳しく禁止すべきであると,私は考えている。あるいは手前味噌,我田引水だが,拙著『IQを問う』を読んでから使うべきである。

サトウタツヤ (2015). 心理学の名著30 筑摩書房 pp.91

犯罪とパーソナリティ

1977年の時点では,児童の反社会的行動の説明に生物学的基盤を持ち出すことは一般的ではなかった。生物学的要因と社会的要因の相互作用に至っては,さらに受け入れられない考えであった。そのため,若き研究者だった私がバイオソーシャル的側面に焦点を置いた論文を最初に発表したときには,ほとんど誰にも相手にされなかった。しかし,イギリスの高名かつ論争好きの心理学者ハンス・アイゼンク[生まれはドイツだが,イギリスで研究していた]はすでに,著書『犯罪とパーソナリティ』で大胆にも,犯罪には生物学的基盤が存在すると示唆していた。論争が巻き起こったとはいえ,私は,彼の著書には「反社会化プロセス」という,自分の考えに関連はするが同じではない,とても興味深い概念が含まれていることに気づいた。以後この概念は,私の研究に深い影響を及ぼす。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.376

攻撃性のタイプ

ここで攻撃性のタイプの違いを考えてみよう。MAOA戦士遺伝子は,コントロールされた冷酷な暴力より,感情的で衝動的な,血気にはやる暴力を振るいやすい性格の形成に,とりわけ大きな役割を果たすのかもしれない。ハン・ブルナーは,オランダの親族の研究では,怒り,恐れ,フラストレーションに反応して生じる衝動的な形態の攻撃性が,より頻繁に見られたと報告している。ロサンゼルスで行なわれた研究も,この解釈に合致する。この研究では,低MAOA遺伝子を持つカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の学生は,より攻撃的な性格のみならず,人間関係に過敏に反応する性格を持つことがわかった。つまり彼らは,感情的に傷つきやすい。また,社会的に排除されることに対して,脳がより強く反応した。これは,個人的な中傷によって彼らがいとも簡単に動揺することを意味する。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.90

攻撃性の遺伝

双子の研究は,攻撃性と暴力も遺伝することを示す。われわれは,攻撃性を反応的(reactive)なものと,先攻的な(proactive)ものに分類した。反応的な攻撃とは,誰かに殴られて殴り返したケースがそれにあたり,防御あるいは報復を目的とした攻撃を指す。この形態の攻撃性の遺伝率は38パーセントであった。それに対し先攻的な攻撃は,より卑劣で残酷なものを指し,たとえば誰かから何かを奪い取るときに行使される。この形態の攻撃性の遺伝率はいくぶん高く,50パーセントだった。この研究でも,環境の共有による影響は,どちらの形態の攻撃性に関してもごくわずかであり,実際のところ男子に関しては存在しなかった。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.70

睡眠タイプ

睡眠は日々の生活に欠かせない要素だが,詳しいメカニズムはほとんど解明されていない。わかっているのは,だれにとっても欠かせないということくらいだ。睡眠のパターンは一生のうちに変化するが,これはすべての生物に共通して言えることだ。乳幼児は「ひばり型」で,早寝早起き。若者は「ふくろう型」で遅く寝て遅く起きる。このような睡眠パターンをクロノタイプと呼び,「ひばり型」を「朝型」,「ふくろう型」を「夜型」と言う。睡眠パターンは脳のシグナルとホルモンの複雑な関係によってコントロールされており,シグナルとホルモンはどちらも成長に応じて調整されていく。大半の種では,青年期に夜更かししていても,おとなになると「早寝早起き」になる。
 つまり,ティーンは学校へ行くために,おとなのクロノタイプに合わせて,無理矢理,早起きしているのだ。しかし,早く起きたからと言って,早く寝るわけではない。夜になっても彼らの脳は調整されず,本来の夜型のクロノタイプに固執しがちだ。その結果,睡眠時間は短くなる。そして休日には,体内時計に命じられるまま,朝寝坊に戻る。好きなだけ寝ていていいと言われたら,彼らは一晩に9時間から10時間眠るだろう。しかし,学校へ行くために起きなければならず,常に1日2.75時間分の睡眠が足りないままだ。これが慢性睡眠不足症候群の原因と見なされている。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 103-104
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

拳を握れ

最後につけ加えておこう。パワフルなポーズをとる時間がない場合は,こぶしを握るだけでも効果がある。心理学者トーマス・シューバートは男性被験者を集め,各自に自信を感じる度合いを訊ねてから,じゃんけん遊びを装い,数秒間こぶしを握ってもらった。そのあとであらためて自信を感じる度合いを訊ねた。被験者の体はその脳の影響を受け,しばらくこぶしを握った男性たちの自信度は高まっていた。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2013). その科学があなたを変える 文藝春秋 pp.280

姿勢と自信

そして,姿勢のとり方も自信に影響する。自信のある人は自分の可能性を信じており,リスクを恐れず,テストステロン(支配と結びつく化学物質)の割合が高く,コルチゾール(ストレスと結びつく化学物質)の割合が低い。では被験者に支配的な姿勢をとらせたら,どうなるだろう。それを調べるために,コロンビア大学のダナ・カーニー教授とそのチームは被験者を集め,新しい心拍計の性能を試したいので協力してほしいと話し,2つのグループに分けた。
 片方のグループは,支配を示す2つのパワフルなポーズのうち,どちらかをとらされた。1つはデスクの上に両足をのせ,両手を頭の後ろに組んで視線を上げるポーズ。もう1つはデスクの後ろに立って身を乗り出し,両手のひらをデスクにつけるポーズである。
 もう片方のグループは,パワフルでないポーズ2種類のうち,どちらかをとらされた。1つは両足を床につけ,両手を膝に置いて視線を床に落とすポーズ。もう1つは,立ったまま腕と脚を組むポーズである。
 ポーズをとり終わった1分後に,被験者は自分をどの程度「パワフル」で,「やる気満々」に感じているか,採点を頼まれた。彼らがとったポーズは,その自信にかなりの影響をあたえていた。「パワーのポーズ」をとった被験者はとらなかった被験者よりも自信が強くなっていたのだ。だが,それだけではない。
 続いて実験では,被験者がリスクを負う割合が試された。被験者めいめいに2ドルを渡し,それをとっておくか,コインを投げて裏表で賭けをするか尋ねたのだ。賭けに勝てばお金は倍の4ドルになるが,負ければゼロになる。「パワーのポーズは人を大胆にする」の仮説どおり,支配的なポーズをとった被験者は八割以上がお金を賭け,支配的なポーズをとらなかった被験者は六割しか賭けなかった。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2013). その科学があなたを変える 文藝春秋 pp.278-280

特性・状況怒り

怒りについて話をするときは,”特性としての怒り”と”状況としての怒り”を区別しなければならない。前者は,絶えず怒りを感じているような傾向を指している。これは明らかに不健康な状態だと言える。だが状況的な怒りは,それとは大きく異なる。怒りの感情で問題に立ち向かう人は,人生満足度や幸福感などの尺度で測定する「心の知能指数」が高いことがわかっている。
 状況的な怒りは,起きるべきことと起きたことの間のギャップによって誘発される。これは,目的が誰かによって不当に妨害されたと感じるときに生じる怒りである。この怒りの成分には,不公平の感覚が含まれている。また,自分にはこの不公平を是正するために何かができるという感覚も,怒りを引き起こす重要な要因だ。不正を正すために状況を変えられるという見込みと,自分が行動すればそれは可能だという自信がなければ,怒りはブロックされる。それは怒りではなく,絶望につながるのである。

ポー・ブロンソン7アシュリー・メリーマン 小島 修(訳) (2014). 競争の科学:賢く戦い,結果を出す 実務教育出版 pp.244

戦士型と心配症型

人間はすべて,戦士型(warrior)と心配症型(worrier)のどちらかであるという科学的な主張がある。ドーパミンを素早く除去する酵素を持つ人は戦士型で,恐怖や苦痛などの脅威に直面しつつも最大限のパフォーマンスが求められる環境にすぐに対処できる。ドーパミンの除去に時間がかかる酵素を持つ人は心配症型で,起こりうる事態について,事前に複雑な計画や思考をする能力がある。戦士型と心配症型のアプローチはどちらも,人類が生き残るために必要なものであった。
 一見,戦士型の方が攻撃的だと思われるが,実際にはそうとも言えない。心配症型は平常時のドーパミンのレベルが高く,攻撃的反応の閾値の近くにいる。こうした人は神経質であり,感情を爆発させやすい。簡単に腹を立てるし,感情を表に出す。だがその攻撃性が効果的なものだとは限らない。「適切な攻撃性」とは,他者の攻撃的意図を正確に読み取り,解釈し,それに対処することである。心配症型は,相手にその意図がないときに攻撃性を見いだし,相手にその意図があるときに攻撃性を見逃してしまう傾向がある。一方の戦士型は,現実への備えができている。

ポー・ブロンソン7アシュリー・メリーマン 小島 修(訳) (2014). 競争の科学:賢く戦い,結果を出す 実務教育出版 pp.103-104

ホルモンと人格

フィッシャーはホルモンと人格の関係のあらましを説明する。ドーパミンが優勢な人々は“冒険家”で,リスクをおかすことに楽観的だ。セロトニンが形成する“組織者”は,静かで落ち着きがあり,集団をまとめるのがうまい。テストステロンに満ちているのは“支配者”で,三分の二を男性が占める。論理的な分析を得意とし,音楽を好むことが多いという。まるで<ニューメラティ>の説明を聞いているようだ。エストロゲンが脳を駆けめぐる“仲裁人”は,話し好きで洞察力があり,他人とつき合うのがうまい。おそらく,交渉をするために生まれてきたのだろう。だが,ときには,「あまりにも従順で,事なかれ主義におちいることがあります。そのため,本人の真意が周囲に伝わりません」

スティーヴン・ベイカー 伊藤文英(訳) (2015). NUMERATI ビッグデータの開拓者たち CCCメディアハウス pp.244

ホルモンと性格

1990年代の終わりごろ,フィッシャーは生物学による人格分析に興味をもち,遺伝子や神経伝達物質,とりわけホルモンについて調べはじめた。研究材料の一つとして,「恋愛に取りつかれた」人々の脳を断層撮影した写真も使われた。その結果によれば,人格は四種類のホルモン,具体的には,エストロゲン,ドーパミン,セロトニンによって決まり,人間は自分に欠けている性質を補う相手に引かれるという。ケミストリー・ドットコムのアンケートは,それぞれのホルモンが支配する4つの性格への分類を意図している。質問の大部分は,ホルモンの作用と思われる気分や振る舞いについて尋ねるものだ。そのほかの指の長さを比較するような質問は,もっと生化学的な裏づけのある証拠を見つけようとしている。研究結果によると,人差し指が薬指よりも短いのは,胎児のときからテストステロンが優勢だったためらしい。一方,人差し指が長ければ,エストロゲンのほうが多いという。

スティーヴン・ベイカー 伊藤文英(訳) (2015). NUMERATI ビッグデータの開拓者たち CCCメディアハウス pp.243-244

特権意識・全能感

「DVの加害者は家庭でわがままに育てられた人が多いのです。『自分は何をしても許される』という特権意識や全能感を持ち合わせているため,『やってはいけないこと』と知識では分かっていても道徳観念としての理解はなく,事の重大さに気づける人は極めて少ない。特に旧世代には家制度の残滓がいびつな形で意識の中に残っていることも多く,根底には『男女平等などとんでもない』という根強い差別意識もあるのです。高齢者の離婚問題は,こういった理屈で割り切れない問題と対処せざるを得ず,解決は相当な困難を伴います。最悪の場合は『戦うより相手が死ぬのを待った方が早い』というような事態にも陥りかねません。しかし,それでは残された人生を相手への恨みだけで,相手の死を願いながら生きていくことになり,決して幸せとは言えないでしょう。人は幸せに生きた者が勝ちなのです。『死ぬまでに自分の人生を取り戻したい』という思いがあるならば,逃げ出さずに進むべきではないでしょうか」

新郷由起 (2015). 老人たちの裏社会 宝島社 pp.96-97

許否に対する感受性

不安型の人のもっともやっかいな一面は,他者の言動を,実際にはたいしたことではないのに,自分に対する失礼なふるまいや冷淡な扱いであると感じとって,大げさに反応することです。このことを,コロンビア大学の心理学者ジェラルディン・ダウニーはrejection sensitivity(許否に対する感受性)と表現しました。この現象は3つの部分からなっています。

 (1)拒否されることを予期する
 (2)不明瞭な状況でも,いち早く許否を感じとる
 (3)(事実でも単なる想像でも)許否に対して過剰に反応する

 こういう不安型の人のレンズには歪みがあり,メールに返信が来ないとか,待ち合わせに相手が遅れてきたとか,期待した褒め言葉がもらえなかったなどのほんの些細なことを,「意図的な拒絶」と受け取り,自分に対する相手の「本心」なのだと解釈するのです。

ハイディ・グラント・ハルヴァーソン 高橋由紀子(訳) (2015). だれもわかってくれない:あなたはなぜ誤解されるのか 早川書房 pp.195

エゴレンズの働き

「エゴレンズ」の基本的な機能は,その人の自己肯定感(self-esteem)を守ったり高めたり,自分に自信を持たせることです。「エゴレンズ」は実際に大変有効なので,ふつうの人は誰でも(病的に落ち込んでいるのではない限り),自分に対して全般的にポジティブな見方をしていて,かなり高い自己肯定感を持っているものです。

ハイディ・グラント・ハルヴァーソン 高橋由紀子(訳) (2015). だれもわかってくれない:あなたはなぜ誤解されるのか 早川書房 pp.136

エゴレンズ

「信用レンズ」や「パワーレンズ」と同じように,この「エゴレンズ」の使命も単純なものです。それは自分が優位になるようにものごとを見るということです。この使命を果たすために「エゴレンズ」が使う戦略はいくつかあり,この章ではそれらを詳しく見ていきたいと思います。
 まずはその4つの戦略を簡単に説明しましょう。

 戦略1:自分より相手の方が(相手のグループよりも自分のグループの方が)優れている点に注目する。

 戦略2:相手と自分が同じグループに属している点に注目する。この場合,相手の成功は自分自身のものでもあり,その素晴らしい栄光に自分も浴すると考える。

 戦略3:相手の優れた点が自分にとって脅威ではないと判断する。相手の持つリソースが自分のものと重なっていない,あるいは相手の優れた点を特に評価しない。

 戦略4:右の3つの戦略のどれを使ってもうまくいかないときや,どれもうまく当てはまらないときは,相手の優れた資質や業績が,認識する側の自己肯定感にとって脅威となる。そのため,相手を避けたり,邪魔したりして,脅威をなくそうとする。

ハイディ・グラント・ハルヴァーソン 高橋由紀子(訳) (2015). だれもわかってくれない:あなたはなぜ誤解されるのか 早川書房 pp.133-134

良い第一印象

心理学の研究によって明らかになったのは,ナルシシストやサイコパスの人たちが,往々にして初対面の人に非常に良い第一印象を与えるという事実で,これはやっかいな問題です。でも「フェーズ2」というプロセスがあるおかげで,私たちは出会った人の第一印象にとらわれず,本当はどういう人なのか,さらに認識を深めることができるのです。
 一般的に「フェーズ2」では,相手の行動が何らかの状況によって引き起こされていて,その状況にあれば,他の人でも同じ行動をとるのではないかと考えます。相手の行動に関して自分が最初に行なった理由づけを疑ってかかり,自分の出した結論がバイアスで歪んでいないかをチェックしようとします。意識的な観察者は,自分の心が自然に生み出した結論にも介入して修正しようとします。
 「フェーズ2」はよく「修正フェーズ」とも呼ばれます。最初の印象を修正するのは容易ではなく,努力を要し,自動的には行われません。したがって認識する側には,相手を理解しようとするエネルギーと時間のほかに,それを行なうためのモチベーションが必要になります。このどれかの要素が欠けていると,認識者は「フェーズ1」で作り上げた最初の印象を持ち続けることになります。「フェーズ2」にいくには,よほど注意を喚起するものが必要です。しかし資産運用アドバイザーが私たちのお金をすべて盗み取って起訴されてから気づいても,万事遅すぎるわけです。

ハイディ・グラント・ハルヴァーソン 高橋由紀子(訳) (2015). だれもわかってくれない:あなたはなぜ誤解されるのか 早川書房 pp.77-78

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