I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「社会心理学」の記事一覧

属性を質問紙の裏へ

 会場にいる先生たちは感銘を受けたようだった。私の経験では,教育者は一般に共通テストをさほど好んでいない。多くの教師にとって,生徒がこうしたテストでどのくらい良い点数をとるかに自分の仕事がかかっている,となればなおさらだ。それだけの重圧がかかると,先生たちは試験に合わせて教えるようになり,生徒は全般的に限られたことしか学ばなくなり,テストにおける一度の成績がすべての人の成功を測る尺度としてのしかかるようになる。もし自分の教えたクラスの成績が,自らの指導力の尺度だと教師が感じていなければ,あるいはテストの成績が頭のよさを表すかのように生徒が感じていなければ,生徒はかえってテストでよりよい点数をとれるかもしれない。複数の視点から自分自身を考えるように生徒に仕向けさせることや,性別や人種,家庭の年収に関する情報を問う質問をテストの裏側に移動させることも効果がある。こうしたことはいずれも,テストが重視されすぎるのを防ぎ,一度の点数や成績が生徒の知能や自尊心,あるいは成功に向けた潜在能力を反映するという考えを忘れさせるためのものなのである。
シアン・バイロック 東郷えりか(訳) (2011). なぜ本番でしくじるのか:プレッシャーに強い人と弱い人 河出書房新社 pp. 204-205

人種ステレオタイプ

 人種に関して報告しなかった場合は,白人と黒人の学生でGREの成績にはなんら違いがないことを研究者たちは発見した。ところが,テストの前に学生が人種を報告したときは,アフリカ系アメリカ人のほうが白人学生よりも悪い成績になった。学生に人種を明らかにさせたことで,彼らは「黒人は白人ほど知的ではない」というステレオタイプについて考えさせられたのだ。こう考えるだけで,知性が試される状況で黒人学生が実力を発揮できなくするのに充分なのだ。
シアン・バイロック 東郷えりか(訳) (2011). なぜ本番でしくじるのか:プレッシャーに強い人と弱い人 河出書房新社 pp. 158

名前と学業

 フィリオによれば,多くの女の子が数学や科学を敬遠するようになる要因の一つは,彼女たちの名前くらい単純なものなのだ。女の子の名前が学業の道に影響をおよぼしうることに気づけば,数学と科学の成績における男女の格差に寄与するほかの微妙な要因も,すぐに探せるようになる。実際,ある環境にいる男女数の不均衡に気づくだけでも,女子生徒がその状況に身を置きたいと思うかどうかに影響するだろう。女子にたいする男子の割合が高ければ,女の子がそこに参加しようとする割合は少なくなる。このことは,その活動に女の子が関心をもっている場合でもやはり当てはまる。
シアン・バイロック 東郷えりか(訳) (2011). なぜ本番でしくじるのか:プレッシャーに強い人と弱い人 河出書房新社 pp. 141-142

「数学ができない」

 高い能力のある女性が時分はどんな実行能力を発揮できるはずなのかを意識させられると,彼女たちはさらに多くのワーキングメモリーと脳の情動中枢を動員し,この情報を処理する。このような脳の情動中枢は,「女の子は数学ができない」という考えから生じる否定的な考えや不安を打ち消そうと活動し始めやすい。そして,重要なことは,数学における性差がこれらの女性たちの意識の前面にもちだされていない場合は,この同じ情動関連の脳領域がさほど活動していないという点である。通常であれば数学を解くことに専念できる知力が,代わりに不安を抑えることに向け直されると,受験者は数学問題を解くために頼れるものが少なくなり,結果的に実行能力にも影響がおよぶことになる。
シアン・バイロック 東郷えりか(訳) (2011). なぜ本番でしくじるのか:プレッシャーに強い人と弱い人 河出書房新社 pp. 130

ワーキングメモリの少なさの利点

 となると,新たな情報を得ること——パーティの部屋の奥で,自分のことが話題になっているのを知るようなこと——は,ときには頭脳馬力が少ないほうがうまく達成できる場合もあるのだ。もちろん,盗み聞きする能力は一般には優れた学力とは考えられていない。しかし,完全に注意を集中できないことは,教育や仕事の手配などで重要となる技能,たとえば言語を学ぶうえでは,実際に役立つものになる。ワーキングメモリーの少ない人(たとえば,注意欠陥・多動性障害,つまりADHDのように,ワーキングメモリーの欠如が大きな役割を占める障害を持つ人)は,能力を発揮する重要な場面でつねに不利になると一般には考えられている。しかし,これから述べるように,少ないほうが得である活動もあるのだ。
シアン・バイロック 東郷えりか(訳) (2011). なぜ本番でしくじるのか:プレッシャーに強い人と弱い人 河出書房新社 pp. 93

言語カテゴリーモデル

 オランダの社会心理学者セミンらは,対人関係を表す述語を次のように4タイプに分けることを提案した。言語的カテゴリーモデル(LCM:linguistic category model)と呼ばれる。
 描写行為動詞:特定の単一の行動に言及。観察できる出来事を客観的に記述する。呼ぶ,会う,蹴る,など。
 解釈行為動詞:特定の単一の行動に言及するが,記述を超えた解釈を行う。騙す,助ける,禁止する,など。
 状態動詞:単一の事象から抽象された持続的状態に言及する。単なる記述を超えた解釈をする。尊敬する,憎む,好む,など。
 形容詞(日本語では形容動詞も含まれる):高度に抽象された人の特性を示す。高度に解釈的で,特定の行動からは切り離されている。正直だ,優しい,冷たい,など。
 これらはヨーロッパ語の観察に基づくが,日本語でもおおむね当てはまると考えられる。
岡本真一郎 (2016). 悪意の心理学 中央公論新社 pp. 231-232

伝言ゲームの特徴

 子どものころに伝言ゲームをした経験はお持ちだろう。何か短い物語を順に耳打ちしていくというゲームである。このゲームでは内容は次第に変化していくし,最初とは似ても似つかない話になることもある。この伝言ゲームを正確な手続きで行った研究(系列的再生)の実験結果を分析すると,次のようなことが分かる。
 (1)平均化:内容がだんだん簡潔化される。
 (2)強調化:一部だけが強調される。
 (3)同化:伝達者の知識,先入観,価値観などに影響されて内容が変化していく。
岡本真一郎 (2016). 悪意の心理学 中央公論新社 pp. 215

嘘の手がかり

 相手の嘘を疑う場合については,これも先に述べたことだが,嘘を見破る手がかりというのは当てにならないことには注意すべきである。たとえば「話し手が視線を避ける」ことは手がかりにはなりにくい。このため,実際は話し手は正直に話しているのに聞き手の側は嘘を言っていると思い込んでしまうことが結構起こりうる。そもそも聞き手が話し手を疑っているとき,また話し手が聞き手に疑われていると感じているときは,とくにそうした間違いは生じやすいだろう。これは,話し手にとっても聞き手にとっても不幸なことに違いない。
岡本真一郎 (2016). 悪意の心理学 中央公論新社 pp. 207

真実性へのバイアス

 日頃の他者とのつきあいでは,相手の一言一言が嘘だと疑ってかかっているわけではない。いちいちそんなふうに接したら失礼にあたる。つまり「性善説」をデフォルト(基本)として相手と接するのが普通だろう。相手の発言は真実だと思ってそれを基準に判断するから,それを嘘だろうと見直すのは難しい。そうすると,仮に多少不自然な言い方やしぐさがあったとしても,そしてそれが実際に嘘の手がかりとして有効であったとしても,見落としてしまう可能性がある。これらを真実性へのバイアスと呼ぶ。
岡本真一郎 (2016). 悪意の心理学 中央公論新社 pp. 200-201

嘘の動機

 嘘の動機もいろいろである。たとえば,a: 自分が利益を求めるための利己的な嘘,のほか,b: 相手に理解して守ってもらいたいという受容を求める嘘,c: 意思などが対立するので,それを逃れるための葛藤回避の嘘,そしてd: 他者を守るための利他的で思いやりのある嘘,に分けることができるとされる。
岡本真一郎 (2016). 悪意の心理学 中央公論新社 pp. 176

言葉の選択

 関係が悪くなる前兆として,相手の呼び方が変わる可能性もある。ある調査によれば,相手との感情状態が悪くなると,夫は妻を名前で呼ばなくなり,「お母さん」のような親族語や,「お前」「おい」等を用いるようになる。一方,妻のほうは「お父さん」が減り「あなた」「あんた」等が増える。また,夫も妻も「呼ばない」という回答も増えた。夫と妻でことばの選び方は異なるが,どちらも親愛感を減らして距離を置く手段だと思われる。
岡本真一郎 (2016). 悪意の心理学 中央公論新社 pp. 93

好意的セクシズム

 これとは別に,「女性は,男性からかわいがられ,守られねばならない」「多くの女性は,ほとんどの男性がもっていないような純粋さの特性をもっている」というような考え方がある。一見女性に好意的である。好意的セクシズムという。日本では以前は「フェミニスト」というとこのような考え方を持つ男性のことを指し,「フェミニスト男性」は好意的な評価を受けていた。しかしこでも,女性は家庭に入るべき,夫に庇護されるべきという考え方にもつながる。
 好意的セクシズムに対して「女性は男性をコントロールすることで力を得ようとしている」「男性が女性のためにしてやっていることを,ほとんどの女性が十分にわかっていない」のような考え方を敵意的セクシズムという。敵意的セクシズムと好意的セクシズムは一人の人の中で必ずしも矛盾しない。両方の傾向が強い多義的セクシストもいる。
 多義的セクシストの男性は,女性について極端な見方をする。タイプ分けをして好き嫌いをはっきりさせるのである。つまり,キャリアウーマン的生き方の女性は彼らが嫌いなタイプ,専業主婦のような生き方の女性は彼らの好みのタイプということになる。
岡本真一郎 (2016). 悪意の心理学 中央公論新社 pp. 75-76

レイシズム

 古典的差別(レイシズム)(old fashioned racism)と現代的差別(modern racism)という概念がある。前者は黒人差別に関していえば「黒人は劣っている」「黒人は白人と同じバスに乗るべきではない」というような,古い時代から見られた偏見・差別である。
 現代でもこうした古典的差別が全く消滅したわけではないが,その一方で現代的差別という問題が生じている。現代的差別の信奉者は,人種間の平等は必要だと主張する。しかし「もう偏見や差別は存在しないのに,黒人は優遇されすぎている。黒人が経済的に低い位置にあるのは,彼らが努力しないからなのだ」という見方をする。したがってレイシスト(人種差別主義者)とはいっても,本人はそのような意識がない。
岡本真一郎 (2016). 悪意の心理学 中央公論新社 pp. 68-69

公正バイアス

 公正バイアスは,自分のほうが相手よりも客観的に見ても構成に振る舞っていると見てしまう傾向である。仮説検証バイアスと同じく,自分に都合のよう情報に目を向けてしまいがちであることが,一つの原因とされる。
 敵意バイアスは相手が敬意を持っていると実際以上に思い込んでしまう傾向で,これは攻撃的な性格の人ほど現れやすいという。また,争っている相手との間では,客観的に見るよりも対立を過大視してしまいがちであることも分かっている。
 こうした認知の歪みが加われば,相手への敵意はさらにましていく,そしてさらに認知が歪む,という悪循環が生ずることになりかねない。
岡本真一郎 (2016). 悪意の心理学 中央公論新社 pp. 66

ステレオタイプ

 ステレオタイプとは,知識や信念,行動の予測など,認知的な先入観である。これに対して,感情的要素が加わった先入観が偏見である。「女性は能力的に劣るから管理職を任せるのは不安だ」「血液型がA型の人はまじめだから好きだ」などはその例といえる。
 さらにそこに選択,意思決定のような行動を伴うと差別となる。女性は能力的に劣るからと管理職に登用しなかったり,A型の男性はまじめだからと結婚相手に選ぶような場合である。
 これらの例でも分かるように,偏見や差別にはネガティブなものだけでなくポジティブなものも含まれる。しかし,ある集団・個人に対してポジティブな偏見や差別があればそのあおりを受けて,不利益を受ける別の集団・個人が存在することにもなる。
岡本真一郎 (2016). 悪意の心理学 中央公論新社 pp. 57-58

マジックミラー錯覚

 マジックミラー錯覚は透明性錯覚の逆である。なぜなら,透明性錯覚が「自分が見えているから他者にも見えるだろう」と感じるのに対し,マジックミラー錯覚は「自分に(他者が)見えていないのだから他者にも(自分が)見えていないだろう」と感じるのだから。しかし自分の状況から他者も同様の状況(透明性錯覚であれば見えているという状況,マジックミラー錯覚であれば見えていないという状況)だと推測するという点では,二つの錯覚は共通する。これを知識の呪縛という。自分の知っていることに囚われて判断してしまうという意味である。そしてこのことは,他者の視点に自分の視点をうまく合わせられないことに起因するものである。
岡本真一郎 (2016). 悪意の心理学 中央公論新社 pp. 54

透明性錯覚

 透明性錯覚とは,時分の内心について他者が実際以上に気づいている,と感じる錯覚である。ジュースをいくつか用意しておき,そのなかの一つだけにとても辛い香辛料を混ぜておく。演技者がそれぞれを飲んで見せて,観衆はどれが辛いものかを見破ろうとする。演技者は見破られないように振る舞う,というゲームがある。こうした場面では,演技者のほうは観衆に見破られてしまったと思っても,実際にそうであるのは半分くらいのケースに過ぎない,ということが実験によって示されている。演技者は透明性錯覚に陥っているのである。
岡本真一郎 (2016). 悪意の心理学 中央公論新社 pp. 51-52

ホフステード

 ホフステード指数は,もともと曖昧な概念であった国民性を定量化し,企業文化を考える上で画期的なものであったわけですが,数的,質的な面でサンプリングには議論の余地がありますし,イタリア人的なイメージの日本人もいれば,その逆もいます。その際,国民による行動様式や価値観の違いについて,暗黙理に「正規分布」(平均値を中心にした左右均等の釣鐘状の分布)を仮定し,平均値の距離や分布の重なり具合で異文化論を展開しますが,そもそも各々の集団が,文化的に正規分布かどうかもわかりません。
植村修一 (2018). “社風”の正体 日本経済新聞社 pp. 106

差別と証明

 どんな差別でも同じだが,腹立たしいことの一つは,それを証明するのが,無理とまでは言わないが,たいてい難しいことだ。偏見とは往々にして,さりげない,無意識の行為だから。ハブスポットの人たちが年齢差別を話題にすることはほとんどない。あったとしてもそれは,年配の労働者が冷遇されている,という話じゃない。彼らが口にするのは,20代前半の社員が,若いからといって責任を与えてもらえないのはひどい!という話だ。
ダン・ライオンズ 長澤あかね(訳) (2017). スタートアップ・バブル:愚かな投資家と幼稚な起業家 講談社 pp. 233

確率の高い推測

 「確率の高い推測(The Good Chance Guess)」とは,普通に考える以上に当たる確率の大きい推測を含む要素のことだ。
 ありふれた例を挙げると,サイキックはこんなことを言うかもしれない。
 [例]「あなたが住んでいる家に,2という数字があります?」
 ちょっと当てずっぽうのようで,ある意味ではその通りだ。しかし,的中する確率は意外なほど大きい。それに加え,相談者の多くは確率を正確に計算できるほど数字を得意としていない。
イアン・ローランド 福岡洋一(訳) (2011). コールド・リーディング:人の心を一瞬でつかむ技術 楽工社 pp. 96

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