I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「青年心理学」の記事一覧

子どもに厳しい要求をしながらも支援を惜しまない育て方

 2001年,心理学者のローレンス・スタインバーグは,アメリカ青年心理学会の会長就任演説において,育て方の型に関するこれ以上の研究は,一時的に停止してはどうかと提案した。


 というのも,「子どもに厳しい要求をしながらも,支援を惜しまない育て方」が有効であることを示す科学的根拠はすでに十分にあるため,もっと争点の多い他の研究課題に取り組んだほうが有益ではないかと考えたのだ。


 実際,過去40年間で,入念な計画のもとに研究が次々に行われたが,心理学的に賢明な親の家庭で育った子どもたちは,さまざまな面で優れていた。



アンジェラ・ダックワース 神崎朗子(訳) (2016). やり抜く力―人生のあらゆる成功を決める「究極の力」を身につける ダイヤモンド社 pp.282-283


行動中毒

行動中毒は,薬物中毒と同じく油断できない。なぜなら,同じ脳回路が関わっているからだ。ティーンは,脳の報酬中枢を刺激することでもたらされる急激な気分の良さに敏感で,その仕組みは,ギャンブルも,ソーシャルメディアでの交流も,コカインの吸引も同じなのだ。メンタルと行動のヘルスケアを提供するアメリカ最大のグループ,CRCヘルスグループは,インターネット中毒は確かに存在するとし,ウェブサイトと文献のどちらにも,その指標となる行動と生理学的特徴を挙げている。

 学校にいない時間のほとんどをネットやコンピュータゲームに費やす
 学校で居眠りをする
 宿題を忘れる
 成績が下がる
 パソコンやコンピュータゲームを優先する
 社会集団(クラブやスポーツ)から抜ける
 コンピュータゲームをしていないときやパソコンに向かっていないときにいらいらする
 キーボードの使い過ぎによる手根管症候群(手や指のしびれや痛み)
 不眠
 ネットやコンピュータゲームを続けるために食事を抜く
 身なりや清潔さに気を配らなくなる
 頭痛,背痛,頸痛
 ドライアイや視力の問題

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 238-239
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

青年期と精神疾患

青年期は特殊な時期で,いくつかの精神疾患は,この時期から発症しはじめる。ちょっとした驚きだが,精神疾患になるには,ある程度,脳が成熟する必要があるのだ。実際,多くの気分や情動の障害には,前頭葉,特に前頭前野の異常が関わっていることがわかっている。そして,ティーンは前頭葉が他の領域と十分につながっていないので,前頭葉の異常がもたらす統合失調症になるはずがないのだ。統合失調症が,幼少期には見られず,10代後半から20代前半に始まるのは,前頭葉の未成熟さが一因になっているのだろう。
 もう1つ興味深いのは,青年期では,喘息や糖尿病より,精神疾患になる人のほうが多いということだ。ティーンの5人に1人は,日常生活に影響するほどの,精神や行動の不調を抱えている。さらに驚くべきことに,精神疾患の約半分は,青年期に発症する。12歳から16歳までの青少年のうち,自殺を考えたことがあるのは,女子の20パーセント,男子の10パーセントにのぼる。ティーンと若年成人の死因は,トップが自動車事故で,それに続くのが自殺なのだ。青年期においては,薬物やアルコールの乱用,危険な行動,学業成績の急低下,さらには頻繁な健康問題といったことさえ,抑鬱や他の精神的ストレスの兆候かもしれないし,ひょっとすると,深刻な精神疾患の危険信号という可能性もある。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 206-208
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

トラウマのリスク

ストレスは,トラウマとも深い関わりを持つ。青年期は,他のどの年代よりトラウマを負うリスクが高く,トラウマは彼らの脳の成長に,壊滅的な影響を及ぼす。2010年,ノースカロライナ州で行われた大規模な研究によると,16歳までの若者の4分の1が,深刻な事故,病気,親の死,性的暴行,家庭内暴力,自然災害,戦争,テロ,といった「震度の高い」経験をしていた。「震度の低い」経験には,両親の別居,離婚,親友や恋人との別れなどが含まれ,調査対象になったティーンの3分の1が,過去3ヶ月間に少なくとも一度,それを経験していた。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 196
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

大麻の影響

大麻の乱用と脳のダメージに関して,最も重要な要素は年齢である。ローティーンの使用者はおとなの2倍,中毒になりやすい。16歳になる前に大麻にふけった人は,集中力と注意力に問題があり,計画性,柔軟さ,抽象思考を測るテストで,そうでない人の2倍ミスを犯す。また,若い大麻喫煙者ほど,吸う量が多い。結論。早く始めるほど,乱用は激しくなるのだ。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 168
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

次善の選択

科学者は,リスクに惹かれる傾向を「次善の選択」という言葉で説明しようとする。つまり,50パーセントの確率で得られる報酬(最善の選択)より,20パーセントの確率で得られる報酬(次善の選択)のほうが満足度が高いので,人はギャンブル性の高い報酬に惹かれやすいというのだ。そして,10代が「次善の選択」をしがちなのは,彼らの衝動性,不合理性,若さゆえの自己中心性,あるいは自分は傷つかないという根拠のない自信のせいだと,大半のおとなは考えている。アリストテレスでさえ,2000年以上昔の古代ギリシャの「いかれた」若者が,おとなとは違う考え方をし,行動をするのは「感情が高ぶりやすく,短気で,衝動に流されやすい」からだと書いている。彼はまた,若者は自らの情熱の奴隷となっており,それは「わずかにあった自制心も野望に押しつぶされ,傲慢であるがゆえに,怪我をするのではないかと想像することさえできないのだ」と記している。つまり,若者はあまりに自己陶酔的で,無分別で,自信満々なので,おとななら決してしないことをしても,自分は怪我をしないと考えがちだ,と言っているのだ。しかし,「自己陶酔」「無分別」「自信満々」というのは,あえて危険な行動に走るおとなのためのレッテルであり,それをそのままティーンに用いることはできない。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 120-121
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

10代の学習能力

これらの研究から新たにわかった最も重要なことは,10代の脳は学習能力が非常に高いということだ。これを当たり前と思ってはいけない。10代の脳では,長期定着過程(LTP)がきわめて起こりやすい。動物の場合でも,成体より物事を覚えるのが速い。これはシナプスの可塑性が高いせいなのだろうか。それを知るために,研究者は,若いラットとおとなのラットの脳の切片でLTPの違いを見た。すると,若いラットの脳の方が,LTPが「はるかに多く起きている」ことがわかった。バースト刺激(一定のリズムの刺激。「練習」に相当する)の「前」と「後」を比べると,若いラットのシナプスの増加は,成体のそれを1.5倍上回り,しかも,増えたシナプスはより長く保たれたのだ。
 つまり,10代で学んだことは,おとなになってから学ぶことより,記憶しやすく,しかもその記憶が長く持続する,ということだ。この事実を見過ごしてはならない!10代とは,得意なことを見出し,伸びる才能に投資する時期なのだ。同時に,学習や感情面の問題に対して,治療や支援の効果がきわめて高い時期でもある。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 89-91
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

コントロールできない

実を言えば,それはティーンも同じで,彼らも自分をコントロールできないのだ。ホルモンについて語るとき,忘れてはならないのは,ティーンの脳はこれらのホルモンを初めて経験しているということだ。したがって,身体の反応をどうコントロールすればいいか,わからないのである。それは初めてタバコを吸ったときの感覚に少し似ている。深く吸い込むと,顔は火照り,頭はふらふらし,胃は少々むかついたことだろう。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 28
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

甘やかすな

両親や教育者に対して,ホールはこう提言した。「青年を甘やかしてはならない。彼らをしっかり監督し,公共への奉仕の精神,鍛錬,利他主義,愛国心,権威を尊重する姿勢を叩き込むべきである」。青年期の反抗やストレスの扱いについて,ホールの見方はやや偏っていたようだ。それでも,青年期と思春期に生物学的なつながりがあることを示唆し,また,後世の神経科学者が発見する脳の順応性,すなわち「可塑性(plasticity)」という言葉を先んじて使ったホールは,この分野のパイオニアと見なされている。彼は「性格や個性は形成されるが,すべては可塑的(プラスチック)である」と書いているが,それは合成樹脂のプラスチックのことではなく「柔軟で可変的」という意味だ。また彼は,「青年期は自意識と野心が強くなり,あらゆる性質や能力が強化され,過剰になりやすい」と記している。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 26
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

人間関係の希薄・過密

「近ごろの若者は人間関係が希薄だ」などとよく言われます。特に,若者の社会問題が表面化するたび,人間関係が危機に瀕しているからだと,警鐘を鳴らす評論家や教育者が少なくありません。
 しかし,状況はむしろ逆ではないかと思うのです。情報化社会の進展により,私たちは瞬時にやりとりができるようになりました。子どもや若者も状況は同じです。しかも,便利なものや面白いものに対する若者の嗅覚には凄まじいものがあります。LINEがここまで普及したのも,リアルタイムで送受信できる便利さに飛びついたに過ぎません。使えないものは淘汰され,使えるものは普及していきます。
 しかし,利点ばかりではありません。若者の人間関係は希薄どころか,むしろ過密になっているからこそ,トラブルが絶えないのです。他人に期待を寄せて,それをリアルタイムで確かめられる世界。ここで,私たちは途切れない,途切れることをよしとしないコミュニケーションを強いられています。常に連絡を取り合うことが当然となった世界では,返信をしないことだけで,いとも容易く恨まれてしまうリスクがあるのです。

中野信子・沢田匡人 (2015). 正しい恨みの晴らし方:科学で読み解くネガティブ感情 ポプラ社 pp.147-148

ダメにする呪文

20代をだめにする,もっと確信犯的な呪文もあります。「若い時は二度と来ない」「できるうちに楽しみなさい」。これらのメッセージが20代をあおり,ある研究者が言うように,実際に人を幸せにはしない「いましかない生き方」に走らせます。パーティー,多数のセックスパートナー,責任回避,怠惰,定職に就かないなどなど。
 大人が抱えるような義務を果たすまでには,まだたっぷり時間があり,いっぽうで,良いとされる事はいますぐしなければならないと,20代は繰り返し聞かされます。これらによって,彼らが現在を気楽に過ごすようになってしまったのです。気楽な現在の先には,努力を要する時期が待っているというのに。

メグ・ジェイ 小西敦子(訳) (2014). 人生は20代で決まる:TEDの名スピーカーが贈る「仕事・結婚・将来設計」講義 早川書房 pp.254

目標と人生

単に目標を持つだけでも,人は幸せになり,自信が得られます——現在でも,将来でも。約500人の若い成人を対象に,大学時代から30代半ばまで追跡した調査によると,20代で目標を設定して進んだ人は,30代でもっと大きな目標ができたり,専門性が向上して起業したりと,幸福感を得ています。目標を設定することには,自分がどういう人間で,これからどうなりたいか主張するという意味があります。目標設定は人生と生活を構築するきっかけになります。目標の1つ1つが,成人のパーソナリティの基礎の1つ1つを築くと言われてきました。そして30歳以降,どんな人間になるかは,今日,あなたが設定している諸目標のなかからつくられるということをぜひ,忘れないでいただきたいと思います。

メグ・ジェイ 小西敦子(訳) (2014). 人生は20代で決まる:TEDの名スピーカーが贈る「仕事・結婚・将来設計」講義 早川書房 pp.232-233

アイデンティティの結晶体

心理学者は人の幼児期の記憶にばかり注意を向けがちです。幼児期は重要ですが,わたしは高校での出来事のほうに,もっと注目しています。高校時代と20代は自己決定にいちばん関わる経験をする時期というだけでなく,自己を決定する記憶がもっとも形成される時期でもあります。これは,多くの研究でわかってきたことです。
 青年期は,人生のストーリーを形成するための最初の試みをたくさんする時期です。抽象的思考に対する関心が生まれ,それができるようになると,自分が何者か,その理由は何かなどについてのストーリーを考え,まとめ始めるのです。10代から20代にかけてソーシャル・ネットワークが広がるにつれて,わたしたちは自分についてのストーリーを,他者や自分自身に繰り返し伝えますストーリーを用いて,変化しても首尾一貫した自分であることを確認するのです。
 自分についてのストーリーは,アイデンティティの結晶体です。結晶体にはそれぞれの人固有の複雑な個性が詰まっています。それぞれの友だち,家族,そして文化の情報も詰まっています。年年歳歳,私たちが生きている理由について何かを語ってくれます。

メグ・ジェイ 小西敦子(訳) (2014). 人生は20代で決まる:TEDの名スピーカーが贈る「仕事・結婚・将来設計」講義 早川書房 pp.161-162

顧客ロックイン

同居は経済的で危険も少ない,と気軽に突入したのに,気がつくと,数カ月も数年も抜け出せなくなっている,という20代は珍しくありません。最初の年は金利ゼロというクレジットカードにサインするのに似ています。12カ月後,金利は23パーセントに跳ね上がり,身動きがとれなくなった気分になります。支払い額は完済するにはあまりに高すぎ,ほかの低利息のカードにすぐには移行できそうにありません。同棲もまさにそういうものなのです。行動経済学において,それは顧客ロックインと呼ばれています。顧客の固定化,囲い込み戦略です。
 いったん何かに投資をした顧客は,ロックインによって,ほかの選択肢を探したり,切り替えたりするチャンスが減少します。最初の投資,つまり段取り費用は,多額の場合も少額の場合もあります。いわば入会金や,オンラインの口座を作る手数料,車の分割払いの頭金です。段取り費用が大きくなればなるほど,わたしたちはほかのもっとよいもの,進歩したものに移ることが少なくなるようです。しかし最小限の投資でも,とくに切り替え費用を知ると,ロックインに至る可能性もあります。
 切り替え費用——それにともなう時間,お金,努力——は,さらに複雑です。わたしたちが何かに投資をする時,切り替え費用に関しては将来のこととして推測する程度で,軽視しがちです。あとで新しいクレジットカードを取得すればいいとか,その折は賃貸契約を解除すればいいと,簡単に考えがちです。問題は,その折が来ない時,切り替え費用ははるかに大きくなる点です。
 同棲には,段取り費用と切り替え費用の負担がかかっています。両者はロックインの基本的構成要素です。同居は楽しみでもあり,経済的でもあるでしょう。そして段取り費用はひそかに繰り入れられています。互いの古い家具に囲まれた生活のあと,カップルは素敵なワンベッドルームの家賃を,楽しく折半します。Wi-Fiやペットをシェアし,新しい家具の買い物も楽しいでしょう。あとで別れる際に,この段取り費用は問題になるのですが。

メグ・ジェイ 小西敦子(訳) (2014). 人生は20代で決まる:TEDの名スピーカーが贈る「仕事・結婚・将来設計」講義 早川書房 pp.147-148

先延ばしが良いか

最近の研究でわかったこととして,10代よりあとの結婚のほうが,離婚は少なくなりますが,それはあくまでも25歳前後までに言えることなのです。25歳以後は何歳で結婚しようと,離婚率に変わりはありません。結婚はできるだけ先延ばしにしたほうがいい,という説とは逆を示しています。
 年齢を重ねた夫婦は成熟度が高いかも知れませんが,晩婚はそれ自体がリスクを負っています。一緒に成長するというよりも,互いの人格やライフスタイルがほぼできあがっているので,なにかと柔軟性に欠け,歩み寄る余地が少なくなるとも言えます。おまけに若いころ,気軽で無責任な付き合いばかりしていると,どうしても本当の愛を知らないままになりがちです。よりよい相手を求めてえり好みするのもほどほどにしないと,時と共に独身者の数も減っていきます。

メグ・ジェイ 小西敦子(訳) (2014). 人生は20代で決まる:TEDの名スピーカーが贈る「仕事・結婚・将来設計」講義 早川書房 pp.122-123

ポジティブな自分

他者と明確に区別できることはアイデンティティの基本です。わたしたちは自分と他者の境界をはっきりさせることによって個性を発展させます。まわりの人と違うからこそわたしという人間なのです。わたしとまったく同じ人生を歩む者,歩める者はいません。差異はわたしたちの個性です。人と違うことが人生に意味をもたらします。
 しかし「差異」はシンプルです。黒を説明するいちばんやさしい方法は,白と反対の色,と言えばいいのです。わたしたちが自分について最初に知るのは,自分はこれこれであるではなく,これこれでないによる場合が少なくありません。これではない,あれではないとしてわたしたちは自分を特徴づけます。自分は1日中机に向かっていたくないと,アイアンが即座に答えたようにです。しかし自己規定はそこで終わりというわけには生きません。1つのアイデンティティやキャリアは,自分はこれこれでないという否定を中心にして成り立ってはいません。ネガティブなアイデンティティから,あるいは自分は違うという感覚から,ポジティブなアイデンティティ,自分はこうだという感覚へとシフトする必要があります。これには勇気がいります。

メグ・ジェイ 小西敦子(訳) (2014). 人生は20代で決まる:TEDの名スピーカーが贈る「仕事・結婚・将来設計」講義 早川書房 pp.102-103

栄光の追求

自分の可能性の追求を,精神分析家のカレン・ホーナイは「栄光の追求」と名付けました。栄光を追求する時,わたしたちは現実よりも理想に目がいってしまいます。たとえばエンジニアがもてはやされる時代なら,必要な資質や技能を知らないまま,人はエンジニアに憧れがちです。親は子供の個性を重視するよりも,こうあるべきだという理想を押し付けます。フェイスブックのユーザーは,現実の姿よりもサイト上の姿がよく見えなければならないという暗示にかかっています。このように理想ばかり追っていると,人は真の自己や世界から遊離してしまいます。
 自分が可能性の実現に向かって努力しているのか,それとも栄光の追求にふけり,たんに理想にこだわっているのかがわからなくなるクライアントが多く見受けられます。しかし,たんに栄光の追求をしているだけなのかどうかは,簡単に見分けられます。そういう人は,ホーナイが言う,<べき>の専制に支配され,あおられているからです。

メグ・ジェイ 小西敦子(訳) (2014). 人生は20代で決まる:TEDの名スピーカーが贈る「仕事・結婚・将来設計」講義 早川書房 pp.90-91

チャンスは外から

ゆるいつながりを利用するようにわたしが20代の人に言うと,しばしば抵抗にあいます。「ネットワーキングなんて嫌い」「仕事は自分で探すわ」「私には合わない」などが主な理由です。気持ちはわかりますが,そんなふうに考えている限り,事態は変わりません。仕事や人間関係など,なんであれチャンスを求める時には,ほとんど知らない人々がもっとも事態を打開してくれるからです。新しい機会はたいてい,あなたのグループの外からやってきます。

メグ・ジェイ 小西敦子(訳) (2014). 人生は20代で決まる:TEDの名スピーカーが贈る「仕事・結婚・将来設計」講義 早川書房 pp.65-66

非正規雇用の場合

仕事への足がかりを得るのに長くかかればかかるほど,わたしたちは,あるジャーナリストが「本来とは異なる,そして傷ついた」と書いたような人間になります。非正規雇用の20代についての研究では,9カ月間もフリーターでいる者は,仲間よりも憂うつぎみで,やる気も失せていると判明しました。失業中の仲間とくらべてもです。だからといって,完全失業のほうが非正規雇用よりもましだと結論づけるのは早すぎます。20代の失業者は,中年になって,たとえ定職を得たあとでも深刻な飲酒癖やうつに悩まされるそうですから。
 実際,わたしもこの目で見てきました。前向きで知識もある20代の人々が現実社会で現実の仕事に就くのを避けて,楽な非正規雇用を続けていると,そのうち,本当の幸せをもたらすかもしれない何かを探す意欲も失せ,面倒になっていくのです。夢はますます遠のいていくように思えるのです。

メグ・ジェイ 小西敦子(訳) (2014). 人生は20代で決まる:TEDの名スピーカーが贈る「仕事・結婚・将来設計」講義 早川書房 pp.50

アイデンティティ・キャピタル

アイデンティティ・キャピタルとは,時間をかけて身につけた,自分の価値を高める経験やスキルのことであり,個人的資産です。自分自身に長い間,じゅうぶんな投資をした結果,自己の一部となったものです。学位や仕事,テストの成績,クラブ活動のように履歴書に載せられるものもあります。もっと個人的なアイデンティティ・キャピタルもあります。たとえば話し方,住んでいる地域,問題の処理能力,外見や印象など。アイデンティティ・キャピタルは,どうやって——時間をかけて徐々に——自分を築いてきたかという証なのです。もっとも重要な点は,アイデンティティ・キャピタルは大人の市場に持ちこまれる資質だということ。たとえていえば,仕事や人間関係のほか,望むものを得るための通貨なのです。

メグ・ジェイ 小西敦子(訳) (2014). 人生は20代で決まる:TEDの名スピーカーが贈る「仕事・結婚・将来設計」講義 早川書房 pp.43-44

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