I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「青年心理学」の記事一覧

行動中毒

行動中毒は,薬物中毒と同じく油断できない。なぜなら,同じ脳回路が関わっているからだ。ティーンは,脳の報酬中枢を刺激することでもたらされる急激な気分の良さに敏感で,その仕組みは,ギャンブルも,ソーシャルメディアでの交流も,コカインの吸引も同じなのだ。メンタルと行動のヘルスケアを提供するアメリカ最大のグループ,CRCヘルスグループは,インターネット中毒は確かに存在するとし,ウェブサイトと文献のどちらにも,その指標となる行動と生理学的特徴を挙げている。

 学校にいない時間のほとんどをネットやコンピュータゲームに費やす
 学校で居眠りをする
 宿題を忘れる
 成績が下がる
 パソコンやコンピュータゲームを優先する
 社会集団(クラブやスポーツ)から抜ける
 コンピュータゲームをしていないときやパソコンに向かっていないときにいらいらする
 キーボードの使い過ぎによる手根管症候群(手や指のしびれや痛み)
 不眠
 ネットやコンピュータゲームを続けるために食事を抜く
 身なりや清潔さに気を配らなくなる
 頭痛,背痛,頸痛
 ドライアイや視力の問題

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 238-239
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

青年期と精神疾患

青年期は特殊な時期で,いくつかの精神疾患は,この時期から発症しはじめる。ちょっとした驚きだが,精神疾患になるには,ある程度,脳が成熟する必要があるのだ。実際,多くの気分や情動の障害には,前頭葉,特に前頭前野の異常が関わっていることがわかっている。そして,ティーンは前頭葉が他の領域と十分につながっていないので,前頭葉の異常がもたらす統合失調症になるはずがないのだ。統合失調症が,幼少期には見られず,10代後半から20代前半に始まるのは,前頭葉の未成熟さが一因になっているのだろう。
 もう1つ興味深いのは,青年期では,喘息や糖尿病より,精神疾患になる人のほうが多いということだ。ティーンの5人に1人は,日常生活に影響するほどの,精神や行動の不調を抱えている。さらに驚くべきことに,精神疾患の約半分は,青年期に発症する。12歳から16歳までの青少年のうち,自殺を考えたことがあるのは,女子の20パーセント,男子の10パーセントにのぼる。ティーンと若年成人の死因は,トップが自動車事故で,それに続くのが自殺なのだ。青年期においては,薬物やアルコールの乱用,危険な行動,学業成績の急低下,さらには頻繁な健康問題といったことさえ,抑鬱や他の精神的ストレスの兆候かもしれないし,ひょっとすると,深刻な精神疾患の危険信号という可能性もある。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 206-208
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

トラウマのリスク

ストレスは,トラウマとも深い関わりを持つ。青年期は,他のどの年代よりトラウマを負うリスクが高く,トラウマは彼らの脳の成長に,壊滅的な影響を及ぼす。2010年,ノースカロライナ州で行われた大規模な研究によると,16歳までの若者の4分の1が,深刻な事故,病気,親の死,性的暴行,家庭内暴力,自然災害,戦争,テロ,といった「震度の高い」経験をしていた。「震度の低い」経験には,両親の別居,離婚,親友や恋人との別れなどが含まれ,調査対象になったティーンの3分の1が,過去3ヶ月間に少なくとも一度,それを経験していた。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 196
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

大麻の影響

大麻の乱用と脳のダメージに関して,最も重要な要素は年齢である。ローティーンの使用者はおとなの2倍,中毒になりやすい。16歳になる前に大麻にふけった人は,集中力と注意力に問題があり,計画性,柔軟さ,抽象思考を測るテストで,そうでない人の2倍ミスを犯す。また,若い大麻喫煙者ほど,吸う量が多い。結論。早く始めるほど,乱用は激しくなるのだ。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 168
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

次善の選択

科学者は,リスクに惹かれる傾向を「次善の選択」という言葉で説明しようとする。つまり,50パーセントの確率で得られる報酬(最善の選択)より,20パーセントの確率で得られる報酬(次善の選択)のほうが満足度が高いので,人はギャンブル性の高い報酬に惹かれやすいというのだ。そして,10代が「次善の選択」をしがちなのは,彼らの衝動性,不合理性,若さゆえの自己中心性,あるいは自分は傷つかないという根拠のない自信のせいだと,大半のおとなは考えている。アリストテレスでさえ,2000年以上昔の古代ギリシャの「いかれた」若者が,おとなとは違う考え方をし,行動をするのは「感情が高ぶりやすく,短気で,衝動に流されやすい」からだと書いている。彼はまた,若者は自らの情熱の奴隷となっており,それは「わずかにあった自制心も野望に押しつぶされ,傲慢であるがゆえに,怪我をするのではないかと想像することさえできないのだ」と記している。つまり,若者はあまりに自己陶酔的で,無分別で,自信満々なので,おとななら決してしないことをしても,自分は怪我をしないと考えがちだ,と言っているのだ。しかし,「自己陶酔」「無分別」「自信満々」というのは,あえて危険な行動に走るおとなのためのレッテルであり,それをそのままティーンに用いることはできない。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 120-121
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

10代の学習能力

これらの研究から新たにわかった最も重要なことは,10代の脳は学習能力が非常に高いということだ。これを当たり前と思ってはいけない。10代の脳では,長期定着過程(LTP)がきわめて起こりやすい。動物の場合でも,成体より物事を覚えるのが速い。これはシナプスの可塑性が高いせいなのだろうか。それを知るために,研究者は,若いラットとおとなのラットの脳の切片でLTPの違いを見た。すると,若いラットの脳の方が,LTPが「はるかに多く起きている」ことがわかった。バースト刺激(一定のリズムの刺激。「練習」に相当する)の「前」と「後」を比べると,若いラットのシナプスの増加は,成体のそれを1.5倍上回り,しかも,増えたシナプスはより長く保たれたのだ。
 つまり,10代で学んだことは,おとなになってから学ぶことより,記憶しやすく,しかもその記憶が長く持続する,ということだ。この事実を見過ごしてはならない!10代とは,得意なことを見出し,伸びる才能に投資する時期なのだ。同時に,学習や感情面の問題に対して,治療や支援の効果がきわめて高い時期でもある。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 89-91
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

コントロールできない

実を言えば,それはティーンも同じで,彼らも自分をコントロールできないのだ。ホルモンについて語るとき,忘れてはならないのは,ティーンの脳はこれらのホルモンを初めて経験しているということだ。したがって,身体の反応をどうコントロールすればいいか,わからないのである。それは初めてタバコを吸ったときの感覚に少し似ている。深く吸い込むと,顔は火照り,頭はふらふらし,胃は少々むかついたことだろう。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 28
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

甘やかすな

両親や教育者に対して,ホールはこう提言した。「青年を甘やかしてはならない。彼らをしっかり監督し,公共への奉仕の精神,鍛錬,利他主義,愛国心,権威を尊重する姿勢を叩き込むべきである」。青年期の反抗やストレスの扱いについて,ホールの見方はやや偏っていたようだ。それでも,青年期と思春期に生物学的なつながりがあることを示唆し,また,後世の神経科学者が発見する脳の順応性,すなわち「可塑性(plasticity)」という言葉を先んじて使ったホールは,この分野のパイオニアと見なされている。彼は「性格や個性は形成されるが,すべては可塑的(プラスチック)である」と書いているが,それは合成樹脂のプラスチックのことではなく「柔軟で可変的」という意味だ。また彼は,「青年期は自意識と野心が強くなり,あらゆる性質や能力が強化され,過剰になりやすい」と記している。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 26
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

人間関係の希薄・過密

「近ごろの若者は人間関係が希薄だ」などとよく言われます。特に,若者の社会問題が表面化するたび,人間関係が危機に瀕しているからだと,警鐘を鳴らす評論家や教育者が少なくありません。
 しかし,状況はむしろ逆ではないかと思うのです。情報化社会の進展により,私たちは瞬時にやりとりができるようになりました。子どもや若者も状況は同じです。しかも,便利なものや面白いものに対する若者の嗅覚には凄まじいものがあります。LINEがここまで普及したのも,リアルタイムで送受信できる便利さに飛びついたに過ぎません。使えないものは淘汰され,使えるものは普及していきます。
 しかし,利点ばかりではありません。若者の人間関係は希薄どころか,むしろ過密になっているからこそ,トラブルが絶えないのです。他人に期待を寄せて,それをリアルタイムで確かめられる世界。ここで,私たちは途切れない,途切れることをよしとしないコミュニケーションを強いられています。常に連絡を取り合うことが当然となった世界では,返信をしないことだけで,いとも容易く恨まれてしまうリスクがあるのです。

中野信子・沢田匡人 (2015). 正しい恨みの晴らし方:科学で読み解くネガティブ感情 ポプラ社 pp.147-148

ダメにする呪文

20代をだめにする,もっと確信犯的な呪文もあります。「若い時は二度と来ない」「できるうちに楽しみなさい」。これらのメッセージが20代をあおり,ある研究者が言うように,実際に人を幸せにはしない「いましかない生き方」に走らせます。パーティー,多数のセックスパートナー,責任回避,怠惰,定職に就かないなどなど。
 大人が抱えるような義務を果たすまでには,まだたっぷり時間があり,いっぽうで,良いとされる事はいますぐしなければならないと,20代は繰り返し聞かされます。これらによって,彼らが現在を気楽に過ごすようになってしまったのです。気楽な現在の先には,努力を要する時期が待っているというのに。

メグ・ジェイ 小西敦子(訳) (2014). 人生は20代で決まる:TEDの名スピーカーが贈る「仕事・結婚・将来設計」講義 早川書房 pp.254

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