I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「医療・医学・薬学」の記事一覧

ブロードキャスト

 ホルモンを血液中に分泌することは,あらゆるコミュニケーションの中でもっとも無差別的なもので,「ブロードキャスト(放送)」と呼ばれる。テレビ番組が多くの家庭で受信されたり,香水の匂いが部屋の中のすべての人に嗅げたりするように,ホルモンは多くの器官のさまざまな細胞で感知される。それに対してシナプスでのコミュニケーションは,関係する二つのニューロンだけに限られ,むしろ電話によるコミュニケーションに似ている。そのような点から点へのコミュニケーションは,ブロードキャストよりもはるかに限定的だ。
セバスチャン・スン 青木薫(訳) (2015). コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか 草思社 pp. 96

アドレナリンラッシュ

 シナプスを介したコミュニケーションが持つこれらの特徴——速さ,特異性(特定の物質に対して選択的に働きかけること),そしてタイミングの正確さ——は,わたしたちの体内で起こる,それ以外のタイプの化学物質によるコミュニケーションにはないものだ。道を歩いていてぶつかりそうになった車から飛びのいたとき,あなたの心臓は早鐘を打ち,息が荒くなり,血圧が跳ね上がる。そうなるのは,あなたの体内の副腎からアドレナリンが血中に出て,あなたの心臓,肺,血管の細胞によって感知されるからだ。この「アドレナリンラッシュ」の反応は,瞬時に起こっているように思えるかもしれないが,じっさいにはかなり遅れがある。それらは,あなたが車から飛びのいた後で起こっているのだ。なぜなら,アドレナリンが血流を介して広がる速度は,ニューロンからニューロンへの信号の伝達に比べて時間がかかるからである。
セバスチャン・スン 青木薫(訳) (2015). コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか 草思社 pp. 96

幻肢

 パレは,足や腕を切除された患者が,あたかも手足がまだ元の場所についているかのように痛みを訴えるという事例を初めて報告した人物となった。それから数世紀を経て,アメリカの医師サイラス・ウィア・ミッチェルが,南北戦争の兵士たちに起こった同じ現象を記述するために,「幻肢(phantom limb)」という言葉をひねり出した。彼は数多くの症例研究を行い,幻肢は例外的な現象ではなく,むしろそれが通例であることを明らかにした。しかしなぜこの現象は,それほど長いあいだ記述されないまま見過ごされていたのだろうか?おそらくパレが外科手術を革新する以前は,切断術を受けて生き延びる者はめったにおらず,生き延びた人たちの訴えは,単なる妄想として真面目に受け止めてもらえなかっのだろう。
セバスチャン・スン 青木薫(訳) (2015). コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか 草思社 pp. 71

外科手術の父

 近代的な切断術を発明したのは,16世紀のアンブロワーズ・パレだった。パレはフランス軍の外科医として,その技術に磨きをかけた。パレが生まれた当時,外科手術はもっぱら床屋の仕事だった。なぜなら外科手術は,荒っぽい屠殺行為のようなもので,医者の仕事としては下賤すぎると見なされていたからだ。パレは戦場で働きながら,切断術を受けた兵士が失血死しないよう,太い動脈を縛るという方法を身につけた。彼は結局何代かのフランス王に仕え,「近代外科手術の父」として歴史に名を残すことになる。
セバスチャン・スン 青木薫(訳) (2015). コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか 草思社 pp. 71

細菌をつける

 膣内ガーゼ法とは,私の妻のグロリアがプエルトリコで学んだ方法だった。考え方は単純で,帝王切開で生まれた子どもは母親の膣細菌への暴露機会がないので,それを人工的に行うというものである。母親あるいは医療介助者がガーゼを膣内に入れ,細菌で満ちた分泌物を優しく子どもの皮膚や口に塗るのである。経膣出産と全く同じというわけではいかないが,細菌学的には正しい方向の選択となる。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 222

細菌とともに

 私の中心的考えを繰り返しておくと,それは,常在菌が繁栄するに従い,ヒトはそれら細菌とともに,代謝,免疫,認識を含む集積回路を発達させる,というものだ。ところが私たちは,常在菌へのこれまでにないほどの激しい攻撃に直面している。何でもかんでも抗生物質や他の近代的医療実践のせいにしようとしているように聞こえるかもしれないが,私が指摘しているのは20世紀後半に劇的に増加した諸疾患についてで,その時期は近代的医療が展開された時期でもあった。確かに,それぞれに個別の原因が存在している可能性はあるし,実際にそうだろう。しかし多くの人びとに臨床的な沈黙から明らかな病態への一線を越えさせるような,単一の要因の存在もありうる。それは防御機能の残高が枯渇しているときに蓄えを失い,新たな出費があるたびに残高がマイナスになっていくようなものである。幼少の成長期にマイクロバイオームの構成が変化を被ることがその原因ではないだろうか。私はそう考えている。5年前に予想したように,ある世代の変化は,次の世代にも影響を与える。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 204

グルテンアレルギー

 セリアック病(名前の由来は「腸管内の中空」を意味するギリシャ語)になると,患者は小麦に含まれる主要なタンパク質であるグルテンにアレルギーを示す。グルテンは小麦だけでなく,大麦やライにも含まれる。少量のグルテンでも,免疫反応が引き起こされ,健康な小腸細胞が障害される。別な言葉で言えば,免疫はグルテンを食物ではなく,致死的な外来者として認識するのである。症状は,腹痛,下痢,腹部膨満,倦怠感。何ヵ月にもわたってグルテンを避けたとしても,グルテンにふたたび暴露するや,症状は再発する。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 191

抗生物質と肥満

 結果は以下のようなものだった。生後6ヶ月以内に抗生物質を投与された子どもは,より肥満傾向にあった。想定内の結果であった。生後早期に抗生物質を投与されればされるほど,家畜への抗生物質の影響は強い。ローリーもマウスの実験で,生後早期における投与はより影響が大きいことを示していた。ヒトの赤ん坊の成長にとってどの時期が最も重要かと言えば,それは最初の数カ月だということになる。
 農場と同じように,マウスの実験,あるいはヒトの子どもの疫学的研究でも,生後早期の抗生物質への暴露は身体を大きくする,あるいはより多くの脂肪を蓄積することを示した。私たちはさらにマウスでさまざまな実験をしたが,結果は常に同じ方向を示した。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 182

胃酸の調整

 事実,私の研究室で行った研究のひとつはピロリ菌が胃酸の調整を助けているということを示した。ピロリ菌が炎症を引き起こし,炎症が胃のホルモンに影響を与え,それが胃酸産出のスイッチを「オン」にしたり「オフ」にしたりする。生まれて最初の10年間,胃酸のバランス調整機能はよい。顕微鏡で見ると,胃酸を産生する内分泌腺は,そよ風に揺れるシダの葉に似ている。しかし年をとるにつれ,慢性の炎症が胃壁を覆い始める。ピロリ菌を持った人では,それがより早く広範囲に起こる。胃酸を産生する内分泌腺は短く平らになり,胃酸の産生が減少する。萎縮性胃炎である。結果として胃潰瘍になる可能性は低くなる。シュヴァルツの「胃酸なくして潰瘍なし」という格言は正しい。
 しかし子ども時代にピロリ菌に感染しなかった人,あるいは抗生物質によってピロリ菌を根絶した人は,胃酸の高生産を40代になっても続ける。これほど多くの人が胃酸の分泌量が衰えることなく中年に達するというのは,おそらく人類史上初めての出来事ではないだろうか。そうした人々にとって,胃内容物が食道中に逆流することは,酸性度の高い胃酸が食道に障害を与えることを意味する。ピロリ菌感染率が劇的に低下した今日の子どもの多くは,以前とは異なる胃酸調整システムとともに成長する。子どもにおける胃酸逆流は,かつては稀であったが,現在では増えており,多くの子どもが制酸薬の投与を受けている。こうした現象には何らかの関連性があるのだろうか。
 私たちは,病原菌として発見されたピロリ菌が両刃の剣であるということを発見した。年をとれば,ピロリ菌は胃がんや胃潰瘍のリスクを上昇させる。一方で,それは胃食道逆流症を抑制し,結果として食道がんの発症を予防する。ピロリ菌保有率が低下すれば,胃がんの割合は低下するだろう。一方,食道腺がんの割合は上昇する。古典的な意味でのアンフィバイオーシスである。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 141-142

成人間では感染しにくい

 面白いことに,大人同士が一緒に暮らしてもピロリ菌の伝播はそれほど高くはならない。二つの研究がそれを示唆する。私たちは不妊クリニックを受診したカップルの調査をした。受診した二人は,他のカップルより身体的接触が多いと予想された。しかし一人が保菌者である場合に,もう一人も保菌者である割合には,偶然以外の要素はなかった。同じカップルに関して性感染症の調査も同時に行ったが,梅毒や淋病の原因菌は,カップル間でより共有されていた。ピロリ菌が成人間で感染することは多くないと考えられた。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 130-131

ピロリ菌と逆流性食道炎

 ピロリ菌と胃食道逆流症の間に正の相関関係を見つけようとしたのである。にもかかわらず,リックは逆に両者の間に負の相関関係を見つけることになった。ピロリ菌を持139たない患者は,胃食道逆流症を発症する割合が2倍も高かった。後の研究で,その割合は8倍に及ぶことが分かった。どうすれば,こうした現象を説明できるのだろうか。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房

ピロリ菌の減少

 私たちの研究は次のようなことも示した。20世紀初頭にアメリカで生まれた人の多くはピロリ菌の保菌者であった。しかし1995年以降に生まれた人で言えば,その割合は6パーセント以下となる。同じ傾向はドイツや北欧でも見られた。事実,ピロリ菌は世界中のどこでも減少を続けていた。先進国ではその速度が速いだけで,開発途上国でもやはり減っていた。この違いには,地理的要因ではなく社会経済的状況が影響しているようだった。貧しい人はピロリ菌を保持する傾向にあり,豊かな人々はそうではない。これは世界的な傾向であった。ピロリ菌を持たないことは,豊かであることと同様によいことと見なされているかのようでさえあった。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 128

ピロリ菌の由来

 遺伝子解析の結果,現代のH.ピロリは5つの祖先グループから生じたものであることが分かっている。アフリカ由来のものが二種類,ユーラシア由来のものが二種類,東アジアに由来するものがひとつである。H.ピロリをヒトの移動と関連づけて追跡することも可能である。私たちの研究は,約1万1000年前に人類がベーリング海峡を渡ったときに,東アジア型H.ピロリも一緒に旧世界から新世界に渡ったことを示している。今日,ヨーロッパ型H.ピロリはラテンアメリカの海岸都市で優勢である。スペイン人の到着以降に起こった人種混血の結果であろう。一方,純粋な東アジア型H.ピロリは高地やジャングル奥深くに暮らす先住民の間で今も発見される。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 117-118

出生時の細菌接触

 出産過程が長いか短いかにか変わらず,無菌であった新生児は,やがて膣内に存在していた乳酸桿菌と接触する。膣は手袋のような柔らかさをもって新生児の表面を覆いつくし,それによって母親の細菌が移植される。新生児の皮膚はスポンジのようなものである。新生児は顔を母親の背中に向けて,ぴったりとくっつくようにして産道を通過する。新生児が吸い込む最初の液体は母親の細菌を含んでいる。いくぶんかの糞便も含まれている。出産は無菌的ではない。その営みは,初期の哺乳動物の頃から7000万年にもわたって繰り返されてきたものである。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 104

「なぜ抗生剤を投与しなかったのですか?」

 それでは,医師はどうしたら,軽症で自然治癒する感染症と,より深刻な感染症を見分けられるのだろうか。あるいは群落形成と感染の区別は。これは重要な問いである。なぜなら,答えは現時点では明らかではないものの,抗生物質の過剰使用を抑制する可能性を持つからだ。鋭敏な医師は,すべてではないにしても大半の場合に,重症な合併症に至る子どもは何らかの徴候を示すことを知っている。より高い熱,症状の長期間にわたる継続,白血球数の異常,あるいは見た目の重症感。もちろん大半の症例は,そうとは断定できない灰色なのだが。
 灰色判定も重要である。ウイルス感染と細菌感染が区別できるまで,医師は安全な道を選択する。医師は時間に追われている。診療時間は1時間に5人の子どもを診察し,その他の事務仕事をこなす。実践的で,迅速で,安価でかつ正確な診断法や時間の欠如は,過剰治療へと傾く。状況を改善する診断法も現れてきているが,現状ではまだ普及していない。
 医師の肩ごしに,医療を見ている弁護士の存在もある。医師が子どもを治療せず,結果が最悪なものとなったとすればどうだろう。弁護士は尋ねるかもしれない。「なぜ抗生剤を投与しなかったのですか?そのために耳感染が髄膜炎を起こすほどひどくなり,その結果麻痺が残ったのではないですか?」
 こうした状況が,世界中の何世代もの子どもたちをめぐって,前代未聞のスケールで生じる可能性がある。何百万人もの子どもが罹ってもいない細菌感染症のために抗生剤で治療されれば,問題が生じないと考える方がおかしい。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 78-79

権力の獲得

 分裂病については暗黒の面ばかりではない。しかし,暗黒面を無視するのは,創造性や業績を無視するのと同様に非現実的で不適切である。分裂病患者,分裂病の遺伝情報を一部もった人は暴力的であったり,サイコパスであったり,犯罪を犯すこともあり得る。これらの資質はより優れた知性によって抑制,コントロールすることができれば,地位や認知,金銭を巡る争いにおいては計り知れない価値を持つ。これは特に,「ならず者」を除外できない社会,真の民主主義が実践されていない社会において真実である。そのためごく最近まですべての社会で,いや,今日でも民主的とされる多くの社会において,これらの特質を持つ節操のない人々が他人をさしおいて権力を獲得し,維持する機会を得ている。
デイヴィッド・ホロビン 金沢泰子(訳) (2002). 天才と分裂病の進化論 新潮社 pp. 253

マラリア治療法

 実験は繰り返しおこなわれ,多くの疾患が治癒した。もっとも,ワグナー・ヤウレックはこの治療効果のメカニズムを理解することはなかった。それが完全に解明されたのはずっと後のことで,梅毒スピロヘータが培養できるようになってからだ。梅毒スピロヘータ(梅毒トレポネーマ)はきわめて温度に敏感な少数のバクテリアの一つである。わずかな温度上昇で死滅する。マラリア発作における数度の体温上昇で患者が死ぬことはないが,それはスピロヘータを殺すには十分である。患者はマラリアに罹ったままだが,より深刻な病気は治癒する。マラリアの発作は標準的抗マラリア療法でコントロールが可能である。
デイヴィッド・ホロビン 金沢泰子(訳) (2002). 天才と分裂病の進化論 新潮社 pp. 191

精神科医のノーベル賞

 精神科医でただ一人ノーベル賞を受賞した人物がいる。1927年のことである。私はいつも若い精神科医たちにこう聞くことにしている。ノーベル賞を受賞した精神科医はだれか。受賞理由は何か。40歳以下の精神科医でこれについて正確に答えられたものはまだいない。
 それはオーストリアのユリウス・ワグナー・ヤウレックで,受賞理由はマラリアによる精神疾患治療を確立したことである。そう聞くと,若い精神科医たちはびっくりして,「なんて原始的なんだ」などとつぶやく。アメリカでは1950年代までマラリア療法がおこなわれていたと言っても,彼らはたいてい私の言うことを信じない。
デイヴィッド・ホロビン 金沢泰子(訳) (2002). 天才と分裂病の進化論 新潮社 pp. 189-190

脳と脂肪

 脂肪は無駄な厄介もの。先進国の人間にとっては大問題だ。われわれはいつのまにかそう考えるようになり,脳がほとんど脂肪でできているという事実を見落としてしまう。もちろん特別のタイプではあるが脂肪には変わりない。進化の過程における脳の発達は脂肪組織の増大にほかならない。そのうえ,何百万という神経細胞間の極細の接続も,「脂肪に満ちた」細胞同士をつなぐ「脂肪に満ちた」接続なのである。それが人間の知性と創造性の構造的な土台である。
 人間の進化において,脂肪に満ちた脳の発達は,皮下脂肪の増大,胸と尻という特別な箇所への脂肪の蓄積と並行しておきた。同じような生化学的作用によって脳,胸,尻は大きくなったのだろう。人間と人間にもっとも近い類人猿とを区別する重要な解剖学的特徴,それが脂肪なのである。
デイヴィッド・ホロビン 金沢泰子(訳) (2002). 天才と分裂病の進化論 新潮社 pp. 22-23

コブラの毒でハイになる

 アメリカでパーティに行けば,マリファナからLSDまで,幅広い違法薬物を目にする——そして勧められる——のは珍しくない。しかし,こうした薬物を乱用する人も,インドのレイブパーティの参加者ほどワイルドとは言えない。アメリカでは,親しげな笑みを浮かべて2,3枚の百ドル札を出せば,8分の1オンス(約3.5グラム)のコカインを買えるかもしれないが,インドのデリでは,同じほどの金額でコブラの毒液を体験することができるのだ。
 ある人たちによれば,それは出まわっている薬物のなかで,もっともハイになれるものらしい——だから,値段も高くてしかるべきだ。飲み物に混ぜる,一握りの粉末にした毒液(巷ではK-72あるいはK-76と呼ばれている)は,インドでは他の不法薬物の5倍から10倍の値段で売られている。そして,地元の役人たちの話では,この薬の効能はきわめて強力で,使用者に対して「自分がどこにいるのか,何をしているのかわからないほどハイな状態」をもたらすことができる。
クリスティー・ウィルコックス 垂水雄二(訳) (2017). 毒々生物の奇妙な進化 文藝春秋 pp. 217

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