I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「発達心理学」の記事一覧

振り返る

では,どのようなことを達成できていたら,老年に達したときに,自分が何者であったか,自分が何をしてきたかを振り返って満足を得ることができるのだろうか。これについてじっくり考えた人が,それぞれ何らかの”達成”を思い浮かべることができたとしたら,そこには3つの共通点があるだろう(とわたしは思う)。第一に,その達成は何か重要なものと関係がある。ささいなことからも喜びを得ることはできるが,そうした喜びと深い満足とは別のものである。第二に,その達成は努力,それも多くの場合,ある程度長期にわたる努力と関係がある。よく「大事なものは簡単には手に入らない」というが,まさにそのとおりである。第三に,その達成は基本的にある程度の個人的責任を伴うものである。卑近な例だが,「わたしでなかったら,こんなふうにうまくはいかなかった」といえるような場合である。

チャールズ・マレー 橘 明美(訳) (2013). 階級「断絶」社会アメリカ:新上流と新下流の出現 草思社 pp.370

栄養と機能不全

これはたやすく理解できるはずだ。IQの低さが学業不振を導くことは誰にでも想像がつく。まわりの生徒が皆うまくやっているのに,教科書はよく読めず,足し算はうまくできずで,終始頭を抱えていなければならなかったらどうか。いつまでもつねに劣等生だったらどんな気がするだろうか。「何をやっても自分はダメだ……」と思うようになり,希望を失うのが普通だ。そんな子どもが成長して腕力がつき,ドロップアウトして学校に反抗し始めても何の不思議もない。補足すると,栄養不良が脳に悪影響を及ぼし,その子どもを攻撃的にすると述べたからといって,まったく社会的要因が存在しないと主張したいのではない。実のところ,栄養不良そのものが環境的要因なのである。十分な栄養がとれないという劣悪な環境が,脳と認知の機能不全を引き起こし,ひいてはそれが子どもに暴力と犯罪の道を歩ませるのだ。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.318

両親の影響

実のところ,両親は,一般に考えられているほどには大きな役割を果たしていない。ローラと私の調査では,反社会的行動に対する家庭の影響は,平均して全分散の22パーセントを説明するにすぎない。それに対し家庭外の環境の影響は分散の33パーセントを説明する。9歳児でさえ,両親より遊び仲間に大きな影響を受ける。
 これは信じがたく思われるかもしれないが,われわれの発見は偶然ではない。反社会的行動をテーマとするあらゆる遺伝研究(100以上ある)を総括したレビューを見ても,結果は同じである。同じことは,反社会的行動以外のさまざまな行動や性格にも当てはまる。実際,行動遺伝学の第一人者,ミネソタ大学のトム・ブシャールは,「成人後の性格への,環境を共有することによる影響はほぼゼロ」だと主張している。そう,何の影響もないということだ。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.73-74

脳の成熟年齢

脳科学によって行動を説明することには限界があるが,それをますます複雑にしているのは,脳の成熟年齢を科学者が引き上げていることだ。言い換えれば,人は何歳で神経学的に成熟するかということについて,今のところ明確なラインも境界も区分もないのだ。しかし,ますますはっきりしてきたのは,脳の成長は20歳以降もまだ続いていることだ。わたしは科学者として,医師として,あらゆる疑問には答えがあり,人生のあらゆる出来事と段階には明確な境界があると考えたいが,同時にそんなものはないということを知っている。また,嵐の10代が過ぎれば順風満帆と考えたいが,それも実際は違う。しかし,こうしている間にも,地方自治体は,危険な状態にある未成年者のための更生プログラムやカウンセリング・プログラムを発案するより,さらなる刑務所や収容施設の建設に税金をつぎ込んでいるのだ。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 292
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

実行機能と誤信念課題

このように実行機能を考慮することで,前述の「4〜5歳まで標準的な誤信念課題を正答できない」という結果と「赤ちゃんでも誤信念状況を理解できる」という結果の矛盾が解消できるのかもしれません。ベイラージョンらは,言葉での反応を調べる標準的な誤信念課題では,少なくとも(1)誤信念表象プロセス(他者の誤信念を表象する),(2)反応選択プロセス(言語反応する際に,他社の誤信念の表象に対して選択的にアクセスする),(3)反応抑制プロセス(自分の知識を抑制して,質問に答える),という3つのプロセスが必要であるのに対して,注視といった自発的な反応で調べる誤信念課題では,(1)の誤信念表象プロセスだけがかかわることを示唆しています。(1)から(3)の3つを同時に処理するのは,乳児のかぎられた情報処理能力では難しすぎる理由として,各プロセスに関連する脳領域のコネクションが成熟するのは後の時期であり,しかもゆっくり発達するからであるとベイラージョンらは考えています。この(2)や(3)は,まさに実行機能に関することなので,4〜5歳になるまで標準的な誤信念課題に正答できない理由の1つには,実行機能の未熟さが関係しているといえそうです。

林 創 (2016). 子どもの社会的な心の発達:コミュニケーションのめばえと深まり 金子書房 pp. 35-36

実行機能

私たちは日々,衝動的に反応せず,次々と入ってくる新しい情報を整理し,順番を考えながら行動しています。このように,目標に向けて注意や行動をコントロールする能力のことを,「実行機能(executive function)」とよびます。そのとらえ方は研究者によって違いがありますが,「抑制」「シフティング」「更新」の3つのプロセスがとくに重要な要素であると考えられています。

林 創 (2016). 子どもの社会的な心の発達:コミュニケーションのめばえと深まり 金子書房 pp. 32

三項関係

対象について,他者と一緒にかかわるためには,「他者と自分と対象」の3つの間の関係(三項関係)の成立が必須です。この三項関係の鍵を握るのが,「共同注意(joint attention)」です。ある対象に対する注意を他者と共有することとされます。たとえば,お母さんと子どもがいて,お母さんが通りかかった犬を指さして,「ワンワンいるね」と言うと,子どももそちらを振り向き,「犬」という対象に同時に注意を向けるような場合があてはまります。
 二項関係から三項関係への進展は,社会性やコミュニケーションの発達にとって決定的に重要です。この進展がないと,自分と他者の認識が同じであるのか違うのかに気づくことができません。自分の世界に閉じたままともいえます。対象に同時に注意を払えるからこそ,会話がはずみますし,対象を取ってあげる援助や,別の対象に誘導する欺きも生まれるのです。このような三項関係と共同注意の成立は,生後9か月頃からできるようになります。トマセロはこれを「9か月革命」とよんでいます。

林 創 (2016). 子どもの社会的な心の発達:コミュニケーションのめばえと深まり 金子書房 pp. 23-24

赤ちゃんの読み

驚くべきことに,赤ちゃんでもこうした図形の動きの中に社会的意味を読みとっている可能性があります。プレマックらによる1歳頃の赤ちゃんを対象にした馴化・脱馴化法の実験では,「助ける」「なでる」といった正の要素をもつものと,「叩く」「邪魔する」といった負の要素をもつものを区別できることが報告されています。具体的には,正の要素をもつアニメーション(たとえば「助ける」では,黒玉が穴の向こう側に行けないため,灰色の玉が押してあげて向こう側に行かせる)を見せ続け,飽きてきたころに,負の要素をもつアニメーション(たとえば「叩く」では,灰色の玉が黒玉にぶつかる)に切り替えると,注視時間が長くなりました。しかし,負の要素から負の要素への切り替えでは,このような傾向は見られませんでした。

林 創 (2016). 子どもの社会的な心の発達:コミュニケーションのめばえと深まり 金子書房 pp. 22

死を待つ人

「突然に襲われる脳溢血や心不全での急死は,絶命までにわずか数秒から長くても1分以内の猶予しかありません。死においては,とかく助かるのを前提に議論されることが多いが,突然死の場合,たとえ名医が側にいても救命はかなわないのです。老人の定義は『死を待つ人』で,高齢者は脱水だけで簡単に死に至ります。その“瞬間”を一人で迎えるか,周囲に人がいるなかで終えるかは,多くの場合で天命に左右されるのだということを誰もがまず前提として踏まえておかねばならないでしょう」

新郷由起 (2015). 老人たちの裏社会 宝島社 pp.178

やってはいけない行為

シニアストーカー予備軍に「やってはいけない行為」

◯本人に興味を持って(持ったふりをして)話を聞かない
◯笑って(笑いかけて)接しない
◯楽しそうに(楽しいふりを)しない
◯下手に褒めたり励ましたりしない
◯体に触れない(握手もしてはいけない)

 同氏が理由を説明する。
 「仕事や同情に基づいた言動であっても,相手は自分への好意としか受け止めないのです。話も面白そうに聞いてはいけない。話の内容に興味があるのに,相手は『自分に関心があるんだ』と勘違いしてしまうからです。彼らにとっては自分に関心を持たれることが一番の喜びのため,接する際には極めて淡々と,終始ポーカーフェイスを貫くこと。楽しそうな素振りを見せると『俺は彼女を楽しませることが出来た』という喜びと自信を与えてしまい,相手は勝手に妄想を膨らませていきます。『楽しかったです』ではなく,『楽しいお話でした』と言うべきで,あなたといて楽しかったのではなく,あなたの話が楽しかったのだと伝えなくてはいけない。傍から見れば『そんな馬鹿な』と思うような事象でも,本人は至って真面目に,自分本位に思い込んでしまうのです」

新郷由起 (2015). 老人たちの裏社会 宝島社 pp.80-81

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