脳の可塑性もまた,知的能力の発達のために活躍してくれる。生後すぐ養子になり,恵まれた環境で育てられている子供たちは,不遇な環境で育てられている子供たちに比べて,IQテストで良い成績をとることが,多数の研究によってわかっている。もっと遅くに養子縁組された場合でも,環境の影響はとても重要だ。最初にIQテストでとても控えめな点数しかとれなくても,5歳の時点で恵まれた家庭に養子に入った子供たちは,成績が向上していく。養子縁組から数年後にテストした場合でも,養子先の家庭の社会経済的階層が高ければ高いほど,IQテストの結果は良い。遺伝子が胚の発育を導き,脳の発達に影響を与えるにしても,知的発達という面においてはすべてが幼児期にすんでしまうというわけではない。それゆえ,成績不良の子供たちを助けるための補習プログラムが重要なのだ!
カトリーヌ・ヴィダル/ドロテ・ブノワ=ブロウェズ 大谷和之(訳) (2007). 脳と性と能力 集英社 pp.57-58
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