性染色体ではない染色体(常染色体)上にある別の遺伝子が,性的な分化に寄与しているという事実も発見された。この報告は私たちに表現の見直しを余儀なくさせる。「性染色体だけではなく常染色体にもある数個の遺伝子が協力しあい,どれかが主導的役割を果たすこともないまま,性決定がなされるとする学説は,徐々に受け入れられつつある」とエヴリン・ベルとジョエル・ヴィールは書いた。今日では,生物学的性を形成するのは,胎児のときから思春期の体を再編する時期,そして生涯にわたってずっと,多くの遺伝子を参加させる長いプロセスとしてみなされている。有性の存在を形成するために働く一連の要因であっても,どれもが一つだけでは決定的ではないのだ。結局のところ,人は男性的・女性的第二次性徴をさまざまな割合で持ち,この特徴は一生涯変化しつづける。一方の端に<非常に女性的>があり,もう一方の端に<非常に男性的>がある指標のなかで,各人が自分なりの男らしさと女らしさの比率を有するのだ。
カトリーヌ・ヴィダル/ドロテ・ブノワ=ブロウェズ 大谷和之(訳) (2007). 脳と性と能力 集英社 pp.67-68
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