ではシャープが言う「根底にある基本的要因」とはいったい何であろうか?個別の銘柄の値動きは株式市場全体の動きに対して最も直接的に反応するという点は疑いがない。典型的な銘柄の価格変動のうちおよそ3分の1は,株価指数——すなわち「最も重要なたった1つの影響力」——の動きをたんに反映したものである。価格変動のうちそれ以外の部分は,自動車産業とか公益事業とかその銘柄の帰属しているグループ内のほかの銘柄の影響によるものと,その銘柄に固有のものとに,だいたい半分に分かれる。十数銘柄ほどを集めてポートフォリオを組むだけで,こうしたほかの影響力は消え去ってしまう。こうして分散投資の力は銘柄ごとの個別の属性を消滅させるので,ポートフォリオの価格変動の90%以上は株価指数によって説明されるのである。
この論理が単純だからといって,その深遠な重要性を見失ってはならない。もし投資家がいかなる銘柄を購入しようとしても,株式一般を保有することに伴うリスクを取ることからは逃れられない。たった1つの銘柄を買う場合でさえ,その銘柄に投資することと同時に株価指数にも投資していることになるのである。ウォール街の人々が好んで引合いに出す格言に,警察の車が売春宿に来ると警官は不細工な女と一緒に美女の女もしょっぴいていってしまう,というのがある。株式相場が下落する時,一緒になって下落しないのはほんのわずかな銘柄だけである。相場が上昇する時もまたしかりである。
ピーター・L・バーンスタイン 青山護・山口勝業 (2006).証券投資の思想革命(普及版) pp.122-123
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