この論理の展開はあまりにも心地よくないので,その長所は見失われがちである。たとえ最善の情報をもってしてもほとんどの人々は市場平均を上回れそうにない(そして最善の情報がない場合は平均よりも悪い結果になりそうである)というアイデアは,他人よりも優れた情報を持っていると信じている投資家すべてに対する侮辱に聞こえる。この憂鬱な結論のゆえに,プロの投資家たちの業界がアカデミックな理論に敵対感情を抱くようになったのである。この論理はむしろ,情報を持っている投資家たちを動かしている貪欲さ,知性,利己心などに対する賞賛である,ということに彼らは気がつこうとしなかった。もしも富を追求することに多くの投資家が熱心でなくなったら,熱心で動きの速い人々にとっては,市場に打ち勝つことがもっと容易になってしまう。
ピーター・L・バーンスタイン 青山護・山口勝業 (2006).証券投資の思想革命(普及版) pp.200-201
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