忍者ブログ

I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ターレスのオプション

 タレースは星空から運勢を占う特技を持っていた。彼は,ある冬,翌年のオリーブの収穫はいつもの年よりも豊作になると予言した。彼はそれまで蓄えたわずかな金を持って,その地方でオリーブの実を絞る器械を持っている人々をひそかに訪ね歩いた。そして,わずかな前払金を絞り器の持主に払うかわりに,秋が来たら絞り器を真っ先に使わせてもらう保証を取り付けた。秋の収穫期はまだ9ヶ月も先だったので安い値段でその交渉は成立した。そもそも,翌年の収穫が豊作は不作かを誰も知る由もなかった。この話の顛末は,もう察しがつくだろう。「収穫期が来ると,いちどきに多くの絞り器に需要が殺到したので,彼は思いのままの言い値でそれを貸し出して,莫大な儲けを得たのであった。こうして,哲学者でもその気になれば富豪になることができることを」タレースは世に知らしめたが,そいう野心を持つかどうかは哲学とは別の問題だ」。
 タレースと彼の金融装置についてのアリストテレスの逸話は,現代ではオプションとして知られる仕組みとしては,歴史上の文献にみられる最古の例である。オプション契約の基本的な仕組みは,あらかじめ条件を合意して決めておき,その条件が実現したら一定の行動をとる権利を,その権利の保有者に与えるような契約である。
 オプション契約は,もしその権利保有者が行使したいと思わなければ,行使を強制するものではない。もしオリーブが豊作でなければ,タレースはそのオプションを放棄したであろう。その地域全体のオリーブ絞り器の供給の限界を超える豊作となった時だけ,タレースはそのオプションの権利を行使したに相違ない。

ピーター・L・バーンスタイン 青山護・山口勝業 (2006).証券投資の思想革命(普及版) pp.304-305
PR

TRACKBACK

Trackback URL:

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]