幼年期の影響というのは面白いものだ。同世代の人の作るものは何に影響されたか大体分かる。TVドラマや漫画など,ビジュアルなものの影響は特に大きい。デジタル世代の現代の子どもたちが大きくなった時に何を作るか,非常に興味がある。ゲームの世界に影響を受けた彼等はどんな夢を見るのだろうか?彼等の作り出す虚構は私たちのものとどのくらい違っているのだろう?
大量のストーリーが消費されている現代,結局のところ,ゲームの中の虚構は一つのテーマに統合されつつある。英雄伝説,もしくは英雄になるための成長物語,である。とどのつまり,最も古典的なテーマに立ち戻ろうとしているわけだ。ゲーム製作者という吟遊詩人が作り出す,古典的なストーリーから派生したさまざまなバージョンをそれぞれのゲーム機でプレイヤー達が聞いている。彼等が聞きたがっているものは,大昔から変わっていないのだ。
恩田 陸 (1997). 三月は深き紅の淵を 講談社 p.301
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