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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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メスカリン服用時の様子

 脳にはその働きを促進するいくつかの酵素体系が与えられている。これらの酵素のうちの幾つかは脳細胞へのグルコース供給の調整を司っている。メスカリンはこれらの酵素の生産を抑制し,それによって糖分をコンスタントに必要とする器官が使えるグルコース量を減らしてしまう。メスカリンが糖分の正常な定量を減らすとどんなことになるか。いままでの観察事例があまりに少ないので十全の答は出せない。しかし観察者の下でメスカリンを服用したことのある少数の人々の場合,そのほとんどに以下に要約できるようなことが生じている。

①ー記憶力や「まともな思考」力は減少することがあってもごく僅かでしかない(薬の力が効いているときの私の会話記録を聞いてみると,普段の私より愚鈍になっているということはないようだ)。
②ー視覚印象が非常に強化され,感覚内容が即座にまた自動的に概念に服従させられるということのない幼年時代の知覚の清純さを目がいくらかでも取り戻す。空間への関心は減り,時間への関心はほとんど零になる。
③知能は損なわれることなく感覚知覚が巨大に改善されるが,意思力の劣化は激しい。メスカリン服用者は特定のことをする気になれず,普段ならそのために行動を起こし,また苦しみも耐えるのにやぶさかではない事柄に対しても,まったく興味を抱かない。そういう事柄に心を煩わすことができないのである,他に考えるべきもっといいことがあるのだというもっともな理由で。
④ーそのもっといいことは(私の経験によると)「外側で」あるいは「内側で」あるいは両方の世界で,つまり内面世界と外在世界で同時にあるいは継続的に経験されうることなのである。健全な肝臓と平等な心の所有者でメスカリンを服用することになった人たちの場合は,誰にとってもこれらのことが現実にもっといいことであるのは自明に思える。

オルダス・ハクスリー 1995 知覚の扉 平凡社 p.28-29.
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