もっとすごい研究がある,「eel(ウナギ)」という単語の前に咳(*で表すことにする)を録音した音を使ったものだ。志願者は,「The *eel was on the orange(オレンジに*eelがついていた)」という文では「*eel」を「peel(皮)」と聞き取り,「The *eel was on the shoe(靴に*eelがついていた)」という文では「*eel」を「heel(かかと)」と聞き取った。英語の場合,2つの文の違いは最後の単語だけであり,文末まで待たないと「*eel」に欠けている情報を補えないことを考えると,なんとも鮮烈な結果だ。しかし,脳はこれをやってのけた。しかも,なんの苦もなく瞬時にやったため,志願者の耳には欠けている情報が正しい位置で発音されるのがたしかに聞こえた。
ダニエル・ギルバート 熊谷淳子(訳) (2007). 幸せはいつもちょっと先にある-期待と妄想の心理学- 早川書房 p.116-117.
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