「現代は決して第一級の人物であふれているような時代ではない」と言ったのは,十九世紀のイギリスの偉大な首相,ウィリアム・グラッドストンだった。当時は,彼の同国人の中からだけでもファラデー,ケルヴィン,ダーウィン,それにマックスウェル等々の名前を列挙することができたはずなのに,これが彼の判断であった。伝説めいた話になるが,この同じグラッドストンがマイケル・ファラデーの実験室に案内されて,電磁誘導に関する革命的な発見(その後の全電力産業の基礎となった)を紹介された時に,次のように評したとのことである。「たいへんおもしろいよ,ファラデー君。ところでこれはいったい何の役に立つのかね?」。これに対してファラデーはこう答えた。「赤ん坊はこれから先,何の役に立つのか言えますか?」。
アービング・M・クロッツ 四釜慶治(訳) (1989). 幻の大発見 科学者たちはなぜ間違ったか 朝日新聞社 p.72.
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