思い込みの種がまかれ,アブダクションを疑いはじめると,アブダクティーは補強証拠を探す。そしていったん探しはじめると,必ずといっていいほど証拠が出てくる。確証バイアスーすでに信じていることに都合の良い証拠を探したり解釈したりして,都合の悪い証拠は黙殺したり解釈し直したりする傾向ーは,だれもが持っているものである。科学者でさえもだ。いちど前提(「わたしはエイリアンに誘拐されたと思う」)を受け入れてしまうと,それが事実ではないと納得するのは非常に難しい。打たれ強くなり,まわりの議論に左右されなくなる。わたしたちは,現実の出来事の対処するとき,帰納的ではなく演繹的に考える習慣があるようだ。たんにデータを集めて結論を導き出すのではなく,過去の情報や理論を使いながら,うまくデータを集めたり解釈したりするのだ。
スーザン・A・クランシー 林雅代(訳) (2006). なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか 早川書房 p.80
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