私たちはつい,ものごとを一元的に見てしまう。ひょっとするとそれは幼い頃の考え方のなごりかもしれない。小さい子どもには<中心化>傾向がある。つまり,物のある一つの次元に注目して,他の次元を無視してしまう。高くて細いコップの水を低くて太いコップに移しかえると,7歳児は「もとのコップの水のほうが多い」と言う。もとのコップのほうが高いからである。高さの次元に注目して,幅の次元を無視してしまうのだ。人を一元的に見るなら,そういう子どもとあまり変わらないようなことをしているといえる。たとえば,人びとはよく他人を「良い」か「悪い」か,「積極的」か「消極的」かで評価したがり,複雑な多元的観点からは見ない。
私たちはまた,相関関係を錯覚しがちである。つまり,ある面でこういう人は別の面でもこうだ,と結論づけてしまう。たとえば,政治的に保守的な人は,自分の子どものしつけにも厳しいだろうと想像する。保守的な価値観は厳しさとうまく合いそうだから,そういう相関関係があるにしろないにしろ,それがあるだろうと決めてかかるとき,一次元化の罠に陥り,二次元を一次元にまとめていることになる。
R.J.スターンバーグ 松村暢隆・比留間太白(訳) (2000). 思考スタイル:能力を生かすもの 新曜社 p.111-112.
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