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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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道徳化

 ベジタリアンには二種類あって,脂肪と毒素を減らすためという健康上の理由で肉を避ける人たちと,動物の権利を尊重するという道徳上の理由で肉を避ける人たちがいる。ロジンが明らかにしたところによれば,健康ベジタリアンよりも道徳的ベジタリアンのほうが,肉を食べない理由をたくさん挙げ,肉に対して情動的に大きく反応し,肉を汚物であるかのようにあつかう傾向が強く,たとえば肉汁を一滴だけ落としたスープを食べることを拒否した。また道徳的ベジタリアンは,ほかの人たちもベジタリアンになるべきだと考える傾向や,肉を食べると攻撃的になって動物のようになると考えるなど,自分の食習慣に奇妙な美点をあたえる傾向も強い。しかし食習慣と道徳的価値観を結びつけるのはベジタリアンだけではない。学生に人物描画を提示して性格を判断させると,なんと彼らはチーズバーガーとミルクシェイクを食べる人は,チキンとサラダを食べる人に比べて親切や思いやりに欠けると判断する。
 ロジンは,喫煙が近年に道徳化されたことを指摘している。タバコを吸うかどうかの決定は長い間,好みあるいは分別の問題で,吸わない人は,単にタバコが好きではないから吸わない,あるいは健康に良くないから吸わないだけだった。しかし副流煙の有害な作用が発見されたことに伴って,喫煙は不道徳な行為とみなされるようになった。喫煙者は追い払われて悪者扱いされ,嫌悪と汚染の心理が働きはじめる。非喫煙者は煙を避けるだけでなく,煙に触れたものをみな避ける。ホテルでは禁煙の部屋を求め,あるいは禁煙フロアさえ求める。同様に,処罰の欲求も喚起された。陪審員は煙草会社に「懲罰的損害賠償金」と呼ばれるのにふさわしい巨額の賠償金を課してきた。以上はそのような判断が不公正だと言っているのではなく,それらを動かしている感情を自覚すべきだと言っているだけである。

スティーブン・ピンカー 山下篤子(訳) (2004). 人間の本性を考える[中] 心は「空白の石版」か 日本放送出版協会 p.258-259
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