行動遺伝学の3法則は心理学の歴史の中でもっとも重要な発見かもしれない。大部分の心理学者はまだこれに真剣に取り組んでいないし,大部分の知識人は,ニュース雑誌の特集記事で説明されていても,これを理解していない。それは,これらの法則が難解だからではない。ーー法則はどれも,数式を使わない1文で述べることができる。それは,これらの法則がブランク・スレート説を踏みにじっているからであり,ブランク・スレート説があまりにしっかりと定着しているために多くの知識人はそれに代わるものを理解することができず,ましてそれが正しいかまちがっているかを議論することなどなおさらできないのである。
その3法則をここにあげる。
●第1法則 人間の行動特性はすべて遺伝的である。
●第2法則 同じ家庭で育った影響は,遺伝子の影響よりも小さい。
●第3法則 複雑な人間の行動特性に見られるばらつきのかなりの部分は,遺伝子や家庭の影響では説明されない。
スティーブン・ピンカー 山下篤子(訳) (2004). 人間の本性を考える[下] 心は「空白の石版」か 日本放送出版協会 p.175.
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