もっとも規模の大きい研究の1つは,精神科での治療が必要な子どもたちとそのようなケアを必要としない子どもたちに対する親たちのコメントを比較したものだ。4歳から16歳まで,延べ2600人の子どもたちが集められた。男女や白人と黒人の比率が考慮され,さまざまな社会階級を反映するように構成されていた。半数はケアにまわされる必要のある子どもたち(“不適応者”)で,残り半分はおそらく何も問題を持たないであろう子どもたちだった(“コントロール”)。
親たちは,子どもたちの行動に関して138項目に及ぶ情報を提供した。その中に,自分の子どもたちがどの程度の頻度——度々,時々,皆無——で嘘をついたり不正を行ったりするかを尋ねる質問があった。適応障害の子どもたちについては,およそ半数が嘘をつき不正をしたという報告がなされた。その一方,コントロールの子どもたちでそうした行為に及んだのはわずか5分の1だった。適応障害者とコントロールの子どもたちの間には多くの相違が存在するが,嘘をつくという行為における不一致はその中でも最たるものの1つだった。嘘や不正行為におけるこのような相違は,社会経済的な地位,性別,人種に関わりなく認められた(不適応の子どもとコントロールの子どもとのもっとも顕著な違いが,悲しみ,不幸,抑うつといった感情や学校での成績が芳しくないという事実に反映されるのは興味深いことである)。
どの年齢においても,不適応の子どもたちの方がコントロールの子どもたちよりも多く嘘をつくとされていたが,その差がもっとも大きかったのは16歳だった。報告によると,16歳の不適応の少年たちの90パーセント近く,そして,16歳の不適応の少女たちのおよそ70パーセントが嘘をつき不正を行っていた。それとは対照的に,年齢が同じコントロールの少年少女たちで嘘をつき不正をしたのは20パーセント以下だった。
ポール・エクマン 菅靖彦(訳) (2009). 子どもはなぜ嘘をつくのか 河出書房新社 pp.78-79
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