大学からの資金(ハードマネー)と外部の研究助成で得られる資金(ソフトマネー)の比率は,一般的には80パーセントがハードマネーで,20パーセントがソフトマネーというのが,研究活動には適切と考えられている。しかし,大学の研究者が,自分の得た助成金で給与をまかなっている事例もある。研究者が受領した助成金は,研究者でなく所属機関へ支払われるので,機関へは財政的な支援をもたらす。政府助成の場合,機器,化学物質・薬品,技術員の給与といった直接経費と,光熱費,事務経費,図書館費用などの間接経費からなる。このうち,間接経費は,大学の運営経費に寄与し,研究助成の増加ととともに,大学予算の重要な部分を占めるようになっている。大きな研究助成を得た研究者は,大学経営者にとって頼りになる。日本でも,研究に占める競争的資金の比率が高まる傾向にあるが,米国はより厳しい競争状況にあるといえる。成果をあげ,論文を発表することは,彼らへのプレッシャーとなっている。そのため,意図的に発表論文数を増やしたり,謝辞で済むものを著者にいれたり,そして盗用やねつ造などの不正行為につながる場合もある。忘れてならないのは,このような逸脱行為に関与していない人々も,同様の厳しいプレッシャーのもとで研究活動を持続していることである。
山崎茂明 (2007). パブリッシュ・オア・ペリッシュ:科学者の発表倫理 みすず書房 Pp.12-13
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