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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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訳によって意味が変化する

 ところで日本でよく引用されるフランスの哲学者パスカルの言葉に「もしクレオパトラの鼻がもう少し低かったならば,世界のあらゆる様相は違ったものになっていただろう」<Le nez de Cleopatre: s’il eut ete plus court, toute la face de la terre aurait change.>というのがあります。この発言の解釈は色々あるようですが,私が今ここで指摘したいことは,多くの人がこの原文のフランス語を「クレオパトラの鼻がもう少し低かったならば」と訳しているのは誤訳ではないかということです。フランス語では plus court つまり<もっと短かったら>となっているのに,日本人は日本語で<鼻が短い>とは絶対に言わないため,フランス語としてはあり得ない<低かったら>に変えてしまったのです。その結果として鼻が高いことを何よりもよしとする日本文化特有の立場から,<クレオパトラは鼻の高い美人であった>,そこでもし鼻が低かったならば,つまり<余り美人でなかったら>,アントニウスが恋におちることにはならなかったかもしれない,そこで世界の顔は違ったものになった,つまりローマとエジプトの力関係が変わった可能性があったと言うわけです。

鈴木孝夫 (2009). 日本語教のすすめ 新潮社 pp.129-130
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