機能的MRI(fMRI)は,被験者が暗算をしたり,言葉を読んだり,顔を見分けたりするときに神経細胞の活動がどのような変化を見せるのか,算定できる。直接的に神経細胞の電気活動(神経インパルス)を測定できるものではない。測定は,ある領域の神経細胞が活発化するときに引きつづいて起こる,酸素化血液の集中を対象とする(検出されるのは,酸素を吸着したヘモグロビン分子の磁化だ)。活動中の脳野の画像は,実のところ,局所的な血流量の画像である。よって,神経細胞の機能の状態を直接的に反映するものではなく,結果として,画像の解釈は慎重におこなわなければならない。fMRIのもう一つの限界は,時間要因だ。信号の記録とデータ収集の手順は,最低でも数分を要する。神経の活動は千分の一秒単位だから,はるかに長い。つまり,fMRIは脳の働きをリアルタイムで表示できないのだ。それにもかかわらず,コンピュータのディスプレイ上で実験者が被験者の活動中の脳をリアルタイムで見ていると思われがちだ。これはありえない。最終的に,数値化されたデータが得られるのは,何時間もかけて情報処理し,脳の領域を再現するために色コードを割り当てたあとなのだから。
カトリーヌ・ヴィダル/ドロテ・ブノワ=ブロウェズ 大谷和之(訳) (2007). 脳と性と能力 集英社 p.52
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