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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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漫才の歴史

 漫才の祖とされるのは,玉子屋円辰である。鶏卵の行商をしていた円辰は,趣味の河内音頭が高じてプロに転じる。そのさい,行商でたびたび出向いて見知っていた三河万歳の太夫と才蔵の掛け合いの形態をかりて,名古屋漫才として鉱業を始めたのが現在の漫才の出発点になった。ところが,最初は音頭の単調さを救うための彩りにすぎなかった漫才の部分が次第に前面に出てくるようになり,ついには音頭そのものをやめて,太夫役と才蔵役による掛け合いの漫才だけを演じるものが増えてくる。また,そのあいだにも同じく当意即妙の会話による掛け合いを旨とする大阪仁輪加から転向してくる者や,まったく異なる種類の職業から転身してくる者が続々と現れ,名古屋漫才は,1904年ごろの発足から十年あまりのあいだで,各地に巡業がおこなわれるほどになるほどの発展ぶりだったという。
 つまり万歳の世界は,くろうとかしろうとかを問わず,さまざまなジャンルから,どんどん流れ込むように人が集まってできあがったものである。そのことは,一定の形式にこだわるのではなく,笑いをとることがひたすら優先されるという万歳特有の自由さにつうじている。そのときどきの観客の好みに合わせて,内容も臨機応変に変わって当然なのが万歳なのである。笑いをとるためなら,下品なことでも暴力的なことでもなんでも取り込むのがその特徴となる。それに対して猥雑さや下品さを非難する声もあがったが,他方でそういった自由闊達な形態が新鮮な魅力をもつものと受け取られ,大きな支持を獲得する原因になったのである。

太田省一 (2002). 社会は笑う:ボケとツッコミの人間関係 青弓社 pp.25-26
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