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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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指の長さの比率と男性性

 胎児のときに性ホルモンであるアンドロゲンを浴びた人ほど,薬指が長くなることが知られている。一方,アンドロゲンを胎児のときに浴びた人ほど,成長の過程でアンドロゲンのひとつであるテストステロンに影響を受けやすく,「男らしい脳」が育つ。「男らしい脳」といっても曖昧だが,広く考えられているのは空間的な認知能力やリスクを進んでとる傾向などである。この発生学上の理由で生じる相関関係から,人差し指と薬指の比率すなわち(人差し指の長さ)÷(薬指の長さ)は2D:4Dと呼ばれ,個人の脳の「男らしさ」と対応していると考えられている。
 ジョン・コーツたちがおこなった最近の研究では,ロンドンのシティ(金融街)で働く先物取引の高頻度トレーダーの2D:4Dを測り,それが取引により得た利益と相関関係があるかを調べた。そして,驚くべきことに,個人のトレーダーとしての実力が指の長さの比率と見事に相関することを見つけ出した。
 たったこれだけのことで個人のトレーダーとしての資質がわかってしまう。このことは,極度の「男脳」を持つことがトレーダーとしての仕事に適していそうだということを示唆している。これが一時のリスクを進んでとる性格の反映にすぎないのであれば,ハイリスクをとった人間が,そのときの市場の状況にうまく後押しされて,偶然大きな利益を上げていただけだという可能性も考えられる。そうであれば,一時的に大きな利益を上げていたとしても長期的にこのような業界で生き延びることは難しい。しかし,実際には人差し指の短い「男脳」のほうが,トレーダーとして長く仕事を続けることもデータによって示された。
 このことから,2D:4Dとトレーダーとしての成功は,単に「男脳」がリスクを進んでとらせるというだけでなく,それ以外の利点もあると考えられる。この研究をおこなったコーツたちは次のように解釈している。2D:4Dが指標となるトレーダーに適した資質というのは,単にリスクをとるという性格だけではなく,常に高いレベルの注意力を維持し,すばやくチャンスに反応するという能力なのではないか。ただし彼らの研究は高度なトレーダーを対象としたもので,一般的なトレーダーすべてに当てはまるとは限らない。投資銀行では顧客とのコミュニケーション能力や,長期的な計画能力など複数の能力が必要となるため単純に2D:4Dですべてがわかるというものではないからである。

金井良太 (2010). 個性のわかる脳科学 岩波書店 pp.22-24
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