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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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メディアと暴力

 メディアの暴力はアメリカの暴力犯罪の主要な原因の一つだという考えは,保守派政治家の間でもリベラルな保健専門家の間でも一様に信条となっている。アメリカ医師会,アメリカ心理学会,アメリカ小児科学会は連邦会議において,両者の関連を調べた3500以上の研究のうち関連が見られなかったものは18だけだという証言をした。社会科学者なら誰でもこの数字にうさんくささを感じるだろうが,心理学者のジョナサン・フリードマンは自分で確認してみることにした。すると実際は,メディアの暴力と暴力行動の関連を調べた研究は200しかなく,関連が見られなかったものが半分以上を占めていた。残りの研究で見られた相関関係も小さく,ほかの説明が容易につくものーーたとえば暴力的な子どもは暴力的な娯楽を求める,子どもはアクションだらけの映像で一時的に刺激される(ただし永続的な影響は受けない)などだった。フリードマンや文献を再検討した数人の心理学者は,メディアの暴力にさらされることは暴力行動にほとんど,あるいはまったく影響を与えないという結論をだしている。近年の歴史から真偽の確認をしても,同じ結論が示唆される。人びとはテレビや映画が発明される前の時代のほうが暴力的だった。カナダの人たちもアメリカ人と同じテレビ番組を観ているが,カナダの殺人の発生率はアメリカの4分の1である。1995年にイギリス領のセントヘレナ島にはじめてテレビが設置されたが,住民は暴力的にはならなかった。暴力的なコンピュータゲームが急激にでまわったのは1990年代で,犯罪発生率が低下した時期にあたる。

スティーブン・ピンカー 山下篤子(訳) (2004). 人間の本性を考える[下] 心は「空白の石版」か 日本放送出版協会 p.60-61.
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