忍者ブログ

I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

真実を教えようとしている

 「嘘は強い。ひとたび成功した嘘,多くの支持者を獲得した嘘は,真実が暴露されたぐらいで揺らぐものではない。何年,何十年でもはびこり続けるのです。それに対して,真実はなんとも弱く,はかない。大きな嘘にあっさり押し流されてしまう。真実を口にしただけで処刑された時代もあったのです。人類の歴史を見れば,むしろ嘘が勝利した例の方が圧倒的に多いと言えるかもしれません。
 ですから,もし本当に子供たちに社会の中で成功するすべを身につけさせようと思うなら,学校は嘘の大切さを教えるべきなのです。嘘がいかに強いものかを,嘘をどのように使えばいいかを教えるべきなのです。嘘を武器に使う者の方が勝てるのですからー」
 そこで校長は,悲しげな表情で大きくかぶりを振った。
 「しかし,そんなことはしません。学校ではそんなことを教えません。私たちはあなたたちに真実を教えようとしています。真実を守ることを教えようとしています。たとえそれが不利と分かっていてもです。それはなぜなのか?考えてみてください」
 それだけ言って,校長は私たちを放免した。処分は一切なしだった。私と葉月は,校長室を後にし,無言で廊下を歩いていった。
 「……なぜなんだろう?」
 何分かして,はづきがぽつりと言った。
 「どうして校長,『真実を教えています』じゃなく,『真実を教えようとしています』って言ったんだろう?」

山本弘 (2003). 神は沈黙せず 角川書店 p.39.
PR

TRACKBACK

Trackback URL:

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]