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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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状況依存の自己表現

 日本人は,人称代名詞を使おうとしても人称代名詞としては使えず,人称代名詞を名詞化する。「私の彼は左利き」の「彼」は人称代名詞ではない。具体的な男友達か恋人である。人称と人称代名詞を比べれば人称のほうが具体的で社会的であり,人称代名詞のほうが抽象的で非社会的である。
 日本語の具体的人称と英語の人称代名詞という人称に関する言語表現は,日本人の言語的自他分離とイギリス人の言語的自他分離が違うということであるが,これは言語表現だけのことなのであろうか。すなわち,言語次元にとどまるものなのであろうか。私は,これは単なる言語現象ではなく,意識次元での自他分離にも関わるものであると考える。
 すなわち,日本人の脳では,具体的にそして社会的に自他の分離がなされるが,イギリス人の脳では,抽象的にそして非社会的に自他の分離がなされるのである。日本人の自他の分離が具体的で社会的であるということは,自他の分離が状況の影響を受けやすいということを意味する。イギリス人の自他の分離が抽象的で非社会的であるということは,自他の分離が状況の影響を受けにくいということを意味する。
 日本人は,「わたくし」「俺」「自分」「手前」「あっし」「あたし」のように,状況依存的に自己を表現する。これは,自己を状況から析出したものとしては意識していないことを意味する。これに対して,イギリス人は“I”と非状況依存的に自己を表現する。これは,自己を状況から析出したものとして意識していることを意味する。
 自他意識は裏表である。したがって,「私」と“I”の違いは,「あなた」と“you”の違いにもなり,さらに,対人意識一般の違いにもなる。日本人の他人とイギリス人の他人は,別ものなのである。

月本 洋 (2008). 日本人の脳に主語はいらない 講談社 pp.208-209
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