忍者ブログ

I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

立ち止まり考えること

 個人同様,社会は立ち止まって考える動機となるなんらかの要因(意識的か無意識的かは別として)が常に必要である。ナチスドイツのように,この動機付けのバランスが,考えるためにとどまることをしない方向の場合には,霊的概念は,たとえそれが個人的経験によってはっきりと否定されたとしても,暴力的行動を余儀なくさせる。ユダヤ系ドイツ人が見えてなかった訳ではない。彼らの多くは明らかに尊敬されるべき専門家であり,高潔で誠実かつ信頼すべき人達であった。しかし,ユダヤ人は汚れて病んでおり,邪悪なほど貪欲だという否定的固定観念が広く行き渡り,文化の一部にまでなったため,それは多くの反証を無視してしまった。彼らは,認知の風土の異なった領域に付託されるか(「友人のダニエルは典型的なユダヤ人ではない」),あるいは無視され,接触が限定されて(例えばゲットーを利用して),固定観念が否定される可能性のある出会いが回避されるかいずれかである。ナチスの党員はもっと過激で,ユダヤの人達は最も基本的な人間としての尊厳を受けているとはもはや見えないほど,生活の質が低下させられた。外見は汚れるよう強いられ,時には病気に罹り,ナチスのユダヤ人観が強化され,迫害者の確信がさらに強められて,増強する非人間化の悪循環は最終的に大量殺人を招いた。そして殺人にとどまらず,疾病に対処する昔からの方法である埋葬と焼却による感染者の完全な抹殺を要した純化が追求された。熱心なナチス党員にとって,ユダヤ人の移住は適切な選択ではなく,抹殺のみが感染源を除去することができる方法だった。

キャスリン・テイラー 佐藤敬(訳) (2006). 洗脳の世界——だまされないためにマインドコントロールを科学する 西村書店 pp.291-292
(Taylor, K. (2004). Brainwashing: The Science of Thought Control. London: Oxford University Press.)
PR

TRACKBACK

Trackback URL:

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]