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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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科学とは証拠に向かう態度

 しかし科学はただの名前ではない。証拠に向かう態度なのである。科学者は自分の考えを検証する覚悟がなくてはならないし,科学者の考えは,検証によって,誤りだと証明されることがありうるものでなければならない。これは,中学の教科書に書いてあるほど単純で純粋な仮説検証の営みではない。科学者も人間であり,自分の考えにとらわれてしまい,時には,実験で確かめられなかったとき言い訳をすることもあるかもしれない。実験条件にまずいところがあった,さらに実験をする必要があるなどなど。自分の考えに疑問を投げかける証拠,それどころかそれを否定する証拠を前にしてもその考えにしがみつくという科学者の弱さを指摘することもできる。このような行動に焦点を合わせると,欠点を強調する科学像が描ける。相対主義的な批判者の中には,科学は,その内部に意見の不一致があるのだから,ほかのどの見方とも変わらず真理から遠いもう一つの視点に過ぎないと主張する。この混迷からの出口の一つは,科学を理想と認識しながら,個々の科学者はこの理想に及ばないかもしれないと認めることである。
 にもかかわらず,時がたち,利用できる証拠が増えるにつれて,科学は知識の体系を蓄積し,私たちは,その予測の正しさが確実に確認されるという考えに基づいてこの体系に大きな信頼を置く。科学のこのような進歩は,厳格で絶え間ない自己検討を要求する科学者の共同体,ある考えを,それが証拠によって裏付けられるかどうかを判定できる形で検証することを要求する共同体があって可能となる。どんな検証方法にも弱点があるから,もっとも厳しく検討されて持ちこたえた考えのみを科学が最終的に受け入れるための土台となるのは,複数の検証の積み重ねだ。

ジョエル・ベスト 林 大(訳) (2007). 統計という名のウソ 白揚社 p.209-210.
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