忍者ブログ

I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

愛せない場合は通り過ぎよ

 子どもが「○○ちゃんていうムカつくやつがいる」と家でふと漏らしたときに,「その子にもいいところはあるでしょう。相手のいいところを見てこっちから仲良くする努力をすれば,きっと仲良くなれるよ」というのは一見懐の広い大人の意見ですよね。その理想通りに運ぶこともあるでしょうが,現実にはなかなか難しいかもしれません。こんなときは,「もし気が合わないんだったら,ちょっと距離を置いて,ぶつからないようにしなさい」と言ったほうがいい場合もあると思います。
 これは「冷たい」のではありません。無理に関わるからこそ,お互い傷つけ合うのです。ニーチェという哲学者の言葉で,「愛せない場合は通り過ぎよ」という警句があります。あえて近づいてこじれるリスクを避けるという発想も必要だということです。
 ニーチェは「ニヒリズム」という言葉で有名な哲学者ですが,もうひとつ「ルサンチマン」というキーワードに焦点を当てて,ものを考えた人です。ルサンチマンとは「恨み,反感,嫉妬」といった,いわば人間誰もが抱きうる「負の感情」のことです。
 誰でも,自分がうまくいかなかったり,世の中であまり受け入れられなかったりしたときに,自分の力が足りないんだと反省するよりも,往々にして「こんな世の中間違っているんだ」と考えたり,うまくいっている人たちを妬んだりするものです。そんな感情を自覚して,「どうやりすごすか」を考えることが大切です。ニーチェは,「ルサンチマンについて陥ってしまうのが人間の常なんだけれども,そこからどう脱却するか」ということを示唆している哲学者です。「やりすごす」という発想が,非常に大事なことだと私は思っています。


菅野 仁 (2008). 友だち幻想 人と人の<つながり>を考える 筑摩書房 pp.71-72.
PR

TRACKBACK

Trackback URL:

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]