忍者ブログ

I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

アートの意味

 アート(art)の語源はラテン語のアルス(ars)で,技術,才能などを意味したが,さらにその語源を辿るとギリシャ語のテクネ(techne)に行き着く。テクネは,「内在する原理を正しく理解した上で何かをする(ものを作る)能力」,あるいは「金細工師が持っている実用以上の装飾能力,技術」という意味で使われた。つまり,アートにはずっと昔,「物事の原理の理解」と「装飾技術」という2つの意味が含まれていたのである。それは,アーティスト(芸術家)と呼ばれる人が出現する前,アルチザン(職人)と呼ばれる人々のものだった。それを受け継いだルネサンスの芸術家の作品にも,「装飾」性ははっきりとあった。美術史に残っていない作品には,キレイなだけの壁に飾る「花」みたいな絵もごまんとあっただろう(今もあるが)。アートも元は,花のデコレーションや凝った髪型や化粧と同様,ストレートな美と贅沢に関わるものだった。
 装飾的なだけで創造性のない作品,新しい視点を提供していない作品は,アートと言われないことになったのは,近代以降である。意匠性,装飾性はデザインや工芸の十八番であって,アートにとっては二の次だ。デザイン,工芸にとって重要な商品の流通性も,アートにとっては二の次。そうした“狭義のアート”を指して,私達はアートだと認識している。そうでないとアートの輪郭が曖昧になってしまうからだ。

大野左紀子 (2011). アーティスト症候群:アートと職人,クリエイターと芸能人 河出書房新社 pp.175
PR

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]