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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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韓国の回復

 国中が,逆ゴールドラッシュで大騒ぎになっていた。つい最近まで世界でも有数の裕福な国と思われていた韓国だが,このちょうど1か月前,財政破綻を回避するため,IMF(国際通貨基金)に580億ドルの緊急支援を要請するという屈辱的な状況に至った。財政の失敗,企業の過剰な借金,狡猾な海外の投機家による巨額のウォン売りなどによって屈辱を受けた韓国の国民は,ついに立ち上がった。プロ野球のスター選手はトロフィーを手放し,学校の教師たちは金の鍵を差し出した。企業のトップや,その他の民間人も,デパートや,混みあう教会の地下室や,銀行へ足を運び,金や銀を供出した。
 供出された金を溶かして,延べ棒に加工し,海外で売却すれば,ウォンの価値が高まり,IMFへの借金返済が加速されるはずだった。「金供出運動」が展開された48時間で,住宅商業銀行には4万人の国民から3900ポンド(1770キロ)以上の黄金が集まった。韓国の教会もこの運動に参加した。「400万人の信徒に金製品の寄付や売却を呼びかけています」と語ったのは韓国キリスト教会協議会のスポークスマンを務めるキム・ヨンジョ牧師だ。
 この運動で,3週間もしないうちに,150万人を超える一般国民から10億ドル以上に相当する金——約90トン——が集まった。それから3か月もしないうちに,新たに選出された大統領は,韓国の経済体制の総点検を開始し,まず,かつて急速な経済成長を可能にした立役者であった閉鎖的,重商業的な,日本とよく似た「発展モデル」の解体にとりかかった。そして,ここが日本とまったく異なる点だが,危機に直面した金大中新政権は,韓国が30年維持してきた政策をあっという間に転換したのである。外国人投資家の参入を促し,国民に対しては貯蓄よりも消費を奨励した。金大統領の対応はすばやかった。財閥として知られる大規模な同族会社の影響力を弱め,巨額の負債を抱えた企業には破産を宣告し廃業させた。また金政権は,破綻した銀行の試算を売却,再利用するいっぽう,企業が余剰労働者を解雇しやすくなるよう,労働法を改正するといった積極策を展開した。
 これらの驚くべき政策転換は,またたくまに劇的な成果をあげた。2002年,抜本的な改革を開始してからたった4年で,韓国はIMFへの債務を完済した。長年,政府の規制で抑制されていた国内消費は急拡大し,いまでは過剰貯蓄どころか,クレジットカードの過剰債務が大問題になっているほどだ。外国人投資家が韓国の銀行や企業の株式を大量に保有しており——株式市場の40パーセント以上——その結果,韓国企業はいやおうなく国際競争力を強化させられることになった。

マイケル・ジーレンジガー 河野純治(訳) (2007). ひきこもりの国:なぜ日本は「失われた世代」を生んだのか 光文社 pp.313-315
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