忍者ブログ

I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

誤った選択

 差し迫った問題は,それだけではない。19世紀に下水道の方式を決定した際に,まちがった決断をくだしてしまったのである。当時,下水道システムには2つの選択肢があった。1つ目は,下水汚物と雨水を別々に処理するもので,分流下水道と呼ばれる。2つ目は,合流式下水道といって,汚水も雨水も1つのパイプに集める。合流式のほうが,建設費が安くて,簡単に敷設できる。しかし,このシステムには大きな弱点があった。雨である。
 下水道や下水処理場には,雨水タンクが設置されており,過剰な雨に備えている。そうすることによって,雨量が予想外に多いときにも,雨水を安全に蓄えることができるため,下水があふれることがない。しかし,ごく短時間に一定量以上の雨が降ると,雨水タンクでも対処できなくなる。すると,下水設備ではあらかじめ決められたとおりの処理が行われる。未処理の下水汚物混じりの雨水を,最寄りの水源に放流するのである。放流された汚水は合流式下水道越流水と呼ばれ,こうした措置をとることは,わりとよくある。ニューヨークでは,通常1週間に1度行われ,1週間の平均的な汚水排出量はおよそ189万キロリットルにのぼる。これは,オリンピック用スイミングプール2175個分にあたる。また,アメリカ全体では55億2600万キロリットルにものぼり,これがプールいくつぶんにあたるかは見当もつかない。「見てください」と,陽気なアイルランド人のケヴィン・バックリーが言う。「放流するか,さもなければ住宅の地下を洪水にするかなんです」。彼は,わたしを近くのジャマイカ湾にある雨水吐き口(合流式下水道の越流水を,河川などに捨てる放流口)まで案内してくれていた。雨天時には,ここからジャマイカ湾に汚水が流し込まれるのだろう。すぐそばには,「晴れた日に汚水が放流されているのを目撃した場合には,ニューヨークの非緊急時用ホットライン,311番に通報してください」と書かれた看板がある。

ローズ・ジョージ 大沢章子(訳) (2009). トイレの話をしよう:世界65億人が抱える大問題 日本放送出版協会 pp.87-88
PR

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]