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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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不要な物体

 “バラバラ殺人”と聞くと,一般の人はその犯人に対して,“残虐”“凶暴”“猟奇的”などのイメージを抱く。だが,それは正しくない。ご遺族の感情をあえて度外視していえば,ごく一部の快楽殺人犯を除いて,ほとんどが分別をわきまえた殺人犯だといえる。
 人を殺してしまった場合,犯人にとって最大の課題となるのが,死体をどう処理するか,だ。死体が発見されれば,死体に残った傷や残留物から自分が犯人だと特定されるおそれがあるし,死体の身元が判明すれば,人間関係から自分にまで捜査の手が及ぶ可能性もある。殺人犯は,できれば死体そのものをこの世から永久に消してしまいたいのだ。そこで殺害後,第三者に見つからないだけの時間的余裕があれば,海中に沈めたり,山に埋めたりして証拠隠滅をはかる。
 だが,自宅など屋内で殺人を犯した場合,死体を屋外に運び出す際に誰かに見られる可能性が高い。また,犯人が女性の場合,女性の力では死体を持ち運ぶことさえ難しい。死体は想像以上に重いものだ。では,どうやって証拠隠滅をはかるか。多少の手間はかかるが,死体をバラバラに切断するのは,きわめて合理的な方法である。細かく切断すれば持ち運びやすくなるし,バッグや袋に入れれば他人に怪しまれずに持ち出すこともできる。いってみれば,いらなくなった重い家具を分解して粗大ゴミに出すようなものだ。あるいは「自己保身」という意味では,不要な重要書類をシュレッダーにかける行為に近いだろう。いずれにしろ,たとえ処分することになっても,家具や書類に対して特に悪意を抱いているわけではないのだ。それと同様に,バラバラ殺人犯も,死体に対して悪意があるわけではない。殺してしまった時点で,死体は犯人にとって「不要な物体」でしかないのだから。

上野正彦 (2010). 死体の犯罪心理学 アスキー・メディアワークス No.1721-1723/2162(Kindle)
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