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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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よく計算間違いをする

「どうして,人間は,人間を殺すんだ?」
 彼が一瞬,目を見開き,黙った。駐車場の脇に立つ街灯が,電気を撒いて震えるような音を発し,明滅した。
 「どうして俺に,そんなことを」
 「ちょうど君がそこに立っていたからだ。別の人間がそこにいたら,そいつに訊ねただろうな。たまたま,質問があって,その質問の先に君が立っていた」
 青年はしばらくの間,口を閉ざしていた。ずいぶん経ってから,「恨みや怒り,計算。人を殺す理由はそんなところじゃないかな」と言った。
 「計算?」
 「あいつがいなければ,俺の人生は楽になるのに,とかそういう計算だよ。金の面,精神的な面で,損得を計算するんだ」
 「人間はよく計算間違いをする」
 「その通りだね」と青年が歯を見せた。

伊坂幸太郎 (2008). 死神の精度 文藝春秋 No.2655/3977(Kindle)
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