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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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精神医学の反撃

 精神科治療薬が一般社会で名誉を挽回する行程は,1970年代に始まった。精神科医は「医師」の機能を果たしていないというサズの批判に脅かされたことを契機に,APAは,精神科医はもっと誰の目にも明らかな形で医師の役割を果すべきだと主張するようになった。1977年,APAのサブシンは「医療としての精神医学を復権するための積極的努力を,強力に支援すべきである」と訴えた。それが何を意味するのかは,American Journal of Psychiatryや他の専門誌に掲載された多くの論文から,窺い知ることができる。ケンタッキー大学の精神科医アーノルド・ルドヴィグは,「医学モデル」は「精神科医の第一のアイデンティティは医師であるという前提」を土台にしていると述べた。テキサス大学のポール・ブラニーは,精神障害は「器質的疾患」としてとらえるべきだと書いた。またワシントン大学のサムエル・グーズは,精神科医は「病気の症状や兆候」の分類に基づいて適切な診断をすることに力を注ぐべきだと主張した。そして「今日,精神病患者にとって最も有効な治療,つまり積極的な投薬と電気ショック療法を最適なかたちで施すのに必要な医学的訓練」を受けているのは,精神科医だけだと付け加えた。
 彼らが想定したのは,内科学から直輸入した治療モデルだった。内科医は患者の体温を測り,診断のために血糖値やその他の検査をする。そして病名を突き止めたら,それに適した薬を処方する。精神医学の「医療としての復権」は,フロイト流の精神分析をお払い箱にすることを意味した。そうすることにより精神医学のイメージは回復すると,彼らは期待したのだ。「一般人の頭のなかで,科学的真理と最も強く結びつくのは医学モデル」だからだと,タフツ大学の精神科医デビッド・アドラーは言った。

ロバート・ウィタカー 小野善郎(監訳) (2012). 心の病の「流行」と精神科治療薬の真実 福村出版 pp.400-401
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