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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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楽天家の役割

 楽観主義はごくありふれた傾向だが,一部の恵まれた人は,図抜けて楽天的である。生まれながらにして楽観バイアスを授かっている人は,「あなたは運がいい」と周りから言われる必要はないだろう。なぜなら,本人がすでにそう思っているからだ。楽天的な性格の多くは親から受け継いだもので,幸運になりやすい気質の一部であり,いつもものごとのよい面を見ようとする傾向を備えている。もしあなたが自分の子供のために1つだけ願いを許されるとしたら,楽天的な性格を授けてもらうことを真剣に考えるべきだろう。楽天的な人は一般に陽気で楽しく,したがって人気者である。失敗しても立ち直りが早く,困難に直面してもへこたれない。こういう人が鬱病になる可能性は低く,免疫システムは強靭だ。めったに病気はせず,自分は他人より健康だと感じており,そして実際に長生きする傾向にある。保険数理にもとづく合理的な予想以上に自分の余命を長く見積もる人を対象に,調査を行ったところ,こうした人たちは長時間働き,将来の所得について楽観的で,離婚後に再婚する確率が高く(つまり不幸な経験に希望が打ち克つ),これと見込んだ株に賭ける傾向が強いことが明らかになった。言うまでもなく,楽天的な性格のこうしたよさが発揮されるのは,楽観主義がいきすぎでない人,すなわち現実を見失うことなくプラス思考になれる人に限られる。
 楽天家が私たちの生活で果たす役割は,ふつうの人と比べてはるかに大きい。彼らの決定は大きな変化をもたらす。彼らは発明家であり,起業家であり,政治や軍の指導者であって,そこらの人間とはちがう。彼らがその地位に就いたのは,自ら困難を探し,リスクをとったからである。彼らは才能があり,しかも幸運だった——まず確実に,本人が思っている以上に運に恵まれていた。この人たちが何事にも楽観的なのは,おそらくは性格に由来する。小さな企業の創業者を対象に行われたある調査では,起業家は人生全般について,中間管理職よりも楽天的であることが判明した。彼らは成功体験を通じて,自分の判断やものごとをコントロールする能力に自信を深める。その自信は,周囲からの」賞賛によって一段と強まる。以上の点から,次の仮説を導き出すことができる。多くの人の生活に多大な影響力をおよぼす人たちは,楽天的かつ自信過剰である可能性が高い。また,自覚している以上に多くのリスクをとる。

ダニエル・カーネマン 村井章子(訳) (2012). ファスト&スロー:あなたの意思はどのように決まるのか(下) pp.39-40
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