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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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システム1の動作特性

 エイモスと私は,その時点では脳の2つのシステムというモデルを採用していなかったけれども,プロスペクト理論が次の3つの認知的な特徴を備えていることははっきりしていた。この3つの特徴は,金銭的結果を評価するときに重要な役割を果たす。そして知覚,判断,感情の多くの自動処理プロセスに共通して見られることから,システム1の動作特性とみなすべきだと考えられる。
・第1の特徴は,評価が中立の参照点に対して行われることである。なお参照点は,順応レベル(AL)と呼ばれることもある。このことは,簡単な実験で実感できる。3つのボウルを用意し,左のボウルには氷水を,右のボウルには湯を,真ん中のボウルには室温の水を入れる。1分間,左手を氷水,右手を湯に浸してから,両方の手を真ん中のボウルに入れてほしい。すると,同じ水を左手はあたたかく,右手は冷たく感じるだろう。金銭的結果の場合には,通常の参照点は現状すなわち手持ちの財産だが,期待する結果でもありうるし,自分に権利があると感じる結果でもありうる。たとえば,同僚が受け取ったボーナスの額が参照点になることは,大いにありうるだろう。参照点を上回る結果は利得,下回る結果は損失になる。
・第2の特徴は,感応度逓減性(diminishing sensitivity)である。この法則は,純粋な感覚だけでなく富の変化の評価にも当てはまる。暗い部屋ならかすかなランプをともしただけでも大きな効果があるが,煌々と照明の輝く部屋ではランプが1つ増えたくらいでは感知できない。同様に,100ドルが200ドルに増えればありがたみは大きいが,900ドルが1000ドルに増えてもそこまでのありがたみは感じない。
・第3の特徴は,損失回避性(loss aversion)である。損失と利得を直接比較した場合でも,確率で重みをつけた場合でも,損失は利得より強く感じられる。プラスの期待や経験とマイナスのそれとの間のこうした非対称性は,進化の歴史に由来するものと考えられる。好機よりも脅威に対してすばやく対応する生命体のほうが,生存や再生産の可能性が高まるからだ。

ダニエル・カーネマン 村井章子(訳) (2012). ファスト&スロー:あなたの意思はどのように決まるのか(下) pp.75-76
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